シナリオ上以外の重要そうなエピソード発生しないで(命乞い)未知の恐怖で震えていたら本編が始まってしまった
いつの間にか気絶していたようだ。かろうじてカーペットの敷いてある床の上に肉体が置かれていることがわかる。
少しずつ意識が覚醒していき、わたしが感じ取れる範囲で神経を研ぎ澄ますと、どうやらここは教会内でルキが御神体に向かって何やら話しているようだった。
「これでいいだろう」
「――――――」
「契約成立だ」
「――――――」
「俺は契約を破らない。お前とは違う」
知らないシチュエーションだ。未実装の隠し設定か、未発見のエピソードなのだろうか?
ルキの会話相手の内容はギシギシと金属が擦れるような音でかき消されわからなかったが、ルキがペースを乱されていることから厄介な相手で間違いないだろう。
それにしても煩い。耳が痛い。パイプオルガンで奏でた荘厳な音楽が脳に直接響いている。音の奔流に呑み込まれわたしは再び意識を手放してしまった。
――――――――――――――――――――――
再び意識が覚醒すると、わたしは夕日に照らされながら館の前で行き倒れていた。それは幾度となく画面越しに見た光景だった。
「…………」
一手誤れば死すら生温い絶望を与えてくる攻略対象たちとの甘い日常が、始まる。
ヒロインは森で迷ってしまったと嘘をついて館の扉を叩く。
「ごめんください」
しばらく扉を叩き続けていると、マントを羽織った背丈の高い男が勢いよく扉を開けてくる。
ヒロインは扉の勢いが強く転んでしまい、呆然と男を見上げる。
はい、ここで煽りのスチル入ります。
障子紙のように白くざらついた肌をもつ男はプラチナブロンドの髪を無造作に伸ばしたままルビーのような紅い瞳を爛々と光らせてこちらを見下ろす。男の口元から牙が覗いており、いまにもこちらを捕食せんといった具合で、口角が上がっている。
吸血衝動を抑えてるせいで若干余裕なさそうな表情が萌える〜
「我が館に招待客を呼んだ覚えはないのだが」
――――――――――
ここで選択肢
→森で迷ってしまって
→貴方は招かれないと入れないものね
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下は完全に男が吸血鬼であることと招かれざる館に入れない吸血鬼の特性をわかった上で挑発してる。所詮お遊びのメタな選択肢だ。当然その場で空になるまで血を吸いつくされてバットエンド。
「森で迷っていたら、この立派な館を見つけて。一晩泊めていただけませんか」
「……断っても面倒くさそうだ。ついて来い」
ヒロインはしずしずと後ろをついて歩く。
客間に泊まるよう言われ、執事の格好をしたビスクドールのような人形が食事と着替えを持ってきて、すぐに消えた。
第2の攻略対象の顔見せである。
「夜は部屋から出ないように」
「はい」
そういって、吸血鬼の男は客室から出ていった。
お約束ってやつですね、もちろん破りますよ。
破らなかったら任務失敗ノーマルエンドですから。
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