やけ酒OLとお節介青年
燈火:ぷはー、うめー、アルコールが染み渡る
優斗:あー、お姉さん?
燈火:んあ?
優斗:いくら日本だとしても、深夜の公園で女性が一人でお酒を飲むのは危ないと思うんですよ
燈火:えー、なに?ナンパ?
優斗:話聴いて?
燈火:いっひっひっひ、聞いてる聞いてる聞いてまーす
優斗:聞いてない人の返事でしょ、これ
燈火:君が優しい人だって話でしょ?
優斗:そんな話してませんよ
燈火:えー、じゃあ、優しくないの?
優斗:いや、俺は優しいですよ
燈火:おー、言い切るねー
優斗:人に優しく、自分にはもっと優しくをモットーに生きてるんで
燈火:いいねいいね、君とは仲良くなれそうだ
優斗:いや、仲良くしなくていいんで、家に帰って飲んでくださいよ
燈火:やだよー、家で一人とか寂しくて泣いちゃうじゃん
優斗:そこまでは知りません
燈火:優しい人なら付き合ってくれるんだろうなー、ちらちら
優斗:その白々しいセリフと態度をやめろ、酔っ払い
燈火:言葉が強くて泣いちゃいそう
優斗:・・・はぁ、少しだけですよ
燈火:やったー、ささ、どうぞ、どうぞ、
優斗:それじゃ、いただきます
燈火:おー、良い飲みっぷりだ
優斗:それで?なんで飲んでるかぐらいは聞いてもいいですか?
燈火:お、そこ聞いちゃう?踏み込むねぇ
優斗:それ以外に話題なんてないでしょ
優斗:生い立ちでも話します?
燈火:私的にはそれでもいいけどね
燈火:そう、大雨が降り注ぐ中、一人の大男が赤ん坊を抱え、とある屋敷を尋ねた。その赤ん坊こそが私である
優斗:えらい壮大な話が始まりそうで興味が引かれないこともないですが、いまはいいです。
燈火:ここから全米が泣く感動的な幼少期編が始まるのに
優斗:いいから
燈火:はーい、えーと、簡潔にいうとやけ酒でーす
優斗:それは分かります
燈火:あ、だめ?
優斗:駄目です。もう少し詳しく。
燈火:あー、引かない?
優斗:すでに結構引いてるんで今更ですよ。
燈火:なら良かった・・・・・良かったか?
優斗:それで、なんでやけ酒してるんですか?
燈火:んーとね、ぶっちゃけると上司を殴って会社をクビになりました!
優斗:え、こわ、帰りますね。おやすみさない
燈火:ふぅー!決断が早いね!お姉さん泣いちゃそう!
優斗:まぁ、冗談はおいといて、なんでそんなことしたんです?
燈火:なんでだと思う?
優斗:いらっ
燈火:わー、待って待って、帰らないで!
優斗:はぁ、それでどうしてそんなことしたんですか?
優斗:上司殴るって結構な理由がいると思いますけどね
燈火:・・・私さぁ、優しい人って好きなんだよね、尊敬する
優斗:つまり、俺のことが・・・でも、ごめんさない
燈火:口説いてるのとちゃうよ?ライクよライク
優斗:ですよね
燈火:意外と小ボケを挟んでくるね君?・・・
燈火:それで、私が好きな優しい人を利用する人間もいるってことだよ
燈火:優しさには何の代償もないと思い込んで、優しさの価値を知ろうともしないバカな人間が
優斗:それで、プッツンしてしまったと
燈火:まぁ、そだね
優斗:お姉さんもたいがい優しい人間なのでは?
燈火:違うよ、私のこれは違う
優斗:同じだと思いますけどね
燈火:私のは、ただの我が儘だよ
燈火:報われてほしい人が報われなくて、幸せになってほしい人が幸せになれなくて、納得がいかないって駄々をこねたの
優斗:ふーん、そんなもんですか?
燈火:そんなもんなのですよ。
優斗:そーゆうの嫌いじゃないですけどね
燈火:お、嬉しいねぇ
優斗:・・・・なら、笑いましょう
燈火:はえ?
優斗:嬉しいなら笑って、笑ってたら幸せになって、幸せになったらまた笑いましょう
燈火:なにその無茶苦茶な理論
優斗:こーいうの好きでしょ、お姉さん
燈火:あー、そうね、嫌いじゃないわ
優斗:アホみたいに能天気に幸せそうに笑ってたらそのうち、神様もつられて笑ってくれますよ
優斗:そしたら、なんかいいことが起きるかもしれません
燈火:もしかして、慰めてくれてる?
優斗:・・・別に、酔っ払いが酔っ払いに意味の分からないことを言ってるだけですよ
燈火:それじゃあ、しょうがないね
優斗:はい、しょうがないんです。
燈火:・・・おっと、大事なことをしてなかった!
優斗:大事なこと?
燈火:そそそ!!自己紹介してないじゃん!!私、無職のヤバい人じゃん!
優斗:名前知ってもその評価は変わらないと思いますけど?
燈火:とにかく!私は、白峰燈火!
燈火:優しいお兄さん、君の名前は?
優斗:あー、俺は黒鉄優斗です
燈火:それじゃ、優斗!この出会いに祝して乾杯!
優斗:え、もうそろそろ帰り・・・・
燈火:乾杯!!!
優斗:・・・・しょうがないなぁ、一杯だけですよ?
優斗:乾杯!