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愛殺新訳外伝SP:愛の宣伝特番!

 愛殺(あいころ)コンテンツの魅力を語るべく宣伝特番の収録が始まった。とや松のノリで毎回暴走する愛殺新訳外伝とは言えど、二次創作で本編の宣伝特番を敢行(かんこう)するとはまあ随分とメタい。


 学ランを着込んだ川戸怜苑が力強く顔を上げ、画面の向こうの皆様へ若い眼差しを向ける。緑の髪がふさふさして可愛い。

『みなさんこんにちは! メディアミックス作品【愛した人を殺しますか?──はい/いいえ】で川戸怜苑(かわどれおん)を演じております川戸怜苑(かわどれおん)です!』

 なんと迷走した自己紹介だろう! これこそまさに本人役?

『いきなりの進次郎構文(しんじろうこうぶん)やめーや!』

 すかさず美咲がツッコミを入れる。ちなみに美咲は関西人である。

『(だりい)』

 ラムズがダルそうに椅子に腰掛け、行儀悪く腕と足を組んでいる。

 座長の怜苑をセンターに、愛殺コンテンツからはラムズ、メアリ、ジウ、ロミュー。松コンテンツからは洋介と美咲が出席している。収録スタジオにヤマト乗組員とシャーク海賊団が揃い車座で座っているのだ。


『まずはシャーク海賊団から、愛殺の魅力をプレゼンしていただきます!』


『じゃあまずは……ラムズ船長から!』

『ああ、いいよ』

 出演者に渡されたボードにラムズが魔道具の羽根ペンですらすらとなにやら書いている。海賊の王子様は美しくて何をやっても絵になる。

 ラムズがボードを反転。カメラに見せる。


 愛殺の魅力:宝石 


 と綺麗な字で書いてあった。

『俺が推すのは、宝石だ』

『『おお~』』

『ガーネット号のガーネットはじめ、愛殺世界にはサファイア、ラピスラズリなど宝石から命名したキャラや用語がある。書籍版の扉にも解説されているから宝石狂いの船長としては押さえておきたいポイントだな』


『んじゃ、次はボクだね~!』

 ジウがマジックペンをグーで可愛く握り、舌をぺろりと出しながらボードに書いていく。

『じゃん!』


 愛殺の魅力:拷問シーン 


 ジウがきょろきょろと左右の皆にニマニマして、皆があとずさりする。

『やってあげようか?』

 ジウは研ぎ澄まされたカトラスを舐める。

『『遠慮しときま~す』』

『ロミューさん書けます?』

『俺か? 気乗りしないが……ほい』


 愛殺の魅力:個性的なキャラクター


『おお~!』

『なるほど!』

『さすがロミューさん』

『愛殺世界には色々な使族(しぞく)がいて、価値観の違いからよく揉める。それを緻密に描いているのが面白い』


『メアリ、お前さん書けたのか?』

 ロミューが水を向けるとメアリは顔を赤らめもじもじとする。

『わ、わたしはいいわ』

『そう言わずに』

『わかったわよ』


 愛殺の魅力:愛


『あ~!』

『なるほどね!』

『やっぱそうだよ! それ大事』

 意外とウケてメアリが安堵する一方、皆がラムズに視線を向ける。

 ラムズは白銀の睫毛を伏せて首もとの宝石をいじっている。照れ隠しか?


 締めくくりに怜苑のプレゼンだ。

『俺が推したいのは──人間ドラマ!』

『『おお~!』』

『俺のプレゼンは、地球の読者が作った愛殺新訳外伝(あいころしんやくがいでん)とリンクするものになります! ずはり──若者対大人!』

 ビシ、ビシ、と若者VS大人と描かれたボードの大人の文字を怜苑が指で弾く。

大人(おとな)!?』

 怜苑がドスの利いた顔になる。

『この大人が誰を意味するか、皆さんわかりますか!?』

『誰だろう?』

『ラムズ船長と洋介艦長! お前らだよ!』

『うわ!』『びっくりした~』

『洋介さんのことお前って言ったことないからビビっていますけど、地球でも愛殺世界でも大人って社会のシステムに染まって、システムや文化を当たり前のものとして慣れていくじゃないですか、そこに転移して戸惑う若者ポジションが俺な訳ですよ。一方ラムズ船長や洋介さんは泰然としている』

『そういえば、地球から転移してきて愛殺世界に戸惑うのはヤマト乗組員も一緒だな』


『『という訳で、愛殺をよろしくお願い致します!』』


「はーいOKです!」

 収録は終わった。


     ◆◆◆


 愛殺新訳外伝では地球の訳者は出演NGだったが、今、解禁される。


「わーい! りとちゃん! 来てくれたの?」

 美咲が高いテンションで地球の訳者に抱きつく。

「美咲ちゃん!」

 訳者も美咲の背中に手を回す。

「ウチらずっ友だょ!まぢ卍」

「美咲ちゃんいつもギャルじゃんwww」

「ずっ友ぴい~すww」

「笑笑」

 訳者と美咲はノリが合いそうである。

「おい美咲!」

 あろうことか訳者を召還した美咲を洋介が慌てて制する。

「なに?」

「ちょちょちょ! ちょちょちょ!」

 洋介が美咲を壁際に寄せ内緒話。

「(なんで地球の訳者召還した!?)」

「(だって私が元アイドルで、りとちゃんギターやってたみたいだから、セッションしたら面白いかなって)」

「まあそれなら……いいか」


 テイクアウトした抹茶フラペチーノを片手に、美咲と訳者が楽譜をにらめっこして蛍光ペンで書き込んでいく。

 打ち合わせは完璧だ。


 ドラム担当が合図をし、訳者にギターが渡され、本日の宣伝特番を締めくくる、愛殺主題歌が披露された。


 地球の訳者の思い出がまた1ページ増えたのだった……



 愛殺新訳外伝SP:愛の宣伝特番! おしまい。



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