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誰にも懐かない飛び級天才幼女が、俺にだけ甘えてくる理由  作者: 八神鏡@幼女書籍化&『霜月さんはモブが好き』5巻


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第百四十二話 自己肯定感のバケモノ

 正直なところ、ドッグトレーニング作戦はすぐにバレると思っていた。

 何せひめの様子がおかしい。聖さんをやたらと撫でて褒めるし、お菓子を頻繁にあげるのだ。傍から見ていると、とても違和感がある。


 しかしながら、聖さんは俺が思っていた以上に褒められることに飢えていたらしい。ただただ喜ぶばかりで、この状況にまったく疑問を持っていない。


 むしろ、すごく充実していそうな顔つきをしていた。

 おかげで、一週間ほど経ってもまでドッグトレーニング作戦は続いている。勉強も順調で、この調子なら赤点を取らなくて済みそうだなと思っていた。


 テストについての不安はそこまで大きくない。

 もちろん、俺は点数の取り方を教えているだけである。おかげで基礎問題は解けるようになったのだが、知識が理解に及んでいないので、聖さんは応用問題がまったくダメという欠点があった。


 あと、彼女は決しておバカというわけじゃないのだが……なんだかんだ、記憶するという行為は得意じゃないらしい。歴史や化学などは範囲を絞らないときつそうだった。特に横文字はダメで、英語に関していうと単語を覚えるので精一杯。文法などは手が付けられていない。


 平均点はまず難しいだろう。しかし、赤点を回避できる程度ならなんとか……というような状況だった。


 もちろん、それでも聖さんは相当頑張っている。壊滅的なあの状況からここまで見通しがたてられているのなら、相当いいペースと評価して差し支えないだろう。


 そして俺たちもがんばった。

 特にひめなんてもう、ドッグトレーナーのように聖さんを褒めてあやしてなだめて……獅子奮迅の活躍を見せていた。


 俺のサポートなんてひめの足元にも及ばない。

 あの子が姉のメンタルを優しくケアしたおかげで、ここまでこれたと言っても過言ではないだろう。


 そんなこんなで、テスト三日前である。


 いつも通り、勉強は順調だった。ドッグトレーニング作戦がうまくいっている証拠である。

 ただ、問題が何もないというわけじゃない。ドッグトレーニング作戦の副作用が少し大きくなっているようで。


「ひめちゃんが私のことを大好きすぎる件について」


 ちょうど、あの子がお手洗いに行ったタイミングだった。

 聖さんが偉そうにふんぞり返りながら、そんなことを呟いた。


「お姉ちゃんもたいへんだなぁ。いつも甘えられて大変だよぉ……ぐふふ」


 嬉しそうである。ここ最近、ひめに褒められすぎて自己肯定感が限界を突破しているようだ。

 念のため注釈をつけておくと、聖さんは決して卑屈な人間ではない。なんなら常日頃から自己肯定感は高い。自分に甘く、他人にも甘く、すべてに甘いスイーツ系ゆるふわ人間なのである。


 ひめや芽衣さんに冷たくあしらわれていて、あんなにも明るい人間だったわけで。

 それが今や、ひめがすごく甘やかしているとなれば……そうして生まれたのが『自己肯定感のバケモノ』だった。


「ああ、気分がいいよ。ひめちゃんがデレデレでかわいすぎる……あんなにかわいい妹に懐かれている私もすごすぎるっ。よーへーの気持ちが分かるよ。すっごく、気分がいいね」


「いやいや。そんなこと思ってないから」


 なぜか俺を巻き込んでくる聖さん。同類だと思われているのがちょっとあれだった。困る。

 俺は自己肯定感が高い人間ではないので、聖さんほど調子には乗れないんだよなぁ。だからひめは普段から小まめに褒めてくれるのかもしれない。


 まぁ、褒められて嬉しい気持ちはわかる。

 とはいえ、聖さんはちょっと……天狗になりかけている気が、しないでもなかった。


「聖さん、英語の単語を覚えておいた方が良いと思うんだけど」


「え~? まぁ、私なら前日で覚えられるし、たぶん大丈夫だよ~」


 ……だ、大丈夫かなぁ?

 調子に乗って勉強をまたサボろうとしている聖さん。


 勉強は順調だが、それだけが少し心配だった――。

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