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台本置場  作者: スミシー
8/16

魔王、推しをみつける

0:魔王城 玉座の間

側近:魔王様―!大変です!

魔王:なんじゃ、開口一番騒がしいやつじゃの

魔王:どーせ、あれじゃろ?また四天王たちが筆頭は~とかで揉めとるんじゃろ?

魔王:もうあやつでいいよ。灼熱のフレイムで・・・

魔王:この前、城の庭の落ち葉で焼き芋を焼いてくれたし

側近:この前のボヤ騒ぎの犯人が見つかった!

側近:いや、そうじゃなくてですね!

魔王:大丈夫じゃ、庭師には焼き芋と一緒に用意したじゃがバターを与えておる。

側近:買収されてた!

側近:じゃなくて、本当に大変なんですよ!

魔王:なんじゃ、なんじゃ、ほかに何があるというんじゃ。

魔王:ああ、お主の昇給試験の結果か?

側近:・・・・・それです!教えてください!

魔王:自分の欲を優先するな!冗談じゃ、はやく大変なこととやらを教えんか。

側近:すいません、つい。結果次第で人生設計が変わるので・・・

側近:ええと、あ、そうです。勇者です!勇者が現れました!

魔王:・・・なんじゃと

側近:だから、勇者です!魔王様を殺す為の存在です!

魔王:分かっとるわ!なんで怖く言い直した!?

魔王:・・・・というか、え、まじで?

側近:まじです。これ見てください。人間の国の新聞です。

魔王:あー、なになに。

魔王:ついに勇者が現れた!史上最年少の勇者は人類の希望となるか!

魔王:うわ、ほんとじゃ、めんどくさいのー

魔王:というか、人類って主語が大きくないか?

魔王:我の国と表立って敵対している人間の国ってここだけじゃろ。

側近:教会が裏にいるみたいです。やつらは人間以外の種族を嫌っていますから。

魔王:ああ、人間至上主義のあやつらか・・・

魔王:最近大人しいと思ったらこれじゃよ。

魔王:はぁ、どうするかのー。勇者に選ばれたということは光の魔力持ちじゃろ。

側近:光の魔力は、我々魔族にとって天敵ですからね。

側近:しかも、昔ならいざ知らず、現在の魔族は、人間との共存共栄路線です。

側近:武力に頼った解決は余計な火種を生み出しかねません。

魔王:むしろそれが狙いなのかもしれんな。もし、勇者に危害を加えたらそれを口実に攻め込んでくるかもしれん。

側近:なるほど・・・

側近:ならば、どういたしましょう?

側近:奴らの狙いが攻め込むための口実だとしたら、下手に勇者に接触できません。教会のやつら、どんな些細なことでもこじつけてきますよ。

魔王:そうじゃの~

魔王:ん?ところで、勇者ってどんなやつじゃ?勇者個人の情報は、新聞にはとくに書かれとらんが。

魔王:話が通じるのならそれでこの問題は解決なのだが、やっぱり、問答無用に魔族ぶっ殺!みたいなやつか?

側近:どうでしょう?

側近:昔の勇者は、戦争していたこともあり、魔族憎しって感じでしたが、ここしばらくは先代や先々代の魔王様のご尽力もあって平和でしたし、それほど魔族を憎む動機はないと思うのですが

側近:一応、情報を集めさせていますが・・

0:部屋に書類をもった女性が入ってきて、書類を側近に渡す

側近:っと、ああ、ちょうど来ましたね。ご苦労。

魔王:準備がいいの。

側近:諜報部は優秀ですので。

魔王:しかし、世間一般が知ると同時に我が勇者の存在を知るようでは、諜報部として些かまずいのではないか?

側近:諜報部の名誉のために言いますと、今回は相手が異常です。おそらく、勇者発見から碌な準備もせずに公表しています。

側近:そのため、今の勇者は一般人とそう変わらない能力かと。これはさきほど仰っていた口実をつくるためにあえて弱い状態を維持していると思われます。

魔王:なるほどの

側近:まぁ、それでも不安が残るようでしたら有益な情報もありますが、

側近:例えば、とあるお人の部屋のタンスの引き出しにはいっている鍵付きの箱の中には・・・・

魔王:優秀!諜報部は優秀だな!予算を上げようか!

魔王:だから、その情報は破棄するように!

0:女性はにっこり笑顔で退出していく。

側近:えー、では本題に戻りましょう。

側近:こちら資料になります。どうぞ。

0:資料を確認しよと目を向けた魔王が固まる

魔王:ああ、えーと・・・・・なっ!

側近:どうしました?

魔王:か、顔が・・・

側近:顔?ああ、なんでも写真というものらしいです。いやいや、便利な時代になりましたねぇ。まるで時間を切り取ったみたいですよ。

側近:ねぇ、魔王様?

魔王:顔がいい・・・!!

側近:魔王様?

