愉快な魔王と不憫な勇者
魔王:フハハハハハ!よきゅぞきた!!勇者よ!!!
勇者:・・・・・・・・・・・
魔王:・・・・・・・・・あのー?噛んだのでやり直していい?
勇者:・・・・・・一回だけだぞ
魔王:あ?ほんと?いいの?・・・・・・・流石勇者、懐が深い!!よっ!救世主!!
勇者:うるせぇ!次は失敗すんなよ!
魔王:分かってる分かってる。次は失敗しないって。いや、ほんとごめんね。久しぶりなもんで・・・・・・・そだ、せっかくだから、もっとさ、こう、扉バーンって感じで入ってきてよ。
勇者:・・・・・・図々しいな、お前。
魔王:我、魔王ぞ?悪の代名詞ぞ?これぐらい当たり前だって。それに減るもんじゃないし。いいでしょ?
勇者:少なくとも緊張感は死滅したわ
魔王:あーあー、聞こえない。・・・・・・・・・ん、んん、よし、それじゃあ、おねがいしまーす!!
勇者:たくっ、次は失敗すんなよ!!
魔王:・・・・・・フハハハハハ!よくぞ来た!!
勇者:(お、大丈夫そう)
魔王:勇ちゃよ!!!!
勇者:・・・・・・・・・・・・・・
魔王:・・・・・・・・・・・・・・・
勇者:・・・・・・・・おい。
魔王:待って!?
勇者:いいや、待たねぇ!一体どこで噛んでんだ!序盤乗り越えたから安心してたらこれだよ!!誰だよ、勇ちゃって!?初めて聞いたわ!?
魔王:待って!違うの!?練習では上手くいってたの!?ほんとだよ!本当にちゃんと言えてたの!!
勇者:うるせぇ!!本番で成功させろや!!俺の気持ち考えろ!?長い旅の果てになんだこの茶番!?というか、練習ってなんだ!?
魔王:だって、緊張すんじゃん!初めてだもの!?命の危機なんだもの!?緊張して、喉カラカラで手汗べとべとで心臓バクバクなの!!
勇者:久しぶりとか言ってたじゃねぇか!というか、練習ってなんだ!?
魔王:見栄張りましたぁ!!ごめんなさい!!初めての勇者戦です!!緊張しすぎて昨日は眠れてないです!
勇者:なんの報告じゃい!!というか、練習って(以下略)
魔王:勇者来客用マニュアルがあんの!頑張ってそれ見て練習してたの!側近に手伝ってもらったのにこれだよ!!我、側近の顔がもうみれない!!
勇者:知るか!!来客ってなんだ!?勇者なめてんのか!?
魔王:それこそ知らないよぉ!!先代から譲り受けたんだもの!!我だって文句言いたいわ!!もっと、必死になれや!!こちとら、命の危機やぞ!!
勇者:・・・・・・・はぁはぁはぁはぁ
魔王:・・・・・・・はぁはぁはぁはぁ
勇者:まぁ、いい。いや、なにも良くないが一旦、落ち着こう。
魔王:はぁはぁはぁはぁ
勇者:いつまで、息切れしてんだよ。体力無さすぎだろ。
魔王:昨日、はぁ、寝てないって、はぁ、言ったじゃん・・・・・・あ、良い感じに落ちそう。
勇者:おおい!!やめろよ!この状況で一人にすんな!
魔王:わぁい、側近。我、頑張ったよね・・・
勇者:起きろぉ!!こんな結末だれにも話せねぇよ!勝因、睡眠不足とか誰も信じてくれねぇよ!!
魔王:はっ!!あ、危なかった。死んだ家族と部下が川の向こうで手招きしてた。
勇者:おおう、なかなか重たい過去を持ってそうだが、めんどくさいのでスルー。
魔王:ん、んん、それで!!どうしようっか?・・・・・・・もう一回初めからする?
勇者:やらねぇよ!!!・・・・・かといって、戦う気も失せた。はぁ、どうっすかなぁ。
魔王:お帰りなさっては?
勇者:そうもいかねぇよ。これでも勇者だぞ。手ぶらじゃ帰れない。
魔王:ふーん、そういうもんなの?あ、というか聞きたいんだけど、なんで一人なの?マニュアルだと四人組で来るって書いてあるんだけど?
勇者:あー、それな。最初は確かに、四人組だったわ・・・・・・まず、僧侶がぎっくり腰でリタイアだろ。騎士は、旅先の町に着くたびにちょっかいかけて、最終的に20人ぐらいの女性に命を狙われて逃亡のためリタイアだろ。魔法使いは、10歳ぐらいのガキだったから置いてきた。
魔王:oh・・・・・・・・・・
勇者:仲間の人選も最低だったが、初期装備も最低だったな・・・・・50ゴールドと木刀と鍋のフタってなんだよ!!伝統とか知るか!?もっと、マシなもんよこせや!
魔王:ぬ、主も苦労しとるんだな・・・・
勇者:こんなのは序の口よ・・・
魔王:こ、このレベルの話がまだまだあるのか?
勇者:ふっ、当たり前だろ。
魔王:なぜ、鼻で笑ったかは知らんが、ちょっと待ってて。今、酒持ってくる。
勇者:あ、酒?
魔王:どうせ、戦わないでしょ。なら、朝まで呑むぞ!!我、愚痴りたい!!主の愚痴も聞くから付き合え!!
勇者:・・・・・・・・・・極東の島国産の酒は置いてるか?
魔王:あるある!通だねぇ!さっ、呑むぞーーーーー!!