転生したらハイスペックな婚約者様ができました。そんなの聞いてないんですけど!?
軽い気持ちで書いたので設定ががばがばです。お許しください。
いじめの描写があるので苦手な方は飛ばしてください。
私の名前はティアラール・エア・クランドール。クランドール辺境伯家の長女です。貴族の中で見ればそこそこいる程度の顔立ちの、お母様譲りのこの青紫の髪とお父様譲りの黄金の瞳がトレードマークなご令嬢です。そんな私には、皆には言えない秘密があります。
実は私、前世の記憶があるんです。前世の記憶では、私は地球の日本でJKをしてたんです。二次元の男、特に乙女ゲームのイケメンたちが好きでオタク活動もしていました。少しだけBLのほうも嗜んでいたのですよ。あくまでもたしなみ程度ですけれど。ある日、学校から帰宅する途中、運悪く事故にあったのです。前世の記憶はそこで途切れているので、きっとその時に死んでしまったのでしょう。
そして私が生まれたのです。前世の記憶を思い出したのは1歳半の頃。まだ幼かったのもあり、中身が変わっても周りの人は気づきませんでした。
私が前世の記憶を思い出して、まず驚いたのは、この世界は2.5次元ばりに人の顔立ちがキラキラしていたことです。いえ、正確に言うと2.3、2.2次元でしょうか。この世界では所謂モブ顔と言われるだろう平凡な顔立ちの人であっても、前世の芸能人よりもかわいいのです。もともと私は二次元に出会ってから二次元の人しか愛せませんでした。そんな私からしてみればこの世界はまさに天国でした。
次に、髪や瞳の色です。前世では見ることのなかったいろいろな色があります。それ、ほんとに地毛ですかと聞きたくなるほど鮮やかな色です。しかし、キューティクルでとぅるんとぅるんな髪は染めているのではないとわかりますし、透明感のある瞳はカラコンなんてつけているのではないことが分かります。
しかもこの世界、魔法があるんですよ!! それを知ったときは感激しましたし、私に魔法の才能があると聞いたときは大喜びしたものです。
学園もありまして、国中の子供たちが貴賤を問わずそこで教育を受けることができます。もちろん、私も学園に行きましたよ。制服がとっても素敵なんです。私、学園物も好きだったのです。前世では勉強が嫌いだったのですが、異世界の学校ということでテンションが上がり、前世ではありえないほどいい成績をとることができました。異世界転生の効果は恐ろしいですね。今は前世で言うところの高校1年生にあたる学年です。友達もそこそこできましたし、学校生活も充実しています。
まさか死んでからこんな理想的な世界に来れるとはと、幼いながらにガッツポーズをして喜びました。ビバ、異世界転生。
さて、そんな夢のような場所に転生した私ですが、今、とてつもなく深刻な問題を抱えているのです。いえ、私にとっては深刻なことではありませんし、家族にとってもそんなに問題のあることではないのですが・・・・・・所謂貴族の事情というやつでして、私、そろそろ婚約者を決めなくてはいけない時期になったんです。
我が家は貴族です。あの年の離れた、シスコンで残念な兄たちにも素敵な奥様や婚約者様がいますし、一番上から四番目のお兄様は結婚もしています。お兄様たちは妹である私から見ると、とっても残念な方たちです。見てくれは極上なのですが、いかんせん中身がダメダメなのです。そんな兄たちがどうやって婚約者を得たのかというと、お見合いです。数々のお嬢さんの中から自分と相性が良いお嬢さんを選んだのです。政略結婚とも言いますね。恋愛結婚ではないのが残念です。しかし、皆さん仲が良く、喧嘩している場面はあまり見たことがありません。私もよくお茶会に混ぜてもらうことがありますが、その時はとっても甘やかされてしまいます。お義姉様たちは美人で、性格も良くて、私は大好きなのです。
私はどこかに嫁ぐのではなく、この辺境伯の地で婿を取ることが決まっています。なぜなら、私がこの地を離れてしまうと、お兄様たちも私について行ってしまうからです。私的には知らない場所に行かなくて安心しているのですが、まだ見ぬ未来のお婿さんにとっては地獄でしょう。なにせ、ここにはシスコンの兄たちがいるのです。絶対にお婿さんがいびられます。
そんな試練が待っているので、一見優良物件に見える私ですが、実は不良物件なのです。
なので、私のお婿さんの条件は『誠実な人』だけです。ホントはもっと条件を付け加えたいのですが、あまり付け加えすぎてお婿さん候補が絞られて、さらにその数少ないお婿さん候補が兄たちの圧力によっていなくなってしまうと困ります。
そう思っていた時期もありました。
私はお父様に『誠実な人』がいいと言いました。ええ、確かに言いましたとも。でも、その結果・・・・・・彼が私の婚約者になるとは思ってもいませんでしたよ!!
