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嘘吐きは種明かしの始まり


「ふう。全くもってヒヤヒヤする戦いだった……」


 銀太郎は馬車の窓から見える景色を眺めながらそう呟く。


「ですが、村の人たちはみんな感謝していましたよ。勝てて良かったじゃないですか」


 リィルは銀太郎を褒めるが、銀太郎の心は更に罪悪感を募らせるのだった。


「(違うんだ。そういう意味じゃなくて、僕がヒヤヒヤしていたのは村の人たちに俺の手品の正体がバレていないか不安だったからだ)」

「そうねえ。今回の件についてはほとんど全部私の手柄だものね」

「……ナルタロさん、俺も色々と言いたいことはあるけど、今回はお前のおかげで助かったよ。確かにお前がMVPだ」

「えむぶいぴー? その言葉は良く知らないけど、褒めてくれたのね。素直で可愛いわ」


 銀太郎は思わずガクリと首を垂れる。


「お前といると調子が狂うな。大体、お前はあれだけ強いなら出会った夜にでも俺たちを殺してしまうことも出来ただろ」

「それではいけないのよ。魔王を倒すという使命を銀太郎ちゃんたちに託せなくなるわ」

「お前の言っていることがよく分からん」

「今は気にする必要なんてないわ。どうしても理由を詳しく聞きたいって言うなら、例の必殺技について、あのお弟子ちゃんたちに種明かしをしてもいいけど?」

「止めてくれ。それだけは止めてくれ」


 銀太郎は自身の背後を漂っているナルタロに釘をさす。


「銀太郎殿? ナルタロ? さっきから一体何を話しているのでありますか?」


 馬車の御者台に座って馬たちを操っていたリッキーが二人に尋ねる。


「……なんでもない。俺たち二人だけの秘密だ」


 リッキーは銀太郎からそう言われて眉をひそめた。


「リッキーったら、嫉妬しているわ。可愛い」

「なっ、わ、私は決して銀太郎殿とナルタロが仲良くしていることに嫉妬などしていないでありますよ! ただ、いつの間にあなたたち二人はそんなに距離が縮まったのかと……」

「別に距離なんて縮まっていないぞ。俺は相変わらずこの悪魔が苦手だ」


 リッキーはその言葉を聞いて少し安堵したような表情を浮かべる。


「(とはいえ、ナルタロがいなければ僕たちの冒険があの村で終わっていたのも事実だ。ナルタロが僕の荷物に入っていた魔物避けと爆発の二つを混ぜ合わせたポーションを村の各所に設置させて、僕が合図をすると共にナルタロの魔法でポーションに点火。あたかも僕が必殺技を放ったかのように大爆発を巻き起こした)」


 銀太郎はもう一つの窓から外の景色を眺めて楽しんでいるミィルとリィルを一瞥して再び項垂れる。


「(ミィルとリィルはすっかり俺の必殺技を本物だと信じ込んでいるみたいだが、これで益々俺が伝説の勇者ではないことを明かしにくくなってしまった)」


 窮地を乗り越えて冷静になった銀太郎は弟子たちにまたしても嘘をついてしまったことを後悔する。


「あっ! ししょー! ようやく見えて来たよ!」

「……見えて来たって何がだよ」

「何がって、今回の冒険の目的地だよ!」

「…………ハッ! まさかもう着いたのか!?」


 銀太郎は慌てて窓の外に目を向ける。

 ミィルが言っていた通り、馬車が入っている道は銀太郎にとって見覚えのあるものだった。

 この冒険の目的地、それは悪竜ストレグラスのいた洞窟。

 運命の刻はすぐそばまで迫っていたのだった。

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