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クリスイブイブ

作者: いしい 皐

以前、書いた、短編小説です

途中まで書いた、白い鳥は文字入力をなれていなかったので、目一杯文字を書き込んでしまい、とても読みにくかったと思います。今回は、前の失敗を踏まえて、画面は読みやすくしたつもりです。

短編なので、宜しければ読んで感想などお聞かせ下さい。

 あれ、もうクリスマスソングが鳴っている。


 早いなあ早いなぁーー。 


 俺の名前は 天野 聖-あまの ひじり-。



 駅のプラットホームで、何で一人 にやけているかって?それはなぁ・・・へへん。

   

 親に無理いってさあ、憧れのサッカーの強豪校、私立のF高校に入学させて貰って、俺の実力つーかぁ、努力が実ったつーかさぁ、次の試合から、やっとレギュラーとして出られることになったんだよ。


 俺の頭の中は次の試合のことでいっぱいで、自分の活躍するシーンが頭ン中、グルグル回っちゃってさあ、読んでる文庫本のページがちっとも進まないや。


『4番ホームに通過列車が入ります。

 お客様は黄色い線の内側まで、おさがり下さい』


 なぁんだ、俺の乗る電車じゃないや。


 え!


 誰かに背中を押されたような気がした。


 瞬間ーーー。


 俺は宙に浮いていた。


 ゲェェェ・・・・・? 

 

 目の前に電車がぁぁぁ・・・・なんでぇ・・・・!


 運転手さんの恐怖に歪んだ顔と目が合った。


 そして、俺の意識はぶっとんだーーーー。




 あれ?


 身体が宙に浮いている。


 真っ暗だ。


 何か変な気分・・・あ~あ、夢。これ、夢だ・・・そうだよ、暗闇を漂う夢だ。ほら、明かりがぼんやり見えてきたじゃん。


 ヒト・・・大勢の人が・・・何だろう?みんな行儀よく黒い服着て、座っちゃってさぁ。


 あ、母さん?父さんもいる。


 れれ?いつの間にか俺、母さんの側に立っているよ。なぁ、何泣いてんだよ、母さん?礼服なんて着ちゃってさぁ。


 俺は母さんの肩を叩いてみたけど、ちっとも気付かない。


 オーイ、聞こえないの?


 あれ、そういえば、ここって・・・・。


 俺は周りを見ようと、目を擦った。


 祭壇に俺の写真と花が飾ってある・・・・・。


 こ、これって、俺の葬式!


 うそだろう!


 だって、俺、ここにいるじゃん。


 ね、ねぇ、母さん、返事してよ!父さんも下向いてないでさぁ・・・・。


 冗談だろ、俺、ここにいるよ、死んでないよ!聞こえないのーーー。


 あ、あれ?


 ちょっと、何で身体が宙に引っ張られるのーー? 


 俺、何処に行くのーー。


 うわぁ!眩し・・・・!光が・・・・!


 前が見えないーーーー!




なんなんだ、この光は・・・・・?


 俺の周りが光輝いている・・・・。


 ここはいったい何処なんだ・・・・?どうやって、一瞬でここまで来たんだ?眩しくって、周りが見えないや・・・・お、目がだんだん慣れて来たぞ。


 ありゃぁ?何だぁ、このツルツルの石の部屋?大理石ってやつか。よく高級ホテルの床とか、壁に使っている石だ。


 そうだ!ここ教会だよ。窓にステンドグラスがはまってるし。


 しかし、どうやって俺、葬式の催事場から、ここまで来たんだ?


 何が何やら分からずに、床に座り込んでいる俺の目の前に白い衣を着た太ったケンタッキーおじさん似の神父らしいオッサンがいつの間にかたっていた。


 オッサンが言った。


「いやぁ、ごめん。ごめんよ。ちょっとした手違いでねぇ。


 つまりね。天国こっちに来るはずの人間がちっとも来ないんでね。この新米天使に初仕事で迎えに行かせたんよ。そしたら、この天使のやつ、間違えて隣にいたあんたをプラットホームの下におとしちゃってね・・・・。


 あんたに言っていいのかなぁ。まぁ、黙ってても直ぐ分かちゃうから言っちゃおうかな。


 実はね。あんたの身体・・・・・。



 電車に引かれてね、バラバラになっちゃたのよ。ちなみに天国こっちに来るはずだった人ね、その後直ぐ、脳卒中でコロン。


 今頃、天国での~んびり寛いでるわ」


何だって!天使の間違いぃぃーーーー!


 俺の身体、バラバラって、つまり、俺、死んじゃったってことぉ。この俺がーーー将来有望の天才サッカー少年『天野 聖』様がぁ。


 これから・・・・これからって時に・・・・。


 たった、十七歳でぇ・・・・。


 頭が混乱して、驚きの声も出ねえよ。


 立ち上がれず、床の上に座り込み、俺はあたふたとして、金魚みたいに口をパクパクしているだけだった。


 太ったオッサンが言った。


「わたし、これでも神様よ。


 でもね、あんたを天国に入れてあげたいんだけど、まだ、寿命じゃないんでね、入れないの


 そっちが悪いのにあんまりじゃん。


「まぁ、そう怒らないでよ。天使にしてあげるから~」


 て、天使ーーーー、俺がぁ!柄じゃないよ!


「まぁ、一つ条件はあるけどね」


 ヒトを勝手に殺して、こんな所に連れて来といて、条件ってのないでしょう?あ~もう、理由分からん。段々なんか、このオッサンの話、聞いてたら、腹が立って来た。


 それに、何か俺の考えていること、みんな、この自称『神様』と、名乗るオッサンに全部分かってしまうみたいだし・・・・。


「でね、その条件ってのがね。本当に困っている人を助けてあげること。


 一人でいいからね。それだけよ」


 本当に困っているのは、今の俺でしょう?父さんや母さんだって、今頃・・・・バラバラになった一人息子の姿を見て、どう思っているか・・・・もっと、親孝行しておけば良かった・・・・ハハハ・・

・・もう遅いか・・・・。ハア・・・・。


 !、その前にさぁ、実体ないのにどうやって、人助けしろっつーの?


「大丈夫、わたし神様よ。


 あんたの魂を人間にね、実体があるように見せることぐらいできるから・・・・でも、生前のあんたが街中をウロウロしていて、知っている人に会ったら、大変なことになるから、別の姿に7なってもらうからね」


 またぁ、勝手に決めて、話どんどん進めないでくれる。


「あ、そうそう。


 あんたがちゃんと、やってるかどうか見るためにね、ベテランの天使を就けてあげるから、分からないことや、困ったことがあったら、このミカちゃんに訊きなさい」


 こう、オッサンが言い終わるか終わらないうちに、俺の目の前に光に包まれて長い金髪にブルーアイの背の高い女の人の様に美しい男の人が現れた。


 ヒェー!お約束通り、背中にちゃんと、翼が生えていて、白い衣を着ているよ。


 いやぁ。俺、何かもう、大抵のことには驚かなくなっちまったよ。


 俺を見て、ミカって野郎薄笑いを浮かべてやがる。笑うとますます女みたいだ。ほんとに頼りになるのかぁ、こいつ・・・・。


「あとね、あんたが天使になれるのね、期限があるから気を付けてね。それを過ぎると、寿命がくるまで、この天国の入口にずっといることになるからね・・・・まぁ、頑張って、本当に困っている人探して、助けてあげなさいね」


 俺の頭ン中、ゴッチャゴチャになって、ええ~そんなぁと思っている間に、オッサンの姿は消えて、俺は駅のプラットホームに立っていた。


 ・・・・・今のはなんだったにだ・・・・夢か・・・・?


