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愛殺新訳外伝  作者: 松コンテンツ製作委員会
第六章「奴隷少女と宝石狂いの船長」
17/29

第17話『奴隷少女と宝石狂いの船長:第三幕』

 ──これまでの愛殺新訳外伝byレオン


 俺も地球の二次訳者に頼まれて解説を頼まれたよ。現代日本と愛殺世界の中間にいる俺に白羽の矢が立ったみたい。はあ……

 まったく松なんとかって奴、どんだけ二次創作を訳者さんに読ませる気だろう? 訳者さん翻訳で忙しいのに!  

 しかもヤマトだなんて、どこの宇宙戦艦だよ! 父さんの昔のビデオで見たなあ。ガーネット号との共通点船しかないじゃん。


 ラムズ・シャークと東城洋介は何もかもが正反対だ。 

 海賊と海上自衛官。

 海賊船船長と戦艦艦長。

 貴族と庶民。

 銀髪と黒髪。 

 美白と日焼け。

 青い目と赤い目。

 だけど、同じ船乗り。


 船乗りは船乗りを見捨てたりなんかしない。


 それがわかった時、洋介とラムズが互いを理解した時、シャーナちゃんが悪党に連れ去られる。


 転売ヤーのバックにヤクザがいることはなんとなく知ってたけど、まさか愛殺世界にまで手を伸ばしているとは思わなかった。

 ルテミスを奴隷にしているらしい。許せない……!

 社会科の授業真面目に聞いていればよかった。


 そんなこんなでヤマト発進! じゃなかった、今回の主役はガーネット号だよ! 洋介さんが主役だと二次創作じゃなくなる!


 海賊の王子様はシャーナちゃんを救出しに戦うのである!


 ……これでいいかな? 監獄島上陸作戦ははじまってる、俺も戦いに戻らなきゃ、じゃあね!

 そう、いつだって彼は王子様だった。

「みーつけた」

 船長は優しいから、きっと来てくれると信じていた。

 前もって知らされていたかのように、海賊の王子様はシャーナの牢の前で立ち止まる。

 看守から手首ごと引きちぎった鍵を取り出し、迷いなくこの牢の鍵を選び、簡単に開けてみせる。 

 平手を差し出し、もう片方の手は後ろに回し、笑顔を作る。

 差し出された手は痩せていて、白くて、綺麗だ。

「俺と来るのは嫌? そうか」

 ラムズはくるりと背中を向けてしまう。

「待って……!」

 わざと帰ろうとして女の子に引き留めさるラムズは最高にズルい。

「ずるいよ……帰りたくないわけないじゃん」

 シャーナの緑の手がラムズの白皙の手に重なった。


     ◆◆◆


 広場のステージには解放されたルテミスたちが集まっていた。

 その中央に海賊の王子様は格好よく構えた。

赤髪赤目(ルテミス)たちよ、長き忍耐の時は終わった」

 ラムズが魔道具のペンを走らせ、首枷に紋様が光る。

「「おお」」

 ガチャリ、と拘束が外された。ルテミスは屈強な腕で引きちぎる。

「これからの歴史は、赤髪赤目の殊人(シューマ)が手を取り合い築き上げる」

 ラムズは怯む黒服に侮蔑の眼差しを向け、

「お前たちにくれてやるのは、恐怖だけだ」

 黒服は唸る。

「くそっ、海賊の王子様(プリンス)……!」


「──そこまでだ、皆!」


 リューキがプルシオ帝国の兵団を連れ、広場に乱入してきた。

「この紋所(もんどころ)が目に入らぬかああっ!!」

 プルシオ帝国王室の紋章が高らかに掲げられる。

「「!」」

こちらにおわすお方をどなたと心得る! 畏れ多くもプルシオ帝国第一王子、リジェガル公にあらせられるぞ!」

「一同! リジェガル殿下の御前(ごぜん)である! 頭が高い、控えおろう!」

「「は、ははーっ!」」

 一斉に土下座……いや拝跪(ニール)した。

 威厳を保って君臨するリジェガルの代わりにリューキが悪人どもを詰める。

「その方、地球世界で転売をするだけでは飽きたらず、殊人と獣人を奴隷にするとは言語道断! 追ってニュクス=プルシオ帝国より厳しい沙汰があるものと覚悟致せ」

「畏れながら……畏れながら、殿下がこのような場所に現れるはずもない」

 リーダーらしき黒服サングラスの男がいきり立つ。どうやら地球の転売ヤーがここのボスだ。

 リューキはリジェガルに視線で指示を仰ぐ。

 ロミューとジウが黒服の肩を押さえ、地面に組み伏せる。

「殺れ」

 リジェガルは簡単なジェスチャーで黒服の処刑を命じる。

「成敗!」


 リューキがサングラスの男の首を斬り捨てた! 


 血飛沫がジウの頬を濡らし、舌でそれをぺろりなめとる。 

 ロミューの口にも入り、唾と共に嫌そうに吐く。

 ロミューとジウがズタズタの(むくろ)を引きづり、海に投げ捨てた。








 《 愛殺新訳外伝シリーズ 第六章 「奴隷少女と海賊狂いの船長」 》









「なんだよ、いいところを持っていかれちまった」

 ラムズが子供みたいに拗ねる。

 傍らにはシャーナがいる。

「いつまでついてくるんだ? お前はもう自由だぞ?」

「ううん、私はラムズ船長のものだよ」

 そんな台詞をシャーナは言った。

「仲がいいのね」

 メアリがジト目になる。


 ガーネット号は出港した。


 波に揺られるガーネット号の船長室で、シャーナがラムズの腕に身を絡ませる。いつまでもこうしていたいらしい。

「へえ、そう。好きにしろ」

 ラムズの玩具(コレクション)がまた増えたのだった。


 ロゼリィがため息をついた。


「ラムズ・シャークはいつだってみんなの王子様なのですね。これまでも、これからも……ああ、なんと罪深い!」


 めでたしめでたし……?


 

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