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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【胸糞注意】短期間のポストアポカリプス【作中で救い無し】

作者: まい

何度も書きます。


 ムナクソ注意!!

 救いのない結末です!


 その展開がお好みでない方は、回避をお願いします!

 現代とは違う、いつかあるのかも知れない、あったかも知れない地球。




 とある時期に、世界で同時多発的に奇病が発生した。


 犯人を探すなんて悠長(ゆうちょう)に言っていられない、まずは対処をせねばならない地球人類の一大事(いちだいじ)




 その一大事とは…………。


 ゾンビ化ウイルスである。




 ゾンビパニック映画さながらの大惨事(だいさんじ)で、噛まれるだけでなく爪でひっかかれただけでも感染する、非常に厄介な事態だ。


 しかし感染経路は、なぜかそこだけだ。


 噛まれるか、ひっかかれるか。


 ゾンビ化した者との単純な接触や体液では感染しなかった事から、どんなウイルスを使えばこうなるのだろうか。


 そもそも食事らしい食事もせずに、人間なんて重量物を動かすエネルギー(カロリー)をどう確保しているのかとか、体が腐っているゾンビは消化吸収機能も止まっているのになぜ食べようとしてくるのかとか。

 筋肉まで腐っているのに、なぜ動けるのかとか。


 それはもう研究者達の興味を()き立てるモノはあるが、それを研究しようとしてゾンビ化してしまった実例から研究が進められず、頓挫(とんざ)していた。



 このゾンビ達に悩まされて()()のが、ここから6年前。




〜〜〜〜〜〜




 ()はようやく研究所から開放されて、今はゾンビパニックによる深刻な被害者を収容する救済施設(かせつアパート)()()()ひとつで送られた所だ。




 …………もう少し俺の経緯を話そう。


 あの頃の俺は社会人だったが、まだペーペーの若造だった。


 ゾンビパニックなんて起きると思っておらず、()()会社員として日々を上司や先輩達に叱られながら、ヒーヒー言いつつ仕事をしていた。


 そしてゾンビパニックが起きた最初の週で、実は()()()()()


 俺以外の避難者と共にゾンビパニックから生き延びようと協力しあい(はげ)まし合い、生き残るための努力を始めた。


 あの日も食料とか生きるために必要な物資をかき集めている時に、そういった映画の主人公達みたく上手くはいかず、あっさりとゾンビ達に食われた。



 はずだった。



 覚めないはずの目が覚めたら、俺はなぜか俺の雰囲気を残したまま、知性を維持した()ゾンビになっていたのだ。


 俺のゾンビの体は不思議で、腐らない。 肌の色は少し(にご)ったが。


 女の体になったからか、声が高くなっているような感じはするが、きちんと言葉を話せる。


 ……3サイズ? 覚えてないよ、そんなモン。 見繕(みつくろ)ってくれる人がいるから、その人が覚えていればいい。


 こほん。 なぜか生前より強い力が出せるし、疲れないし、睡眠は要らない。


 心臓が止まっているから体が死んでいるので、メシは要らない。


 でも、なぜか体が飲めもしないのに水を欲しがって、飲む代わりに体へかける事で欲求が抑えられると判明した。


 それに何より、一番大きいのがゾンビに襲われなくなった。


 ……仲間だと思われたのかも知れない。



 とんでもなく都合のいい身体になった!