「タイムリミットはクリスマスですよ」


 ボーーッとしていた俺はドキッとして振り返ると、俺の隣に知らない男が立っていた。


 出たーーーー!


 もしかして、こいつがミカ!


「そうですよ」


って、ニッコリ微笑ってやがる。こいつも俺の考えていることが分かるのかよ。


 しかし、さっきとぜんぜん違うじゃん。ちゃんと日本人に見えるじゃん。


 これも、神様の力ってやつ?


 しかし、なんつーか。別の面で目立ちすぎるよ。まるで、芸能人みたいにカッコイイっていうか。

人には好みってもんがあるだろ?でも、今のミカの姿って誰が見てもカッコイイ。


 スラッと背が高くて、足が羨ましいほど長いし、ジャニーズ系の優しいルックス、甘い涼しげな声・・・・男の俺だって、惚れそうだ。きっと、青山あたり歩いたら、それだけで、女の子たちが、絶対、キャーキャー言って集まって来るぞ。


 着ている服だって、今流行のファッションだし、だけど、ちゃんと胸元まである鎖に十字架(クロス)を付けている。俺の目の前にいる黒髪サラサラヘアーを掻き上げて、かっこつけている、この男ーー。


 もしかして、ミカって大天使ミカエルの略だったりするわけぇ?


「もしかしなくても、そうですが、なにか?」


 背中・・・・!背中に大きな翼が・・・・人間にはないんですけど・・・・。


「ああ、すみません。


 実は下界に降りるのは、人間の世界の時間でいうと何千年ぶりなもので・・・・。


 はい♡これで見えなくなりました。


 他に変なところはありませんか?」ニッコリ微笑う。


 は、はい。たぶん・・・・。


 カッコイイけど、何か話すと世間知らずのボンボンって感じだなぁ。


「ボンボンって、なんですか?」


 イーヤ、イヤイヤイヤ何でもないんですよ~。何千年ぶりって言うからぁ。人間界に大天使様が何用で来られたことがあるのかなぁって、ハハハ・・・・。


 こいつ、俺の考えていることを全てお見通しなんだ。余計なこと考えないようにしよう。機嫌そこねて、ここに置き去りにされて、地縛霊にされても大変だからなぁ。


「そんなことしませんよ、(ひじり)君。


 あなたはこちらの手違いで死んだのですから・・・・」


 ワーッ!また余計なこと考えちゃった!


「えっと、先ほどの質問にお答えしますと・・・・」


 いやいや、無理にお答えしなくても・・・・。


「昔、わたしと同じ位の力のある天使がいましてね。確か、ルシファーって名前だったと思うんですが、神様より自分が偉いんだぞって、何か勘違いしちゃったんですよ。


 それでね。ルシファーったら下界に逃げまして、わたしが神様の代わりにルシファーを捕まえようと追いかけて行ったんです。


 そしたら、ルシファーったら、抵抗しましてねぇ。あの時は人間に随分迷惑を掛けました。わたしもまだ未熟者でしたので、力まかせに喧嘩しましてね。


 今風に言うと『バトル』ですか?地上全体を舞台にした白熱の戦い(バトル)でしたよ」


 バトルなんて言っちゃってるよ、この人ーーーーー。


「地面は揺れるは、ひび割れるは、海の水は竜巻となって天に昇って行くは・・・・かと思うと大量の雨となって地上に降り、大洪水になるは、そうこうしているうちに海が二つに割れるはーーー」


 俺はなんか話聞いてて、だんだん冷や汗が出てきた。


「一応、正直者のあのノアという男の人には、この場を早く逃げるように注意はしておきましたが・・・・。七日間もルシファーを説得(バトル)し続けると、流石のわたしも疲れてしまいましてね。


 ルシファーったら、あんまりにも頑固なんだもの、わたし頭に来たんで最後の力振り絞って地獄に突き落としてあげました。


 ニッコリ笑って凄い怖いこと言ってるよ。


「でも、彼、もの凄い頑固者だっただけあって、転んでもただでは起きないタイプだったらしく、今では名をサタンと改めて悪魔たちを一つにまとめ、地獄を取り仕切っています」


 ノアの洪水の話って大天使ミカエルと堕天使ルシファーの喧嘩が原因だったのぉ!


 な、何か見かけによらず怖いんだけどこの人・・・・優しい声と言葉で怖いことを平気で話すところが特に余計怖いんだけど・・・・。


 俺の中の神様っていうかぁ、天使のイメージがガラガラと崩れていく音が頭の中で響いてくーーー。


 絶対、この人に逆らうのやめよう。余計なこと考えるのやめよう。下手したら、天国に行くどころか地獄に落とされちゃうよ、俺・・・・。


「そんなことしませんから・・・・」


 微笑ってるよ。目以外、微笑ってるよ。


「しつこいようですが、タイムリミットはクリスマスですよ。


 天国の入口で、永遠というぐらいの長い時間、寿命が来るまでウロウロしているより、天使になったほうがいいでしょう。


 時間がありませんよ、聖君。


 あと三週間、今日はもう日が暮れてしまいます」


 そんなこと言ったてさぁ、ネェ。


 困っている人を助けろったって、困っている人が困ってますって、旗しょって歩いているわけないしぃ・・・・どうしろってんだよ!


 とりあえず街の中歩き回って困っていそうな人を探すしかないんじゃなぁい?


 そうだ!


 ミカは他人の心を読めるんじゃん!


と、考えたとたん、


「自力でやってください」


 厳しい一言に俺はガックリ・・・・。


 何だよそれぇ、自分たちの手違いなのにさぁ。もう・・・・なんで俺がこんな苦労しなきゃなんないんだよう。


「それでないと意味がないんですよ」


ったく、ニコニコと笑いながらきついことを言う。


 ハァーーーーー。


 取り敢えず、駅を出て、街を歩いてみることにしよう。ここに、突っ立ってても何も変わらないしな。


 クリスマスソングが、あっちからも、こっちからも聞こえてくる。街の中は俺の気分とは裏腹に、赤、黄、青のさまざまな色の派手なキラキラした電飾が飾られていて、ハハハ、いやんなるほど騒がしいよ。


 何だか、目がチカチカして、涙が出て来たよ。


 ふと見た、ショーウィンドウに自分の姿が映っているのをを見て俺は『ドヒェ~!』と、叫んでしまった。


 だ、だ、だ、誰?誰?ダレだよ!これはぁ。


 驚いた俺は思わず、ショーウィンドウのガラスに張り付いてしまった。ガラスに映っている俺の姿は全くの別人で、自分で言うのも何だけど、結構なイケメンじゃん。


 肩までつきそうなウェーブのある茶髪に、ツルツルのニキビなんてない綺麗な肌。鼻筋の通った面長の顔。二重のパッチリした目、ジョニーズのアイドルみたいだ。


 カッコイイよ。スッゲーな、これが神様ーオッサンーの力か・・・・カッコ良くなったのは嬉しいけど、でも、何か違う。素直に喜べない・・・・。


 俺の顔じゃないんだ。親に貰った顔はもうないんだ。いつも、何だかんだと煩い父さんや母さんだけど、会えないと思うとなおさら会いたくなる。


 なぜだろう?


