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台本置場  作者: スミシー
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自殺未遂OLと酔っ払い大学生

OL:はぁー、長かったなぁ。

OL:十五歳で親が死んで借金だけ残って、そっからがむしゃらに生きて今年もう二十八歳だよ。二十八。いやーほんとに長かった。

OL:来る日も来る日も働いて働いて働きまくってやっと借金も返済し終わったし、

OL:人生をリタイアしてもいいよね

OL:・・・私にはなにもない。正直、全てを失ったあの日に死んでやろうかと思った。でも、それでも譲れないものがあった。

OL:小さくてちっぽけでありふれたこのプライドが、このまま終わることを認めなかった。

OL:だから、決めたのだ。負けっぱなしのこの人生でたった一つでいいやり遂げよう、死ぬのはそれからでも遅くない。

OL:そう思って生きてきた。

OL:でも、想定より時間がかかったわ。あのくそ親族どもめ。借金増やすとかホントくず。

OL:まぁいいよ。この遺書にたっぷりと恨みを綴ってやったからね!地獄を見な!

OL:おっと、いかんいかん、変なテンションになってるな。落ち着け、

OL:まず、確認。何事も確認が大事。

OL:遺書よし!窒息死するためのロープよし!発見されやす様に玄関の鍵の開錠よし!よし完璧!

OL:我ながらお手軽過ぎるな・・・

OL:あ!忘れてた。最後の晩餐としてゼリー用意してたんだ。

OL:やっぱり、これ食べなきゃ死んでられないよね!

OL:ゼリー!ゼリー!

大学生:たらいま~!!!

OL:ゼリー!あ、おかえ・・・誰!?

大学生:ちょっと~!たらいまって言ったでしょ~。おかえりは~?

OL:え、あ、はい、お帰りなさい?

大学生:あい!たらいま~!!

OL:いや、誰!?てか酒臭っ!

大学生:えっとね~、ん~、あれ?なんでお姉さん俺の家にいるの~?

OL:違う違う!君が間違えてるのここは私の家!!

大学生:え~、俺は間違えてないよ~。ここ俺の家だって~。俺の人生賭けていいよ~。

OL:なにその自信怖い。というか、君、お隣さん?

大学生:お隣って名前じゃないよ?

OL:知っとるわ!じゃなくて、そうよ、間違いない。君となりの子でしょ。酔っぱらって部屋間違えたのよ。

大学生:え~、違うと思うな~。人生賭ける~。

OL:君さっきから人生安く賭けすぎじゃない!?もっと命を大事にしなさい・・・・何このセリフ凄いブーメランなんですけど。

大学生:ん~?あ、お姉さんロープ持ってる!すげぇ!そんなでかいの初めて見た~!

OL:え!?あ、そうでしょ!!これわざわざ特注したの!特に質感に拘って・・・・違うそうじゃない!

大学生:でも、なんでロープ~?何に使うの?

大学生:う~ん、あ、わかった!

OL:ち、違うのよ。別に自殺なんてしないから通報しなくて・・・

大学生:お姉さん、カウボーイでしょ~!

OL:何もかも違う!せめて、カウガールと呼びなさい!

大学生:違うの~?あ、そっか。髪の色が金色じゃなくて綺麗な黒髪だもんね~。

OL:あ、ありがとう?

大学生:それにスタイルも~、エベレストじゃなくて平原って感じだしね~

OL:あぁん!?ぶっ飛ばすぞ、クソガキ!!

大学生:もー、お姉さん、怖い~!ほら笑って、笑って~!!お姉さん、笑顔が可愛いよ~!

OL:はぁ~、いやもうほんと帰ってよ。なんでこんなタイミングで来るのさ。この酔っ払い!

大学生:帰ってきただけだよ~。あ、でも、今日はいつもより嬉しかったよ~。

OL:なんでよ。そんな要素どこにもないでしょ。

大学生:だってさ~、おかえり、って言ってもらえたんだよ~。

大学生:そんなの幸せじゃんか~

OL:・・・・まぁ、否定はしないけど

大学生:でしょ~。

OL:ほら、送ってあげるから鍵だして。

大学生:ここがお家だよ?