「グランドール嬢? どうかされましたか?」
「いえ、今日は庭の花が一段と綺麗だと思いまして」
心配そうに私を見る目の前の方は、私のお見合いの相手です。特に問題がなさそうだったら、彼と婚約することになりますね。そう、彼と、です。
この方の名前は、テオドール・ディル・セイントル。セイントル公爵家の長男です。普通、家を継ぐのは長男なのですが、なぜか彼は私とお見合いをしています。このままでは、私のお婿さんとなってしまうので次期領主の座を捨てることになるのですが。謎です。
彼のうわさはいろいろと聞いています。曰く、天才。曰く、神童。何をやらせても天才的で、魔法の腕は宮殿魔術師長を超え、剣の腕では騎士団長を超え、政治方面では宰相を超え、先見の明はかつての賢王を超えると言われています。実際、彼はいくつもの論文を出しており、その論文のどれもが賞をとっています。しかも、男性なのに料理や菓子作りもするらしくその腕は天下一品。彼の料理を食した宮殿の料理長が弟子にしてほしいと泣いてすがったとか。個人で経営している店があるらしく、商会を立ち上げ、莫大な個人資産を持っているとか。
見た目も極上なのです。柔らかな金の髪に少し濃いめの青い瞳。しみ一つない白磁の肌。華やかで美しい、整った顔立ちはまるで天使のように見目麗しい。180cmはあるだろう身長に、程よく筋肉のついているだろう体は芸術品のようです。
・・・・・・どこの二次元の乙女ゲー攻略対象ですか。乙女ゲームでも、こんなに設定盛りすぎな攻略対象はいないのでは?と思うほど設定盛りすぎです。
情報通なお義姉様から聞いた話によると、社交の場ではあまり表情は変わらず、常に無表情。自分に群がってくる肉食系女子をことごとく袖にして冷たい目線を送ることから、氷の貴公子と呼ばれているそうです。・・・・・・目の前の彼、すっごく表情豊かなんですけど。氷の貴公子どこ行った。さっきとかすっごくにこにこしてたし、今なんて心配ですオーラ全開で私を気遣ってくれていますが。
もう一度言おう。氷の貴公子どこ行った。噂はデマだったのではないかと思ってしまうくらいニコニコしていますが。
「大丈夫ですか? もし具合が悪いのでしたらすぐにお休みになられたほうが・・・・・・」
「本当に大丈夫ですから。心配してくださり、ありがとうございます」
「なら、いいのですが・・・・・・具合が悪くなったら、すぐに言ってくださいね?」
「はい」
優しいですね。何故こんなに優しくしてくださるのでしょうか。私のお婿さんになっても次期辺境伯にはなれないのに。いったい何が狙いなのでしょうか。
「あの、セイントル様。セイントル様はなぜ、私とお見合いをしようと思ったのですか?」
「何故、とは?」
「将来的に私と結婚したとしても辺境伯にはなれませんし、貴方は次期公爵の座を降りることになります。それに、私は特別美人とも言えない容姿です。友好関係は狭いですし・・・・・・。私と結婚したとしても、あなたには損しかないですよ」
「・・・・・・そのように言ってくださるということは、あなたは私との婚約話に前向きであると思ってもよろしいのでしょうか?」
「え?」
「ふふ、その表情もとっても可愛い。今すぐ食べてしまいたいぐらいです」
セイントル様は熱っぽい瞳で私を見ています。な、なんか色気が、フェロモンが出てませんか? 私の頭が警戒音をビービーと慣らしています。
「そろそろ時間ですね。部屋に戻りましょうか」
「は、はい」
セイントル様はにこりと笑って私をエスコートしてくれました。さっきのは私の見間違いでしょうか?
