選択肢を外すとしより恐ろしい目に合うオワタ式乙女ゲームの世界へようこそ
海外産同人乙女ゲームである転生先はネオヨーロッパのよくあるファンタジー世界だ。当然のようにファンタジー生物は存在しているが、一部を除いて教会による迫害の対象であり十把一絡げに悪魔とされ、人里離れた場所で隠れながら暮らしている。
乙女ゲームの主人公であるヒロインは人と異なる色彩の髪と瞳のせいで、生まれつき迫害を受けていた一般人だったが、天使の見た目をした『ルキ』に拾われ国家所属の諜報員として働くことになる。
諜報員として数年の時がたち、少女に成長したヒロインへ上司であるルキから館の調査を任命されるところから本編がスタートする。
乙女ゲームでは数年というテキスト一つで飛ばされた、本編前のヒロインの日常は大変過酷なものでした。バタフライエフェクトの心配以前にヒロインとして生きるのに必死だった。
ここ数年の間、本当に毎日が死と隣り合わせだった。
いや実際は死んだところを何度かルキに魂を引き戻されてた気がする。
なにせ、ゴミの吹き溜まりだった鉄橋の下にいたころよりも死が身近だったのだ。
とある国に潜入し孤児として噂を流し市民を扇動することから、機密文書を盗み取るまで。それに乙女から口にはできないようなことも命令させるがままに
ヒロインマジカワイソス。ルキさんマジ外道ボス。
ヒロインは迫害されつつも信心深い性格だったから余計にメンタルボロボロだっただろうな……
破滅的で図太いヒロインになったのこの裏設定のせいだろうと察した
喪女の精神的には興奮したけど、目的を果たして昏睡させたのでまだ清いままでいる。多分。おそらく。
ヒロインの闇落ちフラグを折りつつ、いつでも本来のヒロインにバトンタッチできる状況でいよう。それがわたしなりのヒロインへの愛情だ。
しかし、やっと国に戻ることができた。
ルキは戦争が終わったからだといっていた。
帰ってきた煤けた国で景気よくパレードを行っている様子をみるに、どうやら愛する祖国とやらは戦争に勝ったらしい。結構なことだ。
「帰国して早速だが次の指令だ」
てなわけでやっとストーリー本編へ突入するようだ。今となっては懐かしいエピローグの定型文をルキは一言一句違わず語る。
「はい」
「ある館に悪魔が住み着いていると市民から報告があった。調査してこい」
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ここで選択肢
→わかりました
→わたしがですか?
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「わたしがですか?」
ここで素直に従うと好感度が落ちる。
ちなみに真相エンディングに辿り着くにはルキから提示される攻略に直接関係なさそうな選択肢を全て正解する必要がある。周回プレイでは既読スキップしていたから個人攻略サイトを発見できてなければ永遠に辿り着けてませんでした。そんなのわかる訳がない。
「ああ皮肉な話だが」
慈愛に溢れた顔つきを思い切り愉悦に歪ませてパイプを吹かす男は到底天使とは思えない。
しかして、顔が大変よろしい。
わたしの好みとしては縋りついて破滅したいくらいにはドストライクなんですけど、ヒロイン視点から見ると拾ってくれたことは感謝しているけど、基本的にはクソ野郎でしかないので真相フラグは立てつつも距離を保ちたいと思います。
幸い本編が始まってしまうと定期連絡と言う名の進捗度チェックイベントでしか会う機会がないため、そこまで心配ではない。
――――――――――
ここで選択肢
→そうですね
→いやです
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「そうですね」
ここは肯定する。
いやですを選ぶとルキによる魂ごと飼い殺しエンディングという名の最短バットエンドに突入しする。わたしが初プレイで到達したエンディングでもある。
囚われたヒロインを堕天使ルキが弄ぶ美麗スチルと共に流れるおどろおどろしくも神々しい専用BGMが流れ、制作陣の拘りように神ゲー認定した。転生して数年たった今となっては懐かしい思い出だ。
ヒロインは天使の羽根が見えるから重用されているだけであって、愉悦を生み出す扱いやすい駒のひとつであるという自覚がなければすぐに捨てられるか魂ごと囚われて永久に遊ばれる。
なにせ相手は元天使様ですから。
本編が始まる前にわたしの目標を明かしておきましょう。
わたしの目標は全てのトゥルーエンドのフラグを立てながらエンディングを迎えることです。
やっぱり結ばれる相手はヒロインが決めるべきだと思うんですよね。散々ゲーム内でもゲーム外のプレイヤーにも選ばされた人生を歩んできたヒロインには、大事なパートナーくらい自分で選んで幸せになってほしい。
お姉さん頑張るから、いいタイミングで変わるかわたしを元の世界に戻すかしてくださいね。
ヒロインさんお願いしますよ?
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