OL:ええい!無限ループか!何回言ったらわかるの!

OL:いいから、鍵出して!

大学生:あ~い。

OL:ほら、立って。肩貸してあげるから。

大学生:ん~、あ、お姉さん、いいにおいするね~。

OL:変態!!

大学生:痛い!!

OL:な、ななに言ってんの!?

大学生:う~、痛い。ちがくて、この匂いね、俺のお隣さんの匂いに似てんの~

OL:まぁ、本人ですしね!

大学生:違うよ~。お隣さんもっと髪が長いもん

OL:あー、死ぬから思い切ってバッサリショートにしたんだった。

大学生:でねでね、俺さ、そのお隣さんに憧れてんの~

OL:へ、へぇ~。ちなみにどんな所?どんな所に憧れたの?ほれ、言ってみ!お姉さんに言ってみ!

大学生:なんでそんなにグイグイくるの?

OL:ご、ごほん。なんでもない。それでなんで憧れたの?

大学生:えっと~、そのお姉さんは社畜で~

OL:ぐふっ

大学生:多分、恋人がいなくて~

OL:がはぁ

大学生:友達もいないと思う~

OL:げはぁ

OL:き。君、本当に憧れてる?嫌ってない?

大学生:憧れてるってば~。

大学生:お隣さんさ、毎朝同じ時間に起きんの、そんでちゃんとご飯作って~、お化粧もしっかりして~、仕事に行くの~。

OL:普通のことじゃない。

大学生:それがすごいじゃん!俺ならもっとだらだらするもん!

OL:しっかりしなさい、大学生。というか、なんでわかんのよ。たまには休んでるかもしれないじゃない。

大学生:このアパートさ、ぼろっちぃから、アラームの音がちょっと漏れるし~窓全開にしてたら料理の匂いとか音が聞こえるし~化粧はわかんないけど、たまに見るといっつも綺麗だから多分あってる~。

OL:・・・君

大学生:でも、流石に毎日はおかしいでしょ?仕事が休みの日はだらけるかな~って思って数えたら二十連勤を超えてから怖くなって数えるのやめた~。

大学生:ほんと社畜だよね~

OL:やめろぉ!あの地獄を思い出させるな!!

大学生:俺卵焼きが好き~。

OL:なんで好物を発表した?え、脈絡なさすぎない?

大学生:お隣さんの作る料理でね一番おいしそうな匂いがすんの~。

OL:・・・そりゃそうよ。あれ母さんに教わったんだから

OL:というか、いい加減動くわよ。って、ちょ!顔が近い!!近い!何!?

大学生:お姉さん、お隣さんに似てるね~。ていうか、隈が凄い。肌も荒れてるし~、

OL:なにこいつ超失礼!!!

大学生:俺知ってる。これね、頑張った人の顔~!だから、褒める!!

OL:・・・・なにしてんの?

大学生:頭を撫でてる~!お姉さんは頑張った!頑張った人は褒められるべき!!だから褒める!!

大学生:お姉さん超凄い!超頑張った!!お疲れ様!!

大学生:お隣さんぐらい凄いかも!え、じゃあ、お姉さんも憧れの人になるの!!ヤバい!

OL:・・・君の語彙力もやばいよ。

大学生:得意科目は国語です!

OL:・・・それは絶望的だね。

大学生:あれ?お姉さん?泣いてるの?

OL:泣いてない、酔っ払いの大学生に泣かされてたまるか。

OL:泣いてない、泣いてないけど・・・ありがとね。

大学生:どういたしまして~?

OL:はぁー、なんかいろいろ馬鹿らしくなってきた。

OL:そうよ、どうせやり遂げるなら借金返済じゃなくて、この人生をやり遂げてやろうじゃない。

大学生:どうしたの~?

OL:別にー、卵焼き食べたいなって思っただけ。君も食べる?

大学生:食べる~!!


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