「ご両親に会いたいですか?それじゃあ、頑張りましょう」


って、どうよ。落ち込んじゃだめなのぉ。死んじゃったのに頑張れば生き返れるのぉ~。俺の身体もう灰になっちゃったんだよ~。


 ふーっ。


 俺は溜息をつくと、当てもなく街を歩き始めた。


 夕方、この時刻、学校帰りの学生や会社帰りのサラリーマンやOL、etc・・・・、人、人、人、人の雑踏で駅前のモール街はごった返していた。その中に俺のチームの連中を見付けた。


 俺は思わず手を上げて、『やあ』と、声を掛けてしまった。でも、しっかり無視された。


 あたりまえだよな、すっかり姿変わっちまったんだから・・・・。


「知り合い?」 


「いやぁ。全然・・・・人違いだろう」


「しかし、人身事故だなんて、困りましたねぇ、先輩。電車が動かないんじゃ帰るに帰れないっすよ」


「臨時バスでるらしいぜ」


「地下鉄使います?先輩・・・・」


「さっき、おばちゃんたちの話声が聞こえたんだけど、どうやら、死んだのウチの生徒らしいですよ。でも、まだ、身元が分からないらしくて・・・・人間かどうか分からないぐらい、バラバラだって・・・・」


「よせよ、そんなキモイ話。

 

 地下鉄使って遠回りして帰ろうぜ。電車、何時動くか分かんねぇし。ったく、天野のやつ、買い食いしないで、さっさと帰って正解だったな。


 あいつ、結構感がいいから、虫の知らせってやつで、帰っちまったんだぜ」


「あ~、腹へったなぁ」


「さぁ、行こうぜ」


 部の連中は、俺の横を通り過ぎて行ってしまった。


 あれ、時間の経ちかた変じゃない?


 俺、さっき自分の葬式みたんだけどぉ、今はまだ事故の直ぐ後?なぁ、ミカ、変じゃ・・・・。


 ミカは、あの冷たい微笑を浮かべていた。


 これは、質問するなっていう暗黙の印・・・・だって、分かって来た。


 そうだ、サービス!


 俺に少しだけ、時間の猶予をくれたんだ!うん、きっとそう、神様って優しいなぁ。

 

 あ~、わざとらしい(真面目にやろう)


 ふと、前を見ると雑踏の中、いたいた、沢山の荷物を持ったお婆さんが道を渡れないで困っているみたいだ。


 ようし、あのお婆さん助ければいいんだな。


 なんかドキドキするなぁ。深呼吸して気分を落ち着かせて、お婆さんに話し掛けてみよう。


「お婆さん、随分荷物重そうですね。持ちますよ。さぁ、僕の手に掴まって、道を渡りますよ」


「え?いえ・・・・」


 お婆さんが何か言ってるけど、周りが煩くてよく分からないや。しかし、凄い人混みだな。これじゃあ、お年寄り一人じゃ、なかなか渡れないはずだよ。


 俺は片手でお婆さんの手を引いて、もう片方の手で重い荷物を持って雑踏の中を縫うように歩いたけど、これが結構大変・・・・。


「さあ、着きましたよ。駅前は人が多いから気を付けてね」


 俺は良いことをしたと思って、お婆さんに荷物を渡しながら、出来るだけ優しく言うと、何かこのお婆さん、不機嫌そうな顔してるんだよねぇ。


「この、おおぼけが!


 何、怒ってるのぉ、叩かないでよ。


「余計なことしよって!


 あたしゃね、あそこで道を渡ろうとしていたんじゃないんだよ。あそこで息子と待ち合わせをしていたんだよ。まったく、今時の子は他人ーひとーの話を良く聞かんと、チャラチャラしたカッコして自分勝手で・・・・。まあ、いいよ。悪気があってやったわけじゃないみたいだしのぉ。


 そんじゃ、あたしゃ、行くよ」


 ええ!渡るんじゃなかったのぉ。ど、どうしよう。助けるどころか、迷惑掛けちゃったじゃん。ミカ!お前は知ってたんだろう?酷いよ。教えてくれたっていいのにぃ。


 あ、あのぉ、すみませ・・・・。


 俺はしどろもどろになってしまった。


 お婆さん、に、荷物持ちますよ。それ結構重いでしょう・・・・。


「結構よ。


 あたしゃ、あんたみたいのが嫌いでね」


 そんなぁ・・・・。


「年寄り扱いせんどくれ、まだまだ若いもんにゃ負けないよ!」


 お婆さん、カンカンだよ。


 いて!


 荷物を持とうとした俺の手を引っ叩くと、取り付く間もなくサッサと人ゴミの中を歩いて行ってしまった。


 ハァーーーーー。


 困っている人を助けるって、これ結構難しいんじゃない?


「そうですね」


 ミカは微笑んだ。


 そうですねじゃないでしょう?と、俺は引きつり笑いをした。


 ミカはまだ微笑ってる。


 ハイハイ、分かりましたよ。街中を歩いて探しますよ。もう、こうなったらやけくそだ。真っ白い灰になるまでやってやる!


 あれ?何か、スポ根みたいーーーーーっ。


 ツーーより、もう俺、灰になってんだっけ、ミカの微笑う側でひとり考えに耽っていると、俺はツンツンと背中を突かれた。


 ?


 後を振り向くと、


「ねえねえ、カッコイイお兄ちゃん・・・・」


 な~んて言われて嬉しくて、ニッコリ笑ってしまった。


 そこには、揃いの鞄を背中に背負った、どうやら進学塾の帰りらしい、3・4年生位のの男の子が2人、困ったような顔して立っているじゃん。でも、このときの俺はこいつらにどんな目に遭わされるか想像すらしなかったんだよなぁ。


 何?どうしたの?


 俺は腰を屈めて、子供たちの目線に合わせて訊いてみた。


「あの、お金・・・・。


 ジュース、買おうとしたら、自動販売機の下にお金、落としちゃって・・・・見えるんだけど、僕たちの手じゃ短くて届かないんだ・・・・だから・・・・」


 おお、これはナーイス!困っている人からやってきた!


 いいよ。取れるかどうかやってみてあげる。


 俺は子供たちにグイグイ引っ張られて、近くの自販機まで小走りに走って行った。オイオイ、そんなに走らなくってもさぁ、自販機の下のお金なんて誰も盗らないって・・・・。


「この下だよ、お兄ちゃん」


 ええ!こんだけしか地面から隙間ないのぉ。


 無理、これは無理。腕が入らないよ。でも、子供たちの泣きそうな困った顔を見ると何とかしなくちゃって、俺、ガラにもなく思っちまってさぁ。俺たちの横を通り過ぎて行く人の目も気にせず、地面に顔をくっつけて覗き込んだ。


 そんな俺の後で、クスクス笑いながら子供たちは、コソコソと逃げて行ったのにも俺は全然気付かなかったんだ。


 ねぇ、君たち、本当にここに落としたの?何も見えないんだけど・・・・。


 俺が這いつくばって、自販機の下を覗いているのを見て、通行人がクスクス笑いながら通り過ぎて行くのが暢気な俺でも分かった。


 畜生、お金なんて落ちてないよ。


 どっか、他の場所に転がって行っちゃったんじゃなぁい?