「次会うときは婚約者ですね」
そう言って上機嫌に笑うセイントル様に私はあいまいな返事しか返せませんでした。
かくして、私とセイントル様の婚約は無事結ばれ、私たちは婚約者となりました。セイントル様と婚約したことで、何かやっかみを受けるかと思いましたが、意外にもそういったことはあまり起きませんでした。他のご令嬢たちに囲まれていじめられていても、どこからともなくセイントル様か私の友人が駆けつけてくれるので、何とかなっています。
最近はセイントル様に愛称で呼んでほしいと言われるようになり、私はテオ様と呼んでいます。テオ様は私のことをティアと呼んでいます。公の場以外ではお互いに砕けた態度で接しています。最近は、テオ様の一人称が俺であると初めて知りました。順調に仲良くなってきていると思っていたのですが・・・・・・ある日、校舎裏に無理やり連れてこられました。そこにはたくさんの令嬢がいました。恐らく、テオ様のことが好きな人たちでしょう。これで5回目とはいえ、慣れないものです。これが魔物だったら喜んで突撃するのですが、人相手だと恐怖して、足がすくんでしまうのです。私は根が引きこもりなので社交にも必要最低限以外出ませんし、知り合い以外の方には人見知りが発揮されるので、今すぐ何かに隠れたい気分です。それにしても、今回はずいぶんと人数が多いですね。前回までは5人ほどしかいないのに、今回は20人はいるのではないでしょうか。
「あなた、テオドールさまと婚約してから調子に乗っているでしょう」
「本人に許可を得ていないのに名前呼びをしてはいけませんよ?」
「はぁ? あなた、わたくしに口答えしてもいいと思ってるの?」
「あの、口答えとかじゃなくて、マナーなのですが・・・・・・」
「うるさいわね。魔法科主席とかいって、ほんとは大したことないんじゃないの?」
「そーよ、そーよ」
「どうせ、テオドールさまのことだって親に頼んで、無理やり婚約者になったのかもしれないわ」
「あら、嫌だ。なんてあさましいのかしら」
「そうだわ、皆さん。私たちの手で、この子にふさわしい格好をさせてあげましょう」
そう言って、一人の女子生徒がハサミを取り出した。
「まあ、いい考えですわ」
「わたくしも、いいと思いますわ」
事前に打ち合わされていたのでしょう。何人かの女子生徒が数人がかりで私を地面に押さえつけ、鋏を持った女子生徒が私の制服を切り刻み始めました。穴や切込みをつけられて下着が見えてしまいます。しかも彼女たちはその下着も切り始めました。口はふさがれて、言葉を発することができません。時々水をかけられて全身びしょびしょです。私はあくまでも魔法特化で身体能力に秀でているわけではありません。護身術は習っていますが、数で押されたらかないません。それに、学園内で授業以外の時間に魔法を使うことは禁止されています。もう、詰んでいるとしか言いようがありません。誰かの助けを待つしかありません。
「おほほほほほ、いい気味ですわ」
「なんてみすぼらしい格好ですこと」
キッと彼女たちを睨むと、彼女たちはわざとらしく悲鳴を上げて私から離れました。
「まあ、なんて恐ろしい表情ですこと。皆さん見ましたか?」
「ええ、見ましたわ」
「ついに本性を現しましたね」
「まるで獣のようでしたわね」
彼女たちが次々と私を罵倒してくる。・・・・・・彼女たちは私の家の爵位を忘れたのでしょうか。彼女たちよりも上の立場なのに、こんなことをしては本当に取り返しのつかないことになってしまうのに・・・・・・。彼女たちの心ない言葉に、私の心は傷付けられました。こういう時は、他のことを考えていましょう。ああ、寒い。まだ暑い時期とはいえ、だんだんと涼しい気候になってきています。真夏でもないのにこんなにびしょ濡れの格好でいたら風邪をひいてしまいます。明日は、学校を休むことになるのでしょうか。ぼーっとそんなことを考えていると、その場に男性の声が響きました。
「私の婚約者に、何をしている」
