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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第百六十六話 くっついてくるタイプ



 数冊ほど本を見繕って、ひめと一緒に読書コーナーへと向かった。

 図書館の奥。学校の教室程の広さのスペースに、四角いテーブルがいくつか置かれている。こちらは友達同士や家族など、複数人での利用を目的とされているのだろう。


 他にも、窓際にカウンターのように机が設置されていて、隣とはパーテーションで区切られているスペースもある。こちらは一人で使用しても良さそうだ。


「意外と、少ないですね」


 ひめが小さく呟く。彼女の言葉通り、利用している客は思ったよりも少ない。夏休みなので学生や子供がもっといると思っていたのだが、十名はいないだろう。


「暑いので、外に出たくないということでしょうか」


「たしかに……特に今日は暑いからなぁ」


 灼熱の炎天下。外に出ることさえおっくうに感じる季節なので、わざわざ外出したいと思うのは難しいだろう。むしろ俺も、ひめとの約束がなければ絶対に引きこもっていたので、痛いほど共感できる。


 まぁ、人が少ないメリットもある。席を自由に座れるのは良かった。混雑していたら窮屈だろうし、できればスペースは余裕があった方がいい。


「こちらにしましょうか」


 周囲の利用者の邪魔にならないよう、誰もいないスペースをひめも選んでいた。テーブル席である。四席あるうちの一つに座ると、ひめが対面ではなくその隣にちょこんと座った。


 向かい合わせの方が机のスペースを利用できると思うのだが……この子、隣に座るのが好きなんだよなぁ。


 夏休み直前、ファーストフード店に行ったときもそうだった。わざわざ俺の隣に座っていたことを思い出す。こう見えて結構、ひめはくっついてくるタイプなのだ。


 そういうところも、この子の愛らしさである。


「陽平くんも読みますか?」


「うん、ちょっと気になるし」


 ひめは三冊ほど選んで持ってきてる。そのうちの一冊を借りて、ページを開いてみた。内容は字と図面で構成されていて、痩せる仕組みについて分かりやすく解説されている。


 なんとかダイエット、などのカジュアルだが科学的根拠があるのか怪しいものを紹介しているような書籍ではない。

 人体の構造や機能など、健康医学に分類される書籍だった。


 ……意外と興味深い。図説もふんだんに使用しているので、俺でもなんとなく理解できる。そして、もう少し運動をした方がいいということを学んだ。普段は学校まで歩いているからマシだと思うのだが、夏休みはコンビニに行く以外に歩かない……不健康まっしぐらだった。


 生活リズムが崩れる理由が分かる。体内の自律神経が乱れているんだなぁ、と本を読んで思った。


「ふむふむ」


 だいたい、十分ほど経過しただろうか。

 ふと顔を上げてひめの様子を見てみると、彼女は本を読みながら何やら頷いていた。


 そして一つ、気付いたことがある。


(ひめって、読むのが速い……?)


 ページをめくる頻度が明らかにおかしい。行を追っているであろう目の動きも素早く、そして忙しない。軽く俺の三倍……いや、それ以上かもしれなかった。


 本当に読んでいるのだろうか。つい気になって、彼女をまじまじと見つめてしまった。

 だいたい数分くらい。ひめを観察していると……数十秒ほど、目の動きが急に止まった。次に顔が赤くなって、それから瞳が揺れ始めた。


 先ほどまでと様子が違う。


「……えっと、陽平くん? どうかしましたか」


 俺が見つめていることに、ひめはどうやら気付いていたようだ。

 そのせいで、動揺したということかもしれない。


「あ、ごめん。邪魔しちゃった?」


「いえ、全然いいのですが……見られていると、ちょっと照れちゃいますね」


 嫌がるのではなく、照れるところがひめらしくてかわいい。

 とはいえ、意識を乱したことは反省するべきだろう――。

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