 ねぇ、君たちーーーーー。


 顔を上げると、いるはずの子供たちがいない・・・・。ゲェェェ!何でぇ・・・・。俺は顔がみるみる赤くなるのをかんじた。


「やられましたね、聖君。


 あの子たちは、よくこの辺りで親切そうな人を見付けると、ああやって騙して遊んでいるんですよ」


 なにぃ。


 それじゃぁ、俺、あいつらにからかわれていたのぉ・・・・。酷いよ、ミカ!俺が騙されているの分かってて何で教えてくれないんだよ!


「わたしは、あなたの監視役です。


 聖君、あなたがちゃんと神様の言われた通り、困っている人を助けるかどうか見ているだけです」


 なんでぇ!


 神様ーオッサンーは分からないことや、困ったことがあったら、ミカに訊けって言ってたじゃん。


「あなたの手助けをしろっていう意味ではありません」


 冷たいよなぁ~、ミカって、天使のくせにさ。


 俺が通行人ーひとーに笑われながらも恥ずかしいの我慢して、這いつくばって、子供の落としたお金を探してたのにさ。嘘だって分かってて黙っているなんてさ、酷いよ。


 俺はなんか、涙目になって来ちまった。


「これが、わたしの仕事ですから手助けは出来ないんですよ」


 ああ、そうなんですか。分かりましたよ。


 ちぇっ。


 俺は不貞腐れながら起き上がると・・・・。


 あれ?


 今まで気付かなかったけど、ひんやりしてザラザラしたアスファルトの感触が全然感じなかったなぁ。それにホコリだの小さなゴミ、ガラスの破片なんか、こんなに落ちてて汚い道に這いつくばったのに、服とかちっとも汚れていない、なんで・・・・?


「霊体だけですから実体はありませんので、聖君は物に触れることは出来ません。ですから、ゴミが服に付かなかったんですよ。ちなみに、さっきのお婆さんの荷物はわたしが、浮かせました。


 それに、お腹も空かないでしょ。あ、そうそう、眠る必要もありませんから、たぶん眠くならないでしょう」


 なにぃ!


 二十四時間働けますかってかぁ?昔のCMにあったけど、寝ないで人助けしろってかぁ。


 いくら霊体だからって、心は疲れるよぉ。睡眠は身体だけじゃなく心を休ませるためにもあるんだよーーー。


 第一、この歳で夜中に街中歩いてたら、補導されちまうよ。いくら大人のミカが側にいたよしてもさ。それにどうせ夜中に困っているヤツなんて、ロクなヤツじゃないさ。


「さぁ、本当にそうでしょうか?」


 そうに、決まってるさ。


「ほら、あそこのゲームセンターにいる子供たち、家庭に問題があって帰れないんですよ。


悪ぶっていますが本当は寂しがりやなんです。子供だけじゃありません。夜しか仕事が出来ない人もいます。いいえ、昼も夜も働かなくては生活出来ない人も、昼間働いて夜、学校に通っている人もいますし、その逆もあります。


 皆、必死で頑張っているんですよ」


 はいはい、分かりましたよ。困っているのは俺だけじゃないんでしょ。


 分かったってば・・・・。


「聖君、真面目に聞いて下さい。


 いいですか!しつこいようですが、天国の入り口で寿命が来るまで永遠と長く感じる時間を一人でいることになるんですよ。孤独のその辛さをあなたは分かってないんです」


 孤独?孤独ねぇ・・・・?


 アスファルトの上にペタンと座り込んだまま、ポカンとキカの顔を見上げ、考えている俺の格好って、、きっと他人から見たら滑稽だろうな。


 そう、今の俺はこんな大勢の人がいる中にいても、誰一人として俺を知っている人はいないんだ。

俺の姿を見て苦笑いし、冷ややかな目で見ながら通り過ぎて行く見知らぬ人々、なんか俺、檻の中のパンダみたいじゃん。


 立ち上がろうとした俺の足はなんかガクガクして、今まで気にもしてなかった他人の冷ややかな目が俺に深く突き刺さって、おれ怖くなって来ちまったよ。


「大丈夫ですか?」


 震えが止まらないや。


 人間を怖いと思ったことなんかないのに、ミカが俺の身体を支えてくれなきゃ立ち上がれなかったろうな。


 悪いなぁ、と、ミカに礼を言おうと思って、口を開きかけたとたん、


「いやぁ、放して!誰か助けて下さい」


 女の人の叫び声が聞こえた


 どうしよう!


 中年の酔っ払いに女の人が絡まれてるよ。だけど、さっきの俺のときと同じように彼女の近くを通っている人でさえ、見て見ぬふりをして足早に彼女から離れて行ってやがる。


 ひっでぇ、なんて薄情なんだ。でも、俺もこうやって見ているだけじゃ、他のやつらと同じじゃん・・・・いいや!!違うぞ、俺は。


 気を取り直して行くぞ、助けてあげなくちゃ。


 俺、行って来るよ、ミカ!


 はりゃぁ、止めないの?


「はい、

 震えも止まったみたいだし、、大丈夫でしょう。頑張って下さい」


って、ニッコリ笑ってやがる。なんだよそれ、ほんとシビアだこと・・・・。


 ようし!見てろよ、ミカ。俺だってやれば出来るんだからな。


 走って女の人のところへ・・・・て、なんで身体が思った通りに動いてくれないのぉ。右手と右足が、左手と左足が同事に出ちゃうよ。大丈夫だ,俺! ガンバレ、俺!どうせ殴られたって実体が無いんだから痛くないんだし、勇気をだせ、俺!



 俺はギクシャクしながら、絡まれてる女の人の所へ向かって行こうとすると、やっぱり、ミカのやつ笑ってやがる。とにかく頭に来るヤツだ。



俺は酔っ払いの近くまで行くと、深く息吸い込んで気を落ち着かせようとしたんだけど、魂だけなんで深呼吸なんて出来るわけないんだよな。


 取り敢えず形だけでもやってみれば気分的に違うかな?


 酔っ払いの近くで、もたもたしていたら・・・・。


「なんだよう~、兄ちゃん。何か用かい?」


 酔っ払いのおじさんは俺に気付いて、顔を近付けて来た。


 しかし、クッセー!息、酒臭いよ。あれ、魂だけなのに臭いは感じるのかぁ、って、感心している場合じゃないでしょー!