 なんて当時は浮かれつつ、変わってしまった俺を避難所のみんなは受け入れてくれるかなぁ。


 なんて軽い心配をしながら、担当の範囲の物資を集めながら帰った。





 どうやら俺はゾンビに食われてから目覚めるのに一週間は経っていたらしい。


 避難所へ帰り着いてから、俺が帰ってきたと受け入れられるまでは大変だった。


 一部のヒトは、すぐ受け入れに賛成してくれて積極的に反対の人を説得して回ってくれていた。


 けど、俺の体はゾンビだからな。


 たどり着いた瞬間に襲撃かとパニックになられたり、姿が変わったと理解してもらえるまでに苦労したり。


 それだけ苦労があって、改めて受け入れてくれた時には涙が出たように思うほど嬉しかったね。



 その後の地獄を知らなかったからな。





〜〜〜〜〜〜





 受け入れてもらうのに、俺の身体能力を開示した。 疲れないのも教えた。


 そうしたら、そんな体なんだから休み無しで何人分もの仕事をしろと、物資回収の担当地域と回収ノルマが増えた。


 寝ないからと、夜の見張りの仕事枠を固定出押し付けられた。


 避難所に“フリーで人間じゃないし死んでいるから妊娠しない女体”が加わったからと、避難所内での男女関係トラブル回避のためにと()()()()()を義務付けられた。


 …………そう。 言葉を濁しているが、ダッチとかラブな人形として扱われた訳だ。

 体が欲しがる水も、()()()にかけられる。

 (くわ)えた時にゾンビ化しないようにと、歯と爪を全部抜かれた。


 何をされても、体が何も感じなくなった。


 気持ちは既に壊れ、ゾンビ化した俺を受け入れてくれた瞬間に感じた嬉しさだけが、最後にして一番大切なモノとなった。




 こんな生活が2年過ぎる頃には、国からの救助が来た。


 ぶっちゃけ、ゾンビはパニックが始まってから数()月で終息していた。


 目についた全てのゾンビの体が腐り落ちて骨だけになり、動けなくなったからだ。


 そこからすぐ救助とは行かず、国はゾンビの残骸(ざんがい)を片付けながら各地へ救援物資を配って回り、生存者の数を把握して、その生存者が全員生活できるよう準備を整えるまでにどうしても時間がかかる。


 その間も都合のいい人形やロボットみたいに使われ、救助が来る日まで地獄は続いた。


 …………いや、地獄だと感じていたのは何時(いつ)までだったろうか。


 そんな、感じる感情すらも何時の間にか、無くしていたから。





 助けが来たと少しだけ修復された感情は、またすぐに砕かれる。


 俺だけ(おり)と何らかの充填(じゅうてん)材とコンテナ、計3重の厳重な封印をされたまま、恐らく何日かかけて運ばれた。



 どこに?



 研究所に。


 根本的な研究をせずに来た現在、ゾンビ化したのにほぼ無害な研究対象を、本当に都合よく国は得られたのだ。


 ゾンビ化した当人は姿が変わり、既に故人。 法にも人権にもひっかからない、扱い上はゾンビパニックで亡くなった遺体だ。


 そりゃあ研究するだろう。



 そこでの俺は基本的に厳重な隔離(かくり)部屋へ押し込められて、監視され、まさに物として扱われた。


 ……いや、物として見ていたのは一部(いちぶ)だけだったか? 俺を研究に対する善意の協力()として扱ってくれた研究者もいたのは確かだが。


 特に何を言っているのか分からない、周りから浮いて見える変なやつは、徹底して俺を物と見ていた。


 俺を物と見ていた連中はコチラの意思など気にせず、解剖されて、解剖後に()って繋げれば元に戻せるのか実験された。


 目も取られたが、縫われたら再び見えるようになった事に安堵(あんど)したのを、覚えている。


 一時(いっとき)記憶が飛んだ時もあったが、その時は脳を抜かれていたらしい。


 ……それとどんな理屈だか知らないが、データが必要だと主張され、結局は避難所と同じく欲望の()け口にも使われた。


 他にも色々。 俺の体のどこにそこまでの興味があるのかわからないが、とにかく体を使い尽くされた。








 あとから聞いたが、研究所には4年ほど居たそうだ。


 そんなに俺の体を研究したかったのかと疑問に思うが、それだけ長く収容されていたのだから、そうなのだろう。


 俺を研究して「完全な対ゾンビワクチンが完成した」とか「肉体改造薬が完成した」とか「ゾンビ化抑制薬や治療薬も完成した」とか自慢気(じまんげ)に言っていたが、それがどうしたと当時は思っていた。


 それと同時に「ゾンビ治療薬はゾンビウイルスで、異常変異した貴女(あなた)には効果がないの、ごめんなさい」と謝られた記憶もあるが、それも俺には何も響かなかった。



 開放される時には、まだマシな扱いをしてくれる人達から「すまなかった」「助けてあげられなくてごめんなさい」「あの外道どもはキミの前に2度と現れないから」なんて言われて送り出されたが、そんなのは正直どうでもよかった。


 多くの人が俺に言った通りで、俺は死人でちゃんとした人間ではなく、どんな事をされても反抗してはならない物なのだから。





 ………………。


 俺が救助施設へ入る経緯を思い出していたら、施設の入り口から誰かが駆け寄ってきた。


 アレは……。


 たしかゾンビ化して避難所へ帰ってきた時に、誰よりも俺に優しくしてくれて、受け入れに真っ先に賛成していた人だったか。


 なぜか厳重に残してある記憶は、その時のだけだ。


 その人に「お帰りなさい」と涙交じりに笑顔で迎えられたが、それにどう返すのが正解なのか、分からない。


 俺の手をとり「私はあなたの新しい家族! よろしくね!」と声を弾ませていたが、どんな反応をすればいいのか、分からない。


 施設内の窓からこちらをチラチラと(うかが)っている人達が何をしたいのか、分からない。


 手を引かれながら「あの地獄で身代わりになってくれて(つら)い思いを沢山させちゃったけど、これから一杯い〜〜っぱい! 幸せを取り返そうね!」と俺に呼びかけている様だが、残念ながら話しかける対象は物だ。


 幸せなんて人間が持つモノなのだから、物である俺には無いだろう。


 俺はこれからどうすればいいのか、分からない。


 俺は言われるままに動く、物なのだから。



 …………手を引く女性は、あの記憶の女性なのだろうか?


