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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第百九十三話 ぐにゃぐにゃのひめちゃん

「もう無理~」


 ストレッチをしただけなのに。

 木陰に敷いたシートの上で、聖さんはうつ伏せになって倒れ伏した。


「お願い、きゅーけーさせて?」


「……これからランニングの時間なのですが」


「もっと無理! せめてウォーキングにしてよぉ」


「冗談です。もちろん、ウォーキングのつもりでしたよ。びっくりしましたか?」


「そんなドッキリは面白くないもん! ぐわぁ~」


 ひめのお茶目なイタズラ心すら、聖さんは笑う余裕がないようだ。何やら唸っている……かと思ったら何も言わなくなって、そのまま動かなくなった。


「…………」


「し、しんでる?」


「……しんでないもん」


「寝ているだけです。お姉ちゃんはどこでも寝られるタイプの人なので」


「ねてないもん。きゅーけーするって言ってるでしょー!」


 休憩にしては、体勢がおかしい。

 うつ伏せになって微動だにしないところを見るのが少し不気味ではあるのだが、話しかけられるのも嫌そうにしていたので、これ以上は声をかけないことにした。


「陽平くん、わたしのストレッチを手伝ってもらってもいいですか?」


「え? ひめもストレッチするの?」


「はい。わたしも、お姉ちゃんと同じくらい運動不足なので、怪我予防です」


 鬼コーチひめちゃん。まさかの運動不足らしい。

 まぁ、この子の場合はもともと体がそこまで強くないようで、激しい運動はしてこなかったと前に聞いている。怠けているわけではなかったと思うけど、運動不足に変わりはないか。


「って、俺もそういえば運動不足だった」


 人のことを言っている身分ではなかったことを思い出す。聖さんに負けず劣らず、俺の生活習慣も崩れているのだ。聖さんのことを笑っている場合じゃなかった。


「それでは、後で陽平くんのストレッチもお手伝いしますね」


「うん、お願いしようかな」


「まずはわたしから、お願いします」


 と、いうわけでひめと一緒にストレッチをすることになった。

 シートの上に座ったひめが前屈の姿勢になったので、後ろからそっと背中を押してあげる。


(ちっちゃいな……)


 触れるたびに思うのだが、ひめがすごく小さい。

 片方の手のひらで軽く押しただけなのに、ひめの体が前方に傾いた。力を入れすぎないように気を付けた方がいいだろう、と思わせるような曲がり方である。


 ……というか、曲がりすぎでは?

 ひめの頭だけじゃない。胸元までひざに届きそうな姿勢である。先程の聖さんとは大違いだった。


「ひ、ひめ? 痛くない?」


「いえ。まったく痛くないので、もう少し押してもらってもいいでしょうか」


 心配したものの、杞憂にしかならず。

 むしろ彼女は、物足りないようだ。


「これでいい? 痛くなったらすぐに言って」


「大丈夫です。ん~……まぁ、これくらいでいいしょうか。もう少し伸ばしたいところですが、これ以上はちょっと変な姿勢になりそうなので」


 すごい。前屈で胸元とひざがぺたりとついている。

 どうやらひめは、体がふにゃふにゃみたいだ。もともと、柔軟性のある体質なのだろうか。


「年齢的な理由もある気がしますね。これから自堕落な生活をしていたら、あっという間にお姉ちゃんみたいにガチガチになると思います」


 ……そうだ。ひめの年齢は、まだ八歳なんだ。

 幼いからこそ、体も未成熟なのである。骨も筋肉もまだまだ成長途中で、柔らかいのか。


(小学校三年生の年齢、だよなぁ)


 そう考えてみると、やっぱりひめはまだまだ幼い。

 触れるたびに、この子の年齢を強く意識させられた。


 普通なら、恋愛の対象としては考えてはいけない年齢だな、と――。

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