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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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二巻発売特別記念SS 彼女はもう、いない

二巻発売記念の特別SSです!

前日譚なので、二巻を読む前に見ても問題ない内容となっております。

どうぞよろしくお願いします!


挿絵(By みてみん)

イラストレーター:あろあ様

 ――今日、ひめがアメリカに飛び立っていった。


(……行っちゃったかぁ)


 数分程前。スマホのメッセージアプリに届いた彼女のメッセージには、こう書かれている。


『今から飛行機に乗ります。陽平くん、お元気で』


 スマホなどの電子機器はあまり得意じゃないみたいなので、操作も覚束ないのかひめはいつも文章が短い。スタンプはもちろん、絵文字や顔文字も使わない。簡素な一文は、ひめらしくはあるのだが……今日だけは、少し物足りないと思ってしまった


『いってらっしゃい。ひめも、楽しんで』


 もちろん返信はすぐにした。実は俺も、ひめと同じようにスマホでのメッセージのやり取りはそこまで得意じゃないので、文章はだいたいこんな感じである。


 いつもなら文章の文字数なんてさほど気にならない。

 でも、やっぱり……うん、寂しくないと言えばウソになるだろう。


(もっと何か書けば良かったかな)


 ベッドの上で、小さくため息をつく。

 いつまでもこんなことを考えていても仕方ないのになぁ。

 思考を切り替えるためにも、スマホを枕元に置いてから今度は窓から空を見上げた。でも、タイミング良く飛行機の姿が見えて。


(そういえば……ひめって、飛行機とか平気なのかな?)


 やっぱりあの子のことを考えてしまう。そんな自分に、思わず苦笑してしまった。

 誰かのことをこんなに恋しく思うなんて、初めてかもしれない。


 もし、俺が物語の主人公なら。

 こういう時、どうしていたんだろう。

 空港まで追いかけていくとか、なんならアメリカまで一緒に行くとか、そんな行動をしていたのだろうか。


 ……なんて妄想をしたところで、ハッと我に返った。





(――いや、落ち着け。三週間後には帰って来るんだからっ)





 そうなのである。

 渡米の期間はわずか三週間。その後にはまた日本に帰ってくるし、なんなら一緒に遊ぶ約束だってしているのだ。


 だというのに、長文でメッセージを送ったり、別れを寂しく思うなんて、それこそ過剰である。


(なんで今生の別れみたいになってるんだか)


 感傷に浸って、物思いにふけるような事態じゃない。

 大げさな自分の感情に気付いて、更に大きなため息が零れた。


「……はぁ。暇だなぁ」


 まだ夏休みは始まったばかり。

 去年までは、夏休み初日なんて浮かれすぎて暇を感じることはなかっただろう。


 時刻は平日の正午。両親も仕事でいないので、家では一人きりである。

 天気は晴れ。気温は真夏日。しかし室内は冷房でちょうどいい温度に保たれている。しかもつい先日、新作のゲームも出た。まさしく絶好のゲーム日和。家族もいないのでイヤホンすらせず、大きめのボリュームで、お菓子とジュースをお供に楽しんでいたはずなのに。


「ふわぁ……」


 今年は何故か、やる気が出ない。

 ゲームも買ってはいるのだが、まだ開封すらしていなかった。あくびがこぼれてきたので、目を閉じて窓に背を向けた。


 ひめ……だけじゃないか。聖さんも一緒に、二人が帰ってくるまで三週間ある。たっぷり時間があるのだから、慌ててゲームしなくてもいい。というか、新作のゲームでもこの寂しさは埋まらない気がしている。


 それくらい、俺にとって二人の存在は大きかったようだ。

 あの二人と過ごした日々の楽しさを知ってしまったから、孤独な夏休みを退屈に思っているのかもしれない。


 ……そんなことを考えていたら、いつしか意識が薄くなってきた。

 ちょっとだけ眠ろうかな。そう思って、目を閉じた。


 彼女はもう、日本にいない。

 そのことに、自分が思っている以上にショックを受けていて、なんだかびっくりである。


 でも、恋しく思うからこそ……再会した時のことも、楽しみではあった。

 

 とりあえず、ひめの旅路と海外生活に何事もありませんように。

 彼女が元気でいてくれますように。


 そんなことを願って、俺は夢の世界に落ちていくのだった。


 ひめが帰ってくるまで、あと二十一日――。




【終わり】

いつもお読みくださりありがとうございます!

本日、二巻の発売となります。

ひめちゃんと陽平の恋の物語、ぜひ見届けてくださると嬉しいです。

どうぞよろしくお願いしますm(__)m

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