「て、テオドールさま!?」
「こ、これは、その・・・・・・」
「もう一度聞こうか。私の婚約者に、何をしている!!」
「ひっ!」
その声の持ち主の剣幕に圧倒された令嬢たちはガクガクと震えながら私から離れました。
「ティア!! っ、これは・・・・・・すまない、本当にすまなかった、ティア」
「てお、さま」
「そうだよ、安心して今は眠っていて」
そう言ってテオ様は、私に上着をかけてぎゅっと抱きしめてくれました。トクン、トクンと聞こえてくる心臓の音に安心して、私は意識を手放しました。
気が付くと、私は自室のベッドに寝かされていました。服も誰かが着替えさせてくれたのでしょう。ベッドの隣に置いてある椅子には、テオ様が腰かけていました。テオ様は椅子に座りながらも器用に眠っていました。私はベッドから出ると、テオ様に近づきテオ様の顔に触れてみました。
「テオ様・・・・・・」
嫌味なくらい綺麗な肌です。頬が腫れているような気がしますが、誰かに殴られたのでしょうか。以前、肌の手入れでもしているのかと聞いたときしてないと答えられたことを思い出しました。頬のけがは、治癒魔法をかけて治しておきました。髪に触れてみると、さらさらとした感触が返ってきました。これは癖になりそうです。ふと、テオ様の唇に目が行きました。薄く、形の良い唇を指でそっとなぞってみました。あ、意外と柔らかい。
・・・・・・こんなことをされても、起きないのですか。さっきから結構触りまくってるのに、テオ様は起きません。もしかしたら寝たふりでもしているのでしょうか?
「早く起きないと、いたずらしちゃいますよ」
そう囁いても、テオドールさまは起きません。ならば続けましょう。私よりも大きな手を、腕を、少し細めの首を、と手でなぞっていきます。ちょっと考えて、彼がつけているタイを外し、シャツのボタンを外してみました。そして、彼の心臓付近に手を当ててみました。ドクドクと心臓が動いているのが分かります。少し早いような気が・・・・・・気のせいでしょうか。
ふと、学園で囲まれていた時のことを思い出しました。あの時、テオ様が助けてくれたんですよね。
「テオ様、助けてくれてありがとうございました」
「助けられなかったよ」
テオ様がゆっくりと目を開きながらそう呟いた。そして自嘲気味に笑うと、私の手に自身の手を重ねた。
「俺が駆けつけた時には、ティアはボロボロになってた・・・・・・もっと、早く駆けつけていれば・・・・・・」
「テオ様は生徒会に入っているじゃないですか。生徒会のお仕事が長引いていたんでしょう?」
「それでも、仕事をさっさと抜けていれば・・・・・・」
そう言ってしょんぼりするテオ様。不覚にもかわいいと思ってしまいました。
「好きな子を、こんな目に合わせたかったわけじゃないのに・・・・・・」
んん? 今・・・・・・。
「テオ様は、私のことが好きなんですか?」
「え? い、今の声に・・・・・・」
「ばっちり聞こえましたが」
「うぅ・・・・・・」
テオ様は耳まで赤くして、目をさまよわせています。いまだにテオ様の胸においていた手からは、先程よりも早くなった鼓動が伝わってきました。
「あら、さらに早くなったわ」
「ちょ、ティア。その手を外して・・・・・・」
「嫌です。それで、テオ様? テオ様は私のことが本当に好きなのですか?」
「っ・・・・・・ああ、そうだよ! 好きだよ! 誰にも会わせないようにどこかに監禁したいくらい好きだよ!!」
やけになったように大きな声でそう言い切られました。というか今、さらっとやばいことを言いませんでしたか。
「ほんとはもっと時間をかけて、ティアを落としてから言おうと思ってたのに・・・・・・」
「私は砦ではありませんが?」
「言葉の綾だよ!」
冗談めかしてそう言うと、テオ様は若干切れ気味にそう返してきました。しかし、テオ様は意外と保守的というか、なんというか。真っ向からアプローチして私に愛を乞うのではなく、あくまでも落とそうとしてくるところがテオ様っぽいですね。