魔王:え、なにこれ嘘でしょ。

魔王:陽だまりのような暖かなサラサラの金髪、青空のように澄んだ空色の瞳、美の神もはだしで逃げ出すほどの完璧に整った顔立ち!

側近:魔王様?

魔王:名前はアルバート?

魔王:分かってる。ご両親はわかってる。アルきゅんの名前はアルバート以外ありえない!

側近:魔王さ・・・・あるきゅん?

魔王:故郷を魔獣に襲われた・・・?

魔王:どの種類じゃ!絶滅させてやる!

側近:魔王様!

魔王:っは!わ、我は一体・・・

側近:よかった!帰ってこられて本当によかった・・!

魔王:すまんな、少し取り乱した。

側近:少し・・・?

魔王:ええと、それで、アルきゅ、ごほん!

魔王:この勇者は、魔族には悪い印象をもつ体験はないわけじゃな

側近:そのようですね。

側近:ですが、協会が余計なことを吹き込んでいるみたいです。

魔王:余計なこと?

側近:魔獣は魔王様の手先だとか、魔王様がいなくなれば世界は平和になるだとか、そんな感じです。

側近:田舎育ちの純朴な少年みたいですからね。故郷の件もあって信じ込んでいるみたいです。

魔王:あー、やりそうじゃ。

魔王:じゃが、そんなウソはすぐにばれるじゃろ。魔族と魔獣が無関係なのは一部を除いて人間の国でも常識になっとるし

側近:それがそうもいかないみたいです。

魔王:なんじゃと?

側近:護衛が付いています。まぁ、情報を制限するための護衛という名目の見張りでしょう。ついでにいうなら籠絡しておきたいのでしょうね。

側近:清楚な神官、妖艶な魔法使い、姉御肌な騎士。うーん、定番ですねぇ、しかし、この若さからハーレムとは羨ましい。

魔王:けしからん、けしからんぞぉ!

側近:あ、やべ、スイッチ入った

魔王:アルきゅんにそういうのはまだ早い!早すぎる!というか旅が早い!そんな爛れた青春じゃなくて同世代と学校とかで仲良く過ごしてほしい!

魔王:あ、そうしたら、制服姿のアルきゅんがみられる。

魔王:そうしよう!そうするべき!そうしろ!

側近:あー、本人が初心なのと好きな人がいるとのことで、籠絡のほうは難航しているみたいです。

魔王:さすがアルきゅん!というか、好きな人!?

0:手元の資料の情報を側近が冷静に告げる

側近:近所の薬屋のお姉さんが初恋みたいです。

側近:元から仲は良かったみたいですけど、風邪をひいたときに看病に来てくれたのが好きになったきっかけみたいですね。

側近:勇者になる理由もこのお姉さんが関わっているみたいですよ。

側近:怪我や病気の人が減ったらうれしいな、的なことをかつてお姉さんが言ったらしく、それを叶えようと思ったのでしょう。

魔王:いい、最っ高。

魔王:惚れた女のために命かけられるとかかっこよすぎる。

魔王:外見だけじゃなく内面も最高とか神を超えた

魔王:というか、そのお姉さんを前にしたアルきゅんが見たい、超見たい。かっこつけたり照れたりするんでしょ。そんな見るしかない

魔王:はぁぁぁー

側近:落ち着きました?

魔王:うむ

側近:それでは、勇者にはどのように対処しますか?

魔王:ああ、いい案があるぞ

側近:えっ、

魔王:なんじゃ、その反応。なに、心配するな。私情は挟まぬよ。

魔王:それで、アルきゅんについてじゃが

側近:私情漏れてませんか?

0:側近の発言を無視して魔王は言った。

魔王:英雄になってもらう。

側近:・・・えっと?

魔王:だから、英雄じゃ英雄。

魔王:無辜の民草が明日を笑って生きられるように

魔王:今日を泣かずに過ごせるように

魔王:ありふれた日常を守るために戦う。

魔王:子供が憧れ、大人が誇る。そんな愛される人望厚き英雄になってもらうのじゃ

側近:なぜそのようなことを?すでに勇者という肩書がありますが?

魔王:足りぬ。

魔王:それは歴代勇者のものじゃ。アルきゅん自身はまだ何もなしておらぬ。

側近:では、なぜ?

魔王:目標は単純じゃ。

魔王:アルきゅんに保証してもらうのじゃよ。

魔王:魔族と人間は手を取り合えるとな。

魔王:勇者様がそういうのならそうかもしれない、そう思うやつもいるはずじゃ。

側近:なるほど、だから、英雄になってもらいその言葉に力を持たせると

側近:しかし、そううまくいくでしょうか?

