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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第百七十話 まだ帰りたくない

 さて、図書館で目的を果たしたわけだが。


「あ、少し雲が出てきましたね。過ごしやすくなりました」


 もう十分以上、ベンチでオシャベリをしている。

 先ほど、いい感じで話題が落ち着いたのだが、なおも彼女は言葉を続けた。


 今度は天気の話題だ。そろそろ帰る、と言うにはちょうど良いタイミングだったと思う。

 たぶん、ひめは帰りたがっていない。そう判断して、俺はこんな提案をしてみた。


「せっかくだし、ちょっと散歩でもする?」


 もちろん、どうしても散歩がしたかったわけじゃない。

 ただ、何か口実があった方が一緒にいる理由としていいと思った。


 実は俺自身、ひめともう少し話していたいと思っていたのだ。彼女も同じようなことを思ってくれていて、なんだか嬉しかった。


「散歩ですか? いいですね、運動は体にいいことです」


「……さっき読んだ本にも書かれてたなぁ」


 いや、これはいい機会でもありそうだ。

 夏休みということで不規則な生活を続けている身として、こういう外出したタイミングで軽く動いていた方がいい気がする。


 そういうわけで、俺とひめは同じタイミングでベンチから立ち上がった。


「あっちの方に行ってみようか。このあたり、来たことがないから何があるか分からないけど」


「あてもなく歩くのもいいですね。なんというか、素敵です」


 お互いに土地勘はまったくない。でも、だからこそ散策するのは面白い。

 ゲームでも、初めて来たフィールドを歩き回っている時が一番楽しいのだ。あの感覚に似ていた。


「ちなみに、お迎えの時間は大丈夫?」


「はい。芽衣さん、わたしが連絡するまではおうちでお掃除をするみたいです」


 よし。そういうことなら、少し寄り道するのも問題ないだろう。

 もちろん、そこまで遠くに行くつもりはない。

 図書館の近くをぐるりと歩き回って、またここに戻ってくるつもりだ。それなら迎えの場所も困らずにすむだろう。


「曇っていますけど、まだまだ暑いです」


「夏だからなぁ……暑いのは苦手かも」


「水分補給、しっかりしてくださいね。熱中症になっては大変です」


「うん。後で飲み物買おうかな……あ、ひめも気を付けて。むしろ、俺よりも心配かも」


「わたしは問題ありません。スポーツドリンクを水筒に入れて持ってきています……まぁ、芽衣さんが無理矢理持たせたと言った方が正しいのですが」


「さすが、頼もしいメイドさんだね」


 ゆるい会話を交わしながら、ゆっくりと歩く。

 気温こそ高いが、曇っているおかげで動きやすい。ぬるいが風もあるのでここ最近だと一番すごしやすいかもしれない。


 ひめはそこまで体が丈夫じゃないみたいだが、今のところすごく元気そうなので大丈夫だろう。この前痛めた足も今は完治したようで、力強く歩みを進めていた。


 それから、雑談しながら歩くこと数分。

 図書館からそこまで離れていない場所で、ひめが足を止めた。


「あ」


 彼女は何かを興味深そうに見ている。

 その目線の先を追うと、そこには……。


「公園だ」


 すべりだい、よく分からないタイヤの置物、砂場、そして木製の古びたベンチの置かれた公園があった。

 規模は小さい。さびれていると言っても過言ではないだろう。

 そして遊具も少ない。ブランコやジャングルジム、うんていぼうなどはない。俺が幼少期の頃にはギリギリ見かけたが、最近はすっかり見なくなった気がする。


 ああいう遊具は、安全性を考慮してちゃんと管理されている公園や施設にしかないのかもしれないなぁ。

 なんてことを考えながら公園を眺めていると、ひめに袖をくいっと引っ張られた。


「陽平くん、寄ってもいいですか? 日本の公園は初めてです」


 なんと。ひめはどうやら、公園に来たことがないらしい。

 そういえばこの子、日本よりも海外で暮らしていた時間の方が長かった。


 もちろん断る理由はないので、公園に寄り道することにした――。

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