「私は、情熱的に迫られるほうが好みなのですが・・・・・・」
「うん、知ってるよ。でも、俺はヘタレらしいからね。正面から突撃してバッサリ振られたら立ち直れなくなるからさ・・・・・・」
「そもそも、何故私のことが好きなのですか?」
「え?」
私がそう聞くと、テオ様は少し迷いながら話し始めました。
「学園で君が君の友人と話しているところを見て、その時の君の笑顔が印象に残ったのがきっかけ。それから、君のことを見ているうちに君にどんどん惹かれていって・・・・・・」
「テオ様、心拍数が早くなってますよ」
「言わないで! 今、ほんとやばいからっ」
「しかし、まさか見られていたとは・・・・・・」
まったく気づきませんでした。いったいどこから見ていたのでしょう。顔を赤くして目を潤ませながら私を見るテオ様に、きゅんとしました。
「私もテオ様のことが好きですよ」
「え?」
にっこりと笑いながらそう言うと、テオ様は驚き、固まってしまいました。
「さて、家族にも顔を見せてきましょう」
「も、もう一回、もう一回言って! あ、ティア、何か羽織ってから外に出て!!」
私はテオ様から離れて部屋を出ようとすると、テオ様は慌てて立ち上がり、すぐそこにかかっていた上着を持ってきて私に着せてくれました。
「ティアはホントに面倒くさがりだな」
・・・・・・そういうところですよ。私のだめなところを見ても好きでいてくれるあなたに、私はいつの間にか惹かれしまっていたようです。
「好きですよ、テオ様」
「っ!?」
「さあ、行きましょうか。まずはお兄様たちのところに行きましょう」
「もうちょっと余韻に浸らせてくれ・・・・・・」
あの事件からはや1か月。私の周りは平和になりました。私に危害を加えてきたあの女子生徒たちのことですが、私の家族とテオ様が裏から手をまわして彼女たちの実家に今回の件をつたえて脅したそうです。その結果、彼女たちは自主退学をし、領地に引きこもることとなりました。今後、彼女たちは社交の場に出れなくなるだろうとテオ様は言っていました。皆さんは罰がぬるいと言っていましたが、私が『彼女たちはまだほかにも使い道があるので』というと、皆さん微妙な顔で黙ってしまいました。まあ、これは建前で、本当は表立たせて面倒なことに巻き込まれたくないからなのですが。
他にも多少、私とテオ様の婚約について口を出してくる方もいらっしゃったのですが、いつの間にかそういう方もいなくなり、邪魔者がいなくなった今では、テオ様は学園でも私にデレデレとしています。今まで学園ではそんなことをしなかったのですが、思いが通じ合ったこともあったのでしょう。テオ様は牽制だと言って時間が許す限り私と一緒にいようとします。そんなテオ様に皆驚き、口をそろえて『あの氷の貴公子の氷が解けた』と言いました。まあ、この態度は私に対してのみなので、他の方には今までと変わりない対応をされています。
「ティア、一緒に昼食を食べないか?」
「あら、これはこれはセイントル様。一足遅かったですわね。ティアラ様はわたくしたちと昼食を共にしてくれるそうですわ」
「へぇ・・・・・・ティア、ちなみにだけど、今日俺が作ってきた弁当はティアの好きなリンゴ入りポテトサラダなんだが・・・・・・」
「リンゴ入りのポテトサラダ!!」
「まあ!卑怯な手段を使わないでくださいまし!! それより、ティアラ様。わたくしのお弁当にはグラタンを入れてきたのです。冷めてもおいしいように、工夫してみましたのよ!」
「あ、あの、わたしは焼きおにぎりを作ってみたのですが」
「焼きおにぎり!! ミア様、焼きおにぎりを作ったのですか!?」
「は、はい!! 以前、ティアラ様が和食が好きだとおっしゃっていたので・・・・・・まだ作り始めたばかりなので味は良くないかもしれませんが・・・・・・」
「ミア様! 私、ミア様の焼きおにぎりを食べてみたいわ!!」
