ちょー凄い魔法使い
佐藤:「ツイてない」
佐藤:それが俺の口癖だ。
佐藤:はっきり言おう。
佐藤:俺は運が悪い。
佐藤:道を歩けば鳥の糞が当たるし黒猫はしょっちゅう前を横切る。
佐藤:靴ひもは切れるしマグカップすぐに割れる。
佐藤:そんなツイてない俺だが、命がかかるレベルでツイいないことは
佐藤:・・・・・・あるにはあるが、今回ほどひどくはなかった。
佐藤:え、今?
佐藤:ゴーレム的な岩の巨人に追い回されてます。
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佐藤:「あぁぁ!!ツイてねぇ!!
佐藤:たまたま近道しようと公園横切ったらゴーレムに襲われるってなんだよ!
佐藤:というか、ゴーレムってなんだよ!!科学が発展した現代日本で岩の巨人が暴れんな!!
佐藤:くそっ!幸い動きは遅いみたいだしなんとか隙をみて・・・危なっ!
佐藤:と、投石?自分の体から岩を剥ぎ取って投げている?
佐藤:ばっか!!自分の体を大切にしろ!?大切にして今日はもう家に帰ってゆっくり休め!
佐藤:・・・・・あれ?ほんとに帰るの?って、おいおいおい!!ジャングルジムを引っこ抜くんじゃない!!そして投げるんじゃ・・・
佐藤:あ、死んだ」
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ルナ:「ふぃーーー、ギリギリセーフ!
ルナ:流石私!紙一重ってやつだね!」
佐藤:「あれ?生きてる?」
ルナ:「あ、おにーさん。大丈夫??」
佐藤:「え、ああ、体は大丈夫。心は、しばらくはジャングルジムみたら吐くレベル」
ルナ:「うん、無事だね」
佐藤:「無事か・・・?」
ルナ:「おっと、あぶない」
佐藤:「なぁ、俺の目がおかしくないなら、さっきから飛んでくる岩やら遊具やらを防いでいるそれって魔法陣?」
ルナ:「うん?魔法陣ですけど」
佐藤:「まって、そんな当たり前な顔しないで」
ルナ:「あ、自己紹介してなかったね」
佐藤:「マイペース過ぎる」
ルナ:「ちょーすごい魔法使いのルナです。」
佐藤:「佐藤です・・・・・・・ちょーすごい魔法使いって言った?」
ルナ:「はい、ちょーすごいんです。ぶい」
佐藤:「おぉ、命の恩人に対して抱いてはいけない感情を抱いてしまった」
ルナ:「そんな、私がちょーすごい魔法使いで超絶美少女だからって、そんな・・・」
佐藤:「やっぱり、あほの子だ」
ルナ:「なんですと!!」
佐藤:「わかる!俺にはわかる!
佐藤:生まれてからあらゆる災難を潜り抜けた俺にはわかる!この子は残念な子だ!」
ルナ:「命の恩人に対して失礼すぎない!?」
佐藤:「俺の勘がいってる!これから厄介ごとに巻き込まれると!」
ルナ:「ゴーレムに襲われてる時点で手遅れでは?」
佐藤:「そうだな!」
ルナ:「やけくそだね・・・」
佐藤:「うるせぇ!それで?どうしたらいい?」
ルナ:「あれ?もうちょい混乱しているかと思ったんだけど」
佐藤:「不本意だが、緊急事態には慣れてんだ。
佐藤:ゴーレムに襲われたの始めただけどな」
ルナ:「それじゃあ、手短に
ルナ:あそこのゴーレムみたいな化け物を人知れず倒すことを生業としているのが、私たち魔法使いね。
ルナ:普段は、ちゃんと人払いをしたうえでやるんだけど、今回はドンピシャであなたの隣に出現ちゃってね。
ルナ:つまり・・」
佐藤:「つまり?」
ルナ:「おにーさんは宇宙レベルで運が悪いってことだね」
佐藤:「うれしくねぇ」
ルナ:「とりあえず、現場に一番近かった私が急いできたわけだけど、問題があるんですよ」
佐藤:「まて、嫌な予感がする」
ルナ:「いい勘してるね。
ルナ:実は、新魔法を開発していて、今日やっと実験成功したんで、お祝いにこうパーッと魔法で花火やらなんやらをしこたま出した後でして・・・・」
佐藤:「結論は?」
ルナ:「魔力がすっからかんです」
佐藤:「・・・・・やばくない?」
ルナ:「鬼やばいです。ちょーピンチです。」
佐藤:「あぁぁぁ!!!助けてもらっていてあれだけどやっぱりツイてねぇ!!
佐藤:というか!魔力が空になるほどお祝いしてんじゃねぇよ!」
ルナ:「今日のこれは予想外なんですぅ!