 顔がどうにも違って見えて、仕方がない。










蛇足



主人公


 エピローグは未設定。


 多少は疑問をもったり出来るが、ほぼ無感情無感動。


 疑問は確かに疑問としてあるのだが、物として居続けたために疑問について思いを(めぐ)らせる思考は、分からないモノは分からないと捨ててしまった。


 過酷な環境により、まともな精神は既に持っていない。


 避難所で物になる事を受け入れた時、何かそうする理由があったがはずだが、その時の記憶はとっくにズタボロになっていて思い出せない。



 将来的に感情を取り戻して救いを考えてもいいし、感情を取り戻せず再び地獄の日々へ送り出すもよし。


 TSゾンビ化してからの寿命すら未設定なので、存在させ続けるか腐り果てて埋葬させるかも決めておりません。


 全ては読者様方の好み次第。




避難所



 ゾンビ化した主人公を受け入れてから生活がだいぶ楽になった。


 ストレスの捌け口に、食料を減らさずに増やしてくれる労働力に、見張りとゾンビへの対応力に。


 主人公にほぼ頼り切りとなっていて、精神が壊れておらずに脱走されていたら、前の生活に戻れず生活の場は崩壊していただろう。


 それだけの能力をゾンビ化した主人公は得ていた。


 が、そう正しく予想していた避難所の住民は、極めて少数だった。


 その予想できた人々も、そこへたどり着く前に主人公の精神は壊れていて、とっくに手遅れとなっていた。


 なにせ主人公のおかげで楽になって、そう言った考えをできる余裕がようやく生まれた後なので。




研究施設の研究者



 2度とゾンビウイルスなんかで世の中を混乱させるものかと、完璧な治療薬と予防薬を作ろうと立ち上がった者達が集まっていた。



 だが蛇の道は蛇。


 特殊な変異をした、特別な個体を入手したと外国に知られて、外交圧力等のゴリ押しで海外研究者も来ていた。 それが何言ってるか分からない研究者。




研究施設の外道



 実はそいつ()がゾンビウイルスをバラ撒いた組織の研究者。


 世界各地から特異な存在になった主人公を研究したくて集結。 真っ当な志を持った研究者達に(まぎ)れ込む。


 自分達が作ったウイルスがどう変異しているか、その変異したウイルスを更にどう使うか。 そんな研究をしまくっていた。


 研究施設のまともな研究者から心底嫌われ警戒されていて、倫理的にマズい研究まで走り出した所で、ヤバイやつがいるとリーク。


 リークされた狂研究者達は調べられ、ゾンビウイルスの元凶の関係者とバレ、処分を受けた。




主人公を救済施設で出迎えた女性



 未設定。


 元カノだったとか、妻だったとか、避難所生活でゾンビ化する前の主人公を好きになっていたとか、主人公をただただ利用しようとしているだけか。


 ただ言えるのは、たしかに避難所でゾンビ化した主人公へ親身になって接してくれていた事は事実。


 だが主人公が(ひど)く壊れても持ち続けていた記憶から6年近くも経てば、そりゃあどこかは変わる。


 それに壊れてしまった主人公が、思い至らないだけ。




救済施設の人達



 コソコソと窓から見ていた理由は様々。


 こいつらが主人公と今後、どう関わっていくか、どう動くかは読者の皆様方の想像しだい。


 悪夢や地獄が続くのか、接し方がわからず遠巻きに見ているだけか、温かい人の輪が出来上がるのか。




主人公を研究して完成した薬の数々



 主人公を使った非人道的とも言える実験の果てに生まれた。


 その過程が過程だけに、その事実は表に出せず。


 結果として主人公の功績は秘匿(ひとく)事項。


 マシな研究者達がそれでは主人公が(むく)われないと(なげ)き、治療薬の売上の一部を主人公へ(ゆず)る計画をしていた。


 が、主人公はその存在の関係で、金をほとんど必要としなくなっている事に気付く。


 どうすれば良いのかと悩んで国と相談した結果が、救済施設である。


 が、その事実はまたもや伏せられ、ごく一部の者以外には全く知られていない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 外道研究員だけでもぬっころされてるのだけは救いでしょうか。創作媒体だとだいたい生き残るのがこいつらですからね(怒) 頭脳の価値とか司法取引とかで、後からのこのこ出てきた政府あたりに持ってい…
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