 あ、あの、その女の人、嫌がってますよ。は、放してあげて下さい。


 ハハ、い、言えたよ。怖かったけど、注意出来たよ。


 酔っ払いに腕を捕まれた女の人は、うんうんと頷いて不安げな表情をして、俺の顔を見ている。近くで見ると、ヤリー!綺麗なお姉さんだ。なんか見詰められると照れるなぁ。


「う、うるせえんだようぉ、このガキ!女みたいに、チャラチャラしやがって、この野郎!オラ~酔っ払っているけどよぉ、てめえみたいなオカマ野郎にゃ負けないよぉ・・・・」


 って、言ってる間に俺に向かってパンチを繰り出してきたよ、このおじさん。


 ひえ~。


 俺は頭を抱えて、しゃかんでしまった。カッコワリー・・・・。


 けど、次々と酔っ払いのおじさんはボテボテしたお腹で、腕を振り回して、俺に向かって来るよぉ。


 何だよ、このおじさん・・・・。


 これが、絡み酒ってやつかよ。もうこの人、女の人のことなんて頭にないよ。俺をカウントダウンさせたいだけみたいじゃんよ。


 ああ!


 あの美人のお姉さん、助けに入った俺をほっぽって逃げちゃったよ。なんでぇ、一言お礼ぐらい言ってよぉ。


 女の人に気を取られてたら、俺、もろ酔っ払いのおじさんのパンチ、食らっちまったよ。


 あれ~?


 実体がないはずなのに、俺は気付くと、地面に仰向けで大の字になって倒れているじゃん。


 なんてこった。


 また、裏切られたのか・・・・。いや、悪く考えるのはやめよう。きっと、あの女の人も何か事情があってさぁ、揉め事に係わりたくなかったんだよ。


 そうだよ、きっと・・・・。


「おい、君、大丈夫かい?」


 大の字になって、ダウンしている俺を助け起こしたのは、おお!お巡りさんじゃん。じゃあ、誰か心優しい人が絡まれている俺を気にして警察を呼んでくれたんだ。


まだまだ、世の中捨てたもんじゃないんじゃないんじゃなぁい。


 は、はい、大丈夫です。


「だめだよ、君。こんな所で寝てちゃ」


 え?


 じゃあ、俺、酔っ払いに殴られて・・・・。


「君、まだ高校生だよね。こんな時刻に何してるんだね?」


 な、何だよこれ、誰かが俺を助けるために警察呼んでくれたんじゃないのかよ。ただの巡回のお巡りさんに、ダウンしているところを俺、発見されただけぇ。


 さっき、殴られてた俺を見てた人たち、見て見ぬ振りして素通りかよ!


 なんか、人間不信になりそう・・・・。


 酔っ払いに絡まれていた女の人を助けようとして、反対に伸されたなんて言っても、信じてくれないよなぁ。


「何だね、君。その表情ーかおーは口がきけない理由ーわけーじゃないだらう?


 名前は?何処の高校?ちょっと、一緒に来てくれないか?」


 お巡りさんは俺を派出所にでも連れて行こうとしているのか、俺の腕を強く掴んだ。


 まずいよ。俺、連れてかれても引き取りに来てくれる保護者いないし・・・・。


 俺はとっさに、お巡りさんの手を振り払うと、猛ダッシュで走り始めた。


 ミカの野郎、何処に行ったんだよ!こんな時にぃ。


 俺はサッカーで慣らしたフットワークで人ゴミの中を軽くすり抜け、追い駆けて来るお巡りさんを上手くまいて逃げた。


 やってらんないよ。


 誰だよ。困ったら、ミカに訊けってぇ!


 死んだ人間が殴られて気絶するなんて、初めて知ったよ。


 ハァ・・・・。


 あれ?かなれの距離全力で走ったけど、全然、汗もかいてないし、呼吸も乱れてない・・・・。


 そうかぁ、やっぱ、姿形はあるように見えるけど、魂だけなんだ。  


 息してないもんね。


 身体だって、無いんだもんね。


て、ことは・・・・。


壁とか通り抜けられるのかなぁ?なんてくだらないこと考えてるより、あいつ、ミカだよ。本当に何処に行ったんだ?


「そうですね。出来ますよ。


 壁とか、ドアとか・・・・。あまり、気持ちの良いものではありませんけど、通り抜けられますよ」


 あ、ミカ!


 今頃になって現れて何処に行ってたんだよ。


「ああ、すみません。ちょっと、神様の所へね。


 言い難いのですが、聖君を殴ろうとした酔っ払いの男性なんですが、勢いが良すぎて、聖君を擦り抜けて、バランスを崩して転びましてね。打ちどころが悪かったらしく天へ召されました。その案内を、今、して参りました。


 擦り抜けた?


 じゃぁ、何で俺、気を失ってたんだ?


「何と言っていいか・・・・多分、男性の中身を見てしまったショックでは・・・・」


 おじさんの中身って、内蔵とか・・・・?そ、そうだ。俺、見てはいけない物を見てしまったんだ!


 おじさんが殴ろうとしたとき、すっ転んで、俺の上に倒れて来て、んで、俺を・・・・擦り抜けて、んで、・・・・見てそまったんだよう~~。


 思い出すだけでも吐き気がする。


 赤・赤・赤の世界・・・・。


 そうだ。俺は真っ赤な世界の中で何かチューブの様なものの中にいたんだ。その中はドロドロとした液体がゆっくりと流れていて・・・・。


 ウワー、なんだありゃぁ、きょ、巨大な赤くて、平べったい餅みたいのが流れて来る~~!ヒェー。

こ、今度はなんだ・・・・ゲェ!ス、スライム?スライムだぁ。ひとつの形に姿を留めず、不定形のウニウニしたカッコウで追い掛けてくるうーーっ。ここは何処ーー!


 RPGのゲームの中に迷い込んだのか俺?


「あれは赤血球と白血球ですね」


 俺は慌てて、チューブの壁を擦り抜けると、外の世界はさらにシュールだよ。


 そこは柔らかいチューブが網に目のように赤い世界を張り巡らしているよ。太いのや細いのや、これ蜘蛛の巣?


 いやいや、違うよこれ。何か脈うってるしぃ・・・・これ自体が生物っぽいよ。


「血管ですね」


 そこから、俺の身体は勝手に前進して行って、何か肉の塊のような巨大なポンプにたどり着いた。気持ちワリー、吐き気がするけど、何も胃から出ない。


 あ、俺、胃無いんだっけ・・・・でも、吐き気がーーと思ってる間にポンプに吸い込まれ、その中で、もみくちゃに引っ張られたり、押されたりした後、外に放りだされた。


「それは心臓でしょう」


ウヘッ。今度は何だ!


 もう、驚かないよ。絶対、俺は、と、思った途端、巨大な空洞の中にいた。


 アワワワワ、落ちる~。


 ?


 そっかぁ、魂だけだから、宙にも浮いていられるんだ。つーと、ここは何処だ?


 生暖かくって上の穴からクッセー空気、入って来るし、何かこの壁、やっぱり伸縮してね。それに壁に黒いシミみたいな変な物、張り付いて周りを侵食してない?


「どうやら肺のようですね」


 オッワー!


 俺は突然、上の穴から入って来た突風に巻き込まれ、再び、その空洞の壁に叩き付けられ、、そこを通り抜けた。


 目の前には白い柱!


