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嘘吐きは四天王会議の始まり


「ナルタロが我らに謀反を企んでいるようだな」


 そこはエルファリシアの山岳地帯の奥に存在する魔王軍の本拠地、魔王城。

 謁見の間にて開かれた定例会議で六本足の甲冑騎士がそのように発言した。


「奴は前々から魔王様への忠誠が薄いと感じていたのだ! こうなるのならばあの女は始末しておくべきだった!」


 山羊頭の巨漢ラスパールは苛立った様子で叫ぶ。


「落ち着きなされ、ラスパール殿。裏切ったとはいえ、夢魔の一体が人間と組んで出来ることなどたかが知れております。ナルタロ如き、我らの前では取るに足らない小物ですぞ」

「甘いな、グリオンダム。その甘さは護りにおいて隙を生むぞ。ラスパールも人間一人に怯えて逃げ帰ってくるなど情けない。この我、フォルガスタが三人いたならばお前たちのような失態は侵さず、迅速且つ的確に人間共を追い詰めていたことだろう」


 フォルガスタと名乗る六本足の甲冑騎士の態度は自信に満ちていた。


「おい、フォルガスタ。言っておくが、私は勝てない戦いはしない性格だ。貴様があの時、近衛銀太郎と戦っていれば、今頃貴様はこの世にいなかったのかもしれない」

「ふん。お前の理屈はいつも机上の空論だ。その便利な目で弱い者いじめをするしか能のない山羊め。少しくらいは自分の力を試して見せろ」


 ラスパールとフォルガスタは睨み合う。


「止めなされお二人共。ここは魔王様の御前なのですぞ」


 グリオンダムという名のローブを纏った小柄な老人は杖を床に突き、ラスパールたちを仲裁する。

 ラスパールとフォルガスタは魔王の名を出されるとすぐに黙り込む。

 四天王たちが玉座に視線を向ける。

 そこには形容しがたい闇そのもののような何かが存在していた。


「……ご苦労だった、グリオンダム。これでようやく余の話が始められる」


 その直後、玉座から獣の唸るような魔王の声が轟く。


「――と、言いたいところだが、その前に一つやっておくべきことがある」


 魔王の姿を形作っていた闇の一部が黒い鱗の生えた竜の尾に変化する。

 次の瞬間、魔王の尾がグリオンダムの腹を貫いた。


「…………ま、魔王様? 何をなさって――」


 グリオンダムも含めたその場の誰もが目を丸めて言葉を失う。


「聞かせろ、グリオンダム。何故、ストレグラスが『まだ生きて』いる?」

「何をおっしゃいます。ストレグラスは我々が致命傷を与えたはずですが……」

「そうか。余が自分の目で見た時、まだ奴は生きていた。報告と違うな」

「お、お許しくだされ……どうかご慈悲を……」


 魔王は命乞いをするグリオンダムの腹から尾を引き抜く。


「もう一度チャンスをやろう。グリオンダム、次こそストレグラスを殺してこい」

「ぎょ、御意でございます……」


 こうして、四天王グリオンダムは悪竜の洞窟へと向かっていくのだった。


 ――近衛銀太郎の一行はそのことをまだ知る由もない。

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