ルナ:ごほん、まぁ、そういうことなんで、おにーさん
ルナ:助けにきといてなんだけど」
佐藤:「なんだよ。そのいい笑顔は、不安になるじゃねぇか」
ルナ:「・・・・・助けて!?」
佐藤:「俺のセリフなんですけど!?」
ルナ:「大丈夫!!ちょっと契約するだけだから!
ルナ:少し魔力を貰うだけだから!
ルナ:先っちょ!先っちょだけでいいから!」
佐藤:「言い方ぁ!!」
ルナ:「痛くしないから!!・・・・ってやば、あぶな!?」
佐藤:「なにいまの?」
ルナ:「ビームですね」
佐藤:「なんでそんなの打てんだよ!
佐藤:かっこいいじゃねぇか、畜生!」
ルナ:「私だって打てますし!ちょー凄い魔法使いですし!」
佐藤:「張り合ってんじゃねぇ!魔力切れでなんもできないじゃねぇか!」
ルナ:「早く!!早く!おにーさんの人生で一生使い道のない大事なもの私に頂戴!」
佐藤:「だから、言い方ぁ!」
ルナ:「おにーさん、いや、旦那!!」
佐藤:「お、おう、なんだ。真面目な顔して」
ルナ:「お願いしますよ~、旦那~。あ、靴でも舐めます?膝枕でもしますよ?」
佐藤:「どんな二択だよ」
ルナ:「くっ、こうなったら」
佐藤:「協力するから、当たり前ように土下座の体制に入るな!」
ルナ:「いや、私の土下座は界隈でも随一との評判で・・・!!」
佐藤:「どんな界隈だよ
佐藤:いや、そんなことより魔力はどうすりゃ渡せるんだ」
ルナ:「そう・・・・本当に見たくない?」
佐藤:「なんで土下座みせることに前向きなんだよ
佐藤:いいから、教えてくれ」
ルナ:「特にしてもらうことはないよ。
ルナ:時間もないのでちょっと強引にやるから」
佐藤:「なんか不安だな」
ルナ:「力が抜ける感覚があるけど、抵抗しないでね。
ルナ:あと、意識失うと思うけど」
佐藤:「は・・・・・」
佐藤:ちょー凄い魔法使いとやらが俺に手を向けた瞬間
佐藤:何かが身体から抜ける感覚とともに意識も薄れていった。
佐藤:ぼやける視界に映る、幾重もの魔法陣を従えたその姿は、確かに
佐藤:魔法使いだった。
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佐藤:「うぅ・・・」
ルナ:「あ、目が覚めた?」
佐藤:「どういう状況?」
ルナ:「ゴーレムは無事に倒せたよ。
ルナ:おにーさんのお陰で助かったし、目が覚めるまで傍にいてあげようかなと思ってね」
佐藤:「なるほど。
佐藤:そんでこの柔らかい後頭部の感触の正体は?」
ルナ:「膝枕でーす!
ルナ:どうよ?疲れがとれるっしょ」
佐藤:「あー、そうな。悪くないわ、これ」
ルナ:「でしょ?」
0:少し間を開ける
ルナ:「あ、おにーさん」
佐藤:「なんだよ、もう家に帰りたいんだけど?」
ルナ:「実は、おにーさんが寝てる間にちょっと調べたんだけど」
佐藤:「なぁ、すごく嫌な予感がする」
ルナ:「やっぱり、勘がいいねぇ。おにーさん。
ルナ:実は今回のこれ、偶然じゃないっぽいんだよねぇ」
佐藤:「なに?誰かに命でも狙われてんの、おれ」
ルナ:「そうじゃなくて、体質的なもんかな
ルナ:モンスターを引き寄せる体質」
佐藤:「・・・・マジで?」
ルナ:「大マジ。
ルナ:ということで、おにーさんの身柄はこちらで保護するから」
佐藤:「ちなみに、本当に保護?体質を利用して囮とかやったりしない?」
ルナ:「ダイジョウブダヨ」
佐藤:「俺の目をみて言えよぉ!!」
ルナ:「ま、これも何かの縁だし、私が守ってあげるよ」
佐藤:「くそ、少し安心した自分が悔しい」
ルナ:「改めまして、ルナです。よろしく。」
佐藤:「佐藤だ。命を守ってください、お願いします。」
ルナ:「任せてよ!
ルナ:なんてったって私はちょー凄い魔法使いなんだから!」
佐藤:「・・・・・・・かっこよく決めてくれたところ悪いんだけど」
ルナ:「はい?」
佐藤:「ドラゴンが空飛んでんのよ」
ルナ:「・・・・・・はひ?」
佐藤:「一応聞くけど
佐藤:魔力残ってる?」
ルナ:「空っぽですねぇ」
佐藤:「あぁ!ツイてねぇ!!」