魔王:うまくいくように頑張るのじゃろうが。

魔王:最初から全員が鵜呑みにするとは思っとらん。疑うやつもいるだろうし、勇者が誑かされたと新たな火種になるやもしれん。

魔王:だが、無駄じゃあるまい。

魔王:魔族と勇者が手を取り合った。

魔王:その事実に救われるものも、救えるかもしれん未来があるかもしれんのだからな。

魔王:やる価値はあるだろうよ。

側近:魔王様・・・

側近:最終的な目標は分かりました。私も賛成です。

側近:ですが、どう動くのです?特に魔族に対する好感度をどうやって上げるかが重要になると思うのですが

魔王:そうじゃな、まずは、旅を円滑に行ってもらう必要がある。

側近:そうですね。

魔王:そのために、戦闘時の補助、魔獣討伐素材の高額買取、素直に受け取らんだろうからダンジョン内に宝箱を設置して魔道具の譲渡。

魔王:魔族の好感度を高めるのは・・・まぁ、適当にうまくやるとして

側近:大事なところがあやふやなのですが?

魔王:長期的な作戦じゃ、そのうちいい案が出るじゃろ。

側近:なるほど、魔王様、一つ質問があるのですがよろしいでしょうか?

魔王:なんじゃ?

側近:いや、ただの確認なのですが、

側近:勇者を気に入ったから、貢ぎたくて提案したとかじゃないですよね?

魔王:・・・・・・ちがうよ?

側近:じゃあ、はっきりと目を合わせていってくださいよ!

側近:なんで、汗だらだらで目をそらしながら言うんですか!

魔王:ご、誤解じゃ、誤解!我は魔族と人間の融和を想ってだな!

側近:なら、この勇者の写真をみて宣誓してくださいよ。

側近:勇者なんかどうでもいいって!作戦上仕方なく支援してやるって

0:側近は勇者の写真を魔王に突き付ける

魔王:っは、そんなこと簡単じゃ、い、いくぞ

魔王:あ、アルきゅんなんて

側近:ダメです!呼び方がもうすでにダメです!

魔王:うぅ、そうじゃ!我は貢ぎたいのじゃ!

魔王:アルきゅんには我の用意したもので、不自由ない最高の生活を送ってほしいのじゃ!

魔王:我が送った服を着て、送ったご飯を食べて、送ったお金で遊んで、送った魔剣で魔獣を退治してほしいのじゃ!

魔王:それだけなんじゃ!

側近:思ったよりどぎつい本音がでた!

魔王:しょうがないじゃろ!あふれ出る想いが止まらんのじゃから!

側近:魔族と人間、両方の未来を考えているなと真面目に感心していたのに!

魔王:そっちだって本心じゃ!

側近:割合は?

魔王:九対一。

側近:一応聞きましょう。九が?

魔王:アルきゅんに貢ぎたい!

側近:少しは欲望を隠してくれませんかねぇ!

魔王:無理じゃ

側近:そんなぁ・・・

魔王:諦めろ諦めろ。我は一度決めたら結構しつこいぞ。

側近:嫌ってほど知ってますよ、そんなこと。

側近:・・・・はぁ、しょうがない。

側近:魔王様の思惑はどうあれ、最終的には魔族全体にとって利益になりますから、作戦事態を反対はしません。

魔王:さすが側近じゃ、話が分かるの。その調子でアルきゅんの護衛も頼むぞ。

側近:まったく調子の・・・・なんて?

魔王:護衛じゃ護衛。アルきゅんの命及び貞操を守るためにも必要じゃろ。

側近:護衛の意味が分かりそうでよく分からないのですけど、なんで私なんですか?

魔王:今回の作戦では、旅の支援や魔族の好感度をあげる細工を行うためにも内通者が必要じゃ。

側近:いや、それはわかるのですが、何故私なのです?

魔王:我の真の目的を知っておるからに決まっとるじゃろうが、それにお前、竜に化けられるじゃろ。

側近:ええ、これでも一応は竜と魔族のハーフなので・・・・まさか

魔王:お、感がいいの、そうじゃ、竜に化けてアルきゅんの傍に潜り込むのじゃ。

魔王:人型じゃと警戒されるからな、竜の姿なら潜り込みやすいじゃろ。

魔王:まぁ、ペット枠じゃ、ペット枠。

側近:ぺ、ペット・・・

魔王:なに、最近は平和じゃしお前がおらんでもしばらくはどうにかなる。

魔王:ということで、頼んだぞ。

側近:ペット・・・

魔王:ええい、いつまで歓喜に打ち震えるとる!

側近:えっ、私の反応を喜んでると思ってたんですか!

魔王:なんじゃ、嬉しくないのか?

側近:ええ、これっぽちも!

魔王:特別ボーナスを考えておったのじゃが、そうか、嬉しくないのか。

魔王:それなら、他のものに・・・

側近:やらせていただきますぅ!

魔王:そうか、頼むぞ!

側近:しまったぁぁぁぁ!

側近:ボーナスという言葉につられてしまった!

魔王:くれぐれもアルきゅんに悪い虫がつかないようにな。

側近:待ってください、魔王様!さっきのは・・・

魔王:ああ、ついでにアルきゅんの写真を頼む。出来によっては追加ボーナスもあるぞ。

側近:行ってまいります!

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