「たぶん背骨でしょう」


 ぶつかるーっと、思って目を閉じると、そこは元の世界で俺は物凄い嫌悪感に襲われ、意識を失ったんだ。


 思い出したら、また気分が悪くなっちまった。


「そうでしょうね」


 あの、さっきから分かり切った解説やめてくれない!うっ、また吐き気が・・・・。でも、ゲエゲエやるだけ、ミカが背中を優しく擦ってくれたおかげで少し楽になって来た。やっぱり、あいつは天使で、不思議な力があるらしい。


 ああ、酷い目にあった。


「落ち着きましたか、聖君?」


 ありがとう、ミカ。


 しかし、他人ーひとーって、ほんと冷たいよなぁ。俺が頭抱えて突っ伏して苦しんでいるの見ても、誰もが見て見ぬ振りで素通りだし・・・・。


 それよりさぁ、俺、これから、どうしたらいいんだ?いろいろやってみたけど、あんたらが望むような困っている人なんていないじゃん。


「それは聖君自身で、考えていただかないと・・・・」


 ああ、分かってる、分かってるよ。何度も聞いたよ。自分でやらなきゃいけないんでしょ。


 俺はブツブツと独り言を言いながら歩いた。ミカは後から黙って付いてきた。


 繁華街を歩いていると、俺たち二人を見た若い女の子たちが騒いでいる。


「キャーッ、まじ、やばくない?」


「イケテル♡」


「芸能人かなぁ?」


「声を掛けてみる?」


「ヤッター、こっち見てる♡背の低い子、赤くなってるよ。


 カッワイイーー♡」


 ちぇっ、誰がカワイイだってぇ。今までの俺なら、見向きもしない癖に・・・・。結局、人は見た目なのかよ。


 ヤダヤダ、やってらんないよ。


 俺は、女の子たちを無視して歩き続けた。


 キャーキャー言いながら付いて来ていた女の子たちも諦めて、段々といなくなっていった。


 やれやれだ。


 何の目的も無く歩いていた俺は、ふと、白い建物の前で足をとめた。


 けたたましいサイレンの音を立てながら、赤十字のマークの車が勢いよく吸い込まれて行く。


 ここだ!


 ここなら、困っている人、絶対いるよ。


 安易な発想だけど、今はここしか思い付かないよ。


 そこは病院ーーーーー。




「で、何でわたしまで病院で掃除のバイトなんですか?」


 意外と鈍いね、ミカは・・・・。


 掃除のバイトしている人間なら、一応、病院の関係者ってことになるだろう?関係ない人間が、フラフラと病院にいつまでもいてみろ、怪しまれて追い出されるに決まっている。掃除屋ならさ、そこらじゅう歩き回っても仕事が仕事なんだから変に思われないだろう?


「しかし、なんで、わたしまでバイトをしなければならないんですか?」


 ちったぁ、付き合ってもいいだろ。どうせ、俺の側にいるだけで暇なんだから・・・・。


 あれ、怒った、ミカ?ハハハハ・・・・。


 俺は段々、大天使ミカエルに対しての緊張感が無くなってきて、ミカが側にいるだけで何か安心感てものが湧いて来ていた。


 これは恋・・・・?


 いーや、いやいや、あれえねーー。


 いくら天使が男でも女でもないからって、それはありませんーー。


 どっちかっつーと、ミカは保護者的な存在でぇ、それに、この話はいくらミカが男が惚れるほど美しい二枚目でも、そっち方面の話じゃないしぃ・・・・。


 何でぇー、俺はこんなところで変なこと考えてんだよ。いいページ稼ぎだと読者に思われるよ。アニメの時間稼ぎじゃないんだから、どっちかってっと俺の場合、時間が無いんだからーー。


 掃除している場合でも無いんだけど、しなくちゃなんないんだから、掃除しながら困っている人、探さなくちゃいけないんだから・・・・。


 カリカリしながら、病棟の廊下をモップでゴシゴシ磨いていると(いやぁー、このモップでゴシゴシやるのが意外にもストレスの解消になったりして・・・・。試しにイライラしているときに床を雑巾で目一杯磨いてみて、汗かいて、案外スッキリするから、床も綺麗になるし一石二鳥だぜ。ありゃ?俺、オバサンか?)母さんよくやってたっけ。


 もとい、俺が床を磨いてたら、車椅子のおじいさんがやって来てさぁ、話掛けて来た。


「若いのに偉いのぉ。悪いが頼まれてくれんかの?」


 俺はモップから目を離して、黙っておじいさんを見た。


 ラッキー!困っている人からやって来たじゃん。ハイハイ、何でもやりますよ。


「下の売店に行って、ミネラルウォーターを買って来てもらえんかのう。薬を飲むのにそれじゃないといかんらしくてのう。切らしてしまって、ウチの家内はもう帰ってしまったし、ワシはこれ、車椅子でエレベーターに乗るのも騒ぎでの」


 なんだ、そんなことですか、おじいさん?三〇五号室だね。いいよ、持ってってあげるよ。いやいや、そんな恐縮しないでください。たいしたこと無いですってば・・・・。


 俺はおじいさんから、小銭を受け取ると地下の売店へ行くため、エレベーターに乗った。


 人助けっつーより、雑用係か・・・・。本当に困っている人っていないのかなぁ?


「あのおじいさんね。寂しいのよ。さっき、家の人が帰ったって言ってたけど、嘘なの。誰もお見舞いになんて、来てないのよ。


 怒らないでね」


 知らない間に俺の乗っているエレベーターに、俺の顔を見てニコニコ笑っている小さな女の子が乗っていた。


 なんか、こまっしゃくれた話し方するけど、パジャマ着てるから入院してるのか・・・・。でも、何で建物の中で毛糸の帽子を被っているんだ?


と、直ぐ一階下のフロアーで女の子は降りて、笑顔で手を振っている。


俺もつい釣られて笑顔で手を振ってしまった。言っておくけど、俺はロリコンではないからね。


 ミネラルウォーターを売店で買って、おじいさんの所に持って行くと、凄い喜んでくれて、頭を何度も下げられた。


 まいっちゃうなぁ。


 いいえ、いいんですってば、そう恐縮されなくても・・・・俺は、らしくもなく照れた。


「お釣りは駄賃だよ、取っておいてくれや」


 いいんですってば、俺、必要ないしーー。


 俺はおじいさんにお釣りを渡すと仕事に戻った。


 戻ってみると、床も壁も窓も、ピカピカになっていた。


 ミカが一人でやったのか?それにしても、早すぎる。あ!あいつ天使だから、何か変な魔法みいの使ったのか?


「いいえ、たいしたことではないですよ」


て、笑っているよ、この人ーー。いや、俺には自分の力でやれって言っといてさぁ、何か絶対ズルしているよ。


 ひととおり、仕事が終わった俺たちは一階の控え室に向かっていると、廊下でウロウロしているおばさんがいた。


「あら、病院の人ですか?


 レントゲン室は何処ですか?あんまり広いので自分が何処にいるか分からなくなってしまって・・」


 おばさんは恥ずかしそうに言った。


 はい、レントゲン室なら、地下一階ですよ。その先にエレベーターがありますから、それで地下一階に下りて、床の緑の線に沿って行けば直ぐですよ。


 こう言うと、おばさんは深々と頭を下げて歩いて行った。


 こんな感じの日が何日か続いた。


 病院で働き始めて、どのくらい経つんだ?魂だけだから身体は疲れないけど、ほとほとやんなって来た。


 ハアー。


 ほんと、そうなんだよな。死んでから何日経ったか分からない。お腹も空かないし、喉も渇かない。疲れないから眠くならない。寝る必要ないから住む部屋も必要ない(人のいない夜はここで、ブラブラしている)


 何か、気楽そうだけど、空しい・・・・。


 ザッケンジャねえよ!


「逆切れですか?」


 俺、結構ガンバッて、困っている人助けてるじゃん。神様ーオッサンーよぉ・・・・何がいけないの・・・・何処が間違っているんだよ!


と、夜の誰もいない待合室の椅子にグターと持たれ掛かって、ちょっと、ふて腐れた顔をしていると、よく見掛ける、そうそう、この間エレベーターで話した、少し小生意気な女の子がやって来た。


 今日も寒くもないのに毛糸の帽子を深々と被っている。よく見ると光の加減なのか酷く痩せて顔色も悪い。


「お兄ちゃん、鶴、折ってくれる?」


 俺はだらけた格好をこんな小さな子に見られて、慌てて椅子に座り直し、ちょっと恥ずかしくなった。そんあ俺を見てクスクス笑っているよ、この子。まぁ、鶴を折るくらいたいしたことじゃないから折ってあげるけど・・・・。


 俺は黙って、女の子から折り紙を受け取った。でも俺、ぶきっちょだからなぁ。


 こういうの苦手なんだよなぁ。


「わたし、小夜ーさよー。生田 小夜子って言うの。お兄ちゃんはなんて言うの?」


「天野 聖・・・・」


 えっと、鶴ってぇ三角に二回折ってぇ・・・・それからぁ・・・・ただ鶴を折るだけだのに結構、時間掛るなぁ。


 小夜子って言う女の子がいろいろ話し掛けて来たけど、俺は四苦八苦しながら鶴を折っていて、ろくに返事も出来なかった。


 小夜子はそんな俺を見て今にも吹き出しそうな顔をしている。


 ネェ、笑わないでよ。俺だってマジでやってるんよ。まぁ、何とか不格好だけど鶴が折れたけどね。


「ハイ」と、言って女の子に鶴を渡すと手渡すと、彼女はニッコリ笑って言った。


「ありがとう。お兄ちゃん。でも、ちょっと太った鶴ね。


 ネェ、お兄ちゃん、知ってる?鶴を千羽折ると、どんな願いも叶うのよ。


 あ、そうだ!


 お兄ちゃんは天使様とお友達なの?」


『え!』と、俺は驚いて思わず声を出してしまった。


「だって、いつも一緒にいるでしょ。背の高い綺麗な天使様と・・・・。

  

 お兄ちゃん、もう一つお願いがあるの。お友達の天使様にわいあしの病気が早く良くなるように頼んでくれない?


 でも、変なのよね。


 いつも、お兄ちゃんと天使様、一緒に病院をお掃除してるでしょ。お母さんにね、何で天使様がお掃除しているの?って訊くと、笑いながら、いくら綺麗な男の人だからって、天使じゃないわよっていうのよ。


 わたしには、ちゃんと背中に翼だって見えるのに・・・・」


 いい!ええ!


 この子、徒者じゃないよぉ。超霊感強いよぉ!俺たちの本当の姿、マジ見えてるよ、きっと。じゃぁ、この子には俺の本来の姿が見えてんのかぁ?


 き、君、俺の姿、どう見えてんの?


「変な、お兄ちゃん・・・・。


 短い髪の良く陽に焼けた・・・・・」


 ワーーーー。  


 俺は驚いて、言葉を遮っちまった。


「どうしたの?何かわたし、変なこと言った?」


 な、何でもないんですよー。


 あ、焦ったぁ


「あ、いたいた。小夜ちゃん、お薬の時間よ」


 看護師さんが小走りにやって来た。


「あ、いっけなーい。


 ごめんんさい。お姉さん。


 お兄ちゃん、鶴、ありがとう。あと、天使様にお願いしてね」


と、言って、女の子はニッコリ笑って行ってしまった。


 遠くから、二人の会話が聞こえて来る。


「天使様って、誰のこと?」


「秘密、秘密・・・・秘密なの」


「えー、お姉さんには隠し事なしって約束でしょ」


「これだけは、ないしょ」


 女の子が行ってしまうと、今まで黙っていたミカが話し始めた。


「あの女の子、生田 小夜子ちゃん、十歳はこの病院の小児病棟に入院しています。病名は小児ガン。

血液のガンで白血病です。


 たぶん、わたしたちの真の姿があの子に見えるのは、あの子の命が尽きるのが近いからなのでしょう。


 骨髄移植をすれば助かるのですが、ドナーが見付かっていません。


 天の定めです。彼女はクリスマスには天へ召されます」


 何だってぇ、あの子、もうすぐ死んじゃうのぉ。何とかなんないのかよ、ミカ!


「わたしたち天使は傍観者です。


 人の生死に係わることに手を出すことは出来ません。単なる天国への水先案内人です」


 何言ってんだよ!


 俺をこんな目に遭わせたんだって、あんたら天使だろ。殺すことが出来たんだから生かせることだって出来るだろう。

    

 まだ、あんなに小さいのにかわいそうだ。


 俺は誰もいない待合室で、一人突っ立てガラにもなく泣いてしまった。


「人の運命を変えることは、大天使のわたしにも、神にも許されていないのですよ、聖君」


 じゃぁ、俺が死んだのも運命?


 ここで、こうしているのも、初めから決まってたことなのか?


「そ、それは、聖君、誰にでも間違いってものが・・・・すみません。大事な仕事に新米天使を行かせた、わたしが悪いのです」


 い、いやぁ、あの、大天使様にそんな深々と頭下げられても、ちょっと困るよ。いいよ、もう、ミカ。いいから、頭上げてーーーー!あ~そんな悲しそうな顔しないで、真面目なんだから~、ちょっと、俺、拗ねてみただけだから、もう諦めてるから、今は天国に行くことだけ考えているから・・・・。


「許してくれるのですか?」


 許すも、許さないも、どうしようもないでしょう、俺の場合。もう身体灰になっちゃって、戻せないんだから・・・・。


 だからさぁ。せめて、あの女の子、何とか助けたいんだよ。そりゃぁね、ガンの病気の人、一人助けたって自己満軸でしかないかもしれないよ。けど、何とかしてあげたいんだよ。


 いじらしいじゃん。千羽鶴を作れば願いが叶うなんて信じているなんて・・・・。


 ドナーさえ見付かれば助かるんだよね!ミカ、お前の力があれば、あの子の骨髄に合うドナーなんて簡単に見付けられるんだろ!


 探してあげてもいいんじゃない!


「だから、聖君。


 わたしたち天使は人の生死に係わることに手を貸してはいけない決まりがあるのです。


 それだけは出来ません」


 そうだ、何も探さなくても俺の骨髄をあげればいいんじゃない?人助けにもなるし、一石二鳥じゃん。


「残念ですが忘れたのですか?あなたには実体がありません。魂が神の力によって人間に見えるようになっているだけです。例え、あったとしても血液型、違ってますよ」


 そうかぁ、いい考えだと思ったんだけど・・・・。


「もう、あと三日ですよ」


 三日?あの子も俺も、あと三日でタイムアウト!あと三日で本当に困っている人見付かるんだろうか?


 俺は生まれて初めて本気で考えた。けど、俺の頭の中から、さっきの小児ガンの女の子の一生懸命な姿が離れない。


 困っている人を助ければ本当に天使になれるのだろうか?なってどうする?本当に俺は天使になりたいのだろうか?


 ただ,あの神様ーオッサンーの言いなりになって右往左往しているだけじゃないのか?いいや、俺は天使の間違いでしんだっつーかぁ、肉体が無くなったんだよな。本当ならあの子に骨髄をあげることだって出来たかもしれないんだよ!


 あーもう、腹が立つ!


 あ!そうだ。こんなのどうだ?


おい、ミカ。俺の生きるはずだった時間をあの小夜子って女の子にあげてくれ。俺の健康だったころの身体もね。


 俺の代わりにあの子に生きて貰うんだよ。黙ってないでぇ。ネェ、出来るんでしょ。


 俺の寿命、あの子にあげること。


「・・・・出来ますよ。しかし、人の運命を変えることですから、そう簡単には・・・・」


 簡単にはって、簡単にヒトを殺しといてぇ。俺は嫌味一杯にミカに言ってやった。


「では、いいんですか?


 あなたは存在しなかったことになるんですよ。あなたのお父さんもお母さんもあなたのことを忘れてしまうのですよ」


 え!つまり、生まれなかったことに?


「そうです。無になってしまうのです。


 聖君、あなたに係わった人たちの記憶から、全てあなたという存在は消えてしまうのです。


 そして、あなたも消えます」


 消えちまうのか・・・・。でも、今もいないのと同じじゃん。誰も俺のこと知っている人いないし、天使になっても、父さんや母さんのいる家に帰れるわけでもないし、学校に行ってまたダチらとサッカー出来るわけでもないし・・・・。


 いいよ。消えても・・・・だから、あの子を助けてあげてくれ。


 あんな大理石のような入り口で、いつ終わるか分からない寿命が来るのを一人で待っているよりきっとましさ。


「それで、いいんですね?」


 ああいいよ。


 あと三日で本当に困っている人探す自信ないし、あの子を助けた方がきっといいに決まっている。


「そう、その言葉を待っていたのよ。


 命懸けの人助け・・・・」


 え!


 あの神様ーオッサンーの声が聞こえたような気がした。


 あれ?真っ暗になっちゃったよ。


 あ、ここは・・・・いろんな形の鶴が飾ってあるこの部屋?


女の子のお母さんらしき女性ーヒトーが泣いている。どうしたんだろう?


 どうやら、他の人には俺とミカの姿は見えないようだ。


 やっと、周りが良く見えるようになったぞ。


 ここは、集中治療室だ。


 いろいろな医療器具が、ベッドの周りに仰々しくおいてある。


 あの女の子は人工呼吸器を付けていた。


 危篤状態なんだ。


 担当医師と看護師が二人が付き添っていた。


 医師が絶えず脈拍数を計っている。


 沢山の管が彼女に繋がれていて、息が荒く苦しそうだ。その、細い手をお母さんが握り締めている。


「小夜ちゃん・・・・。


 クリスマス、お父さんとお母さんと三人でお祝いする、お約束だったわよね。もうすぐ、クリスマスよ。ガンバッテ・・・・。


 おかあさん、小夜子ちゃんの好きなイチゴのケーキ作るわね。お手伝いしてくれるんでしょう・・・・」


「おかあさん・・・・。


 小夜、今ね。天使様が見えるの。


 とっても、優しい顔しているよ。だから、天国行くの恐くないよ」


 俺はまた、涙がでて来た。


 早くしてやってよ、子供をあんまり苦しませるなよ。


「本当にいいんですね?」


 だ・か・ら・いいって言ってるでしょう。俺はミカの態度にまたイライラしてきた。


「それでは・・・・」と、ミカが言うと、俺は驚いた。


 消える、消えるよ!


 俺の手、透けてるよ!オイオイ、なんだこれぇ~手だけじゃないよ。身体も透けて、向こうが見える~。


 あ、あれ、今度は目の前が暗くなって来た。俺って、今度は本当に死ぬんだな。


 ああ、真っ暗だよ。何も見えないーー。


 意識が消えて行こうとするなか、病室内が慌ただしく動き出したのを感じた。




「先生、小夜ちゃん、持ち直しました!


 脈拍正常です!」


「呼吸も急に楽になったみたいです」


「峠を越して、持ち直したのか!奇跡だ!」


 あの子が持ち直したのは俺も知っている。だけど、その後、どうなったのか俺は知らない。


 ミカを信じれば、助かったのだろう。


 だって、俺の思考は彼女が持ち直したところあたりから、止まってしまったのだから・・・・。




 ふと、目を開けると、白い天井が見えた。


 ここ、天国?


 俺、天国に来れたんじゃん。


 あれ?誰か、何か言っている。男の人だ。


「小夜~ただいまぁ~♡聖にお土産だぞ~」


「もう!あなたったら、聖はまだ生まれたばかりなのよ。ケーキなんて食べれないわよ!」


 小夜と呼ばれた女の人も、弾んだ声で話している。


「しかし、君が十歳のころ、小児ガンだったなんて信じられないなあぁ」


「今は健康優良児ですものね。


 奇跡ですって・・・・峠を越したら、急に容態がみるみる良くなって、わたしは良く覚えてないんだけど、お母さんは一ヶ月後には病気が完治していたって言っていたわ。


 やっぱり、わたしが見たのは本物の天使様で、わたしのお願いをきいてくれたのよ。


 隣にお兄ちゃんがいて、わたしを心配そうに見ていたんだけど、段々と消えていっちゃたの。不思議だわ。


 何処に行っちゃったのかしら?」


「意識がもうろうとしていたんだろう、大好きだった人の幻を見たんだよ」


「そうなのかしら・・・・。


 後で、看護師さんにお掃除のお兄さんのこと訊いたんだけど、そんな人働いていないって、言われちゃったのよね。


 わたし、何度も会っているのに・・・・」


「分かったよ。きっと、何処かで元気にしているさ。その優しいお兄さん」


「そうよね。元気でいるわよね」


 この女の人はあの女の子、小夜ちゃんだったのか。良かった。助かったんだ。


 俺は涙が出て来た。


「あらあら、聖、ごめんね。ほっぽったままで、よしよし、泣かないで・・・・」


 女の人が俺を抱き上げた。


 あれ?俺、こんなに小さかったっけ?


「メリークリスマス、聖。


 わたしにとって、あなたが最高の神様ーサンターからの贈り物よ」


 生まれたばかりらしい俺を女の人は優しく抱きしめた。


 メリークリスマスーーー。


 そして、俺の記憶は無くなって、ゼロからのスタートが始まった。



                                        ENND



 

読んで下さり、ありがとうございます

何年か前に書いた作品なので、入力するとき、かなり直しました。これでもです。

気に入って貰えたら、幸いです。

読んで下さったかた、時間があれば感想などお聞かせください


作中出てくる、天国の門って、あの、人気漫画に出てくる門のパクリ?と思われるかたも、いらしゃるかもですが、この作品書いているとき、私、まだ、あの名作、アニメも見てなかったんですよね。勉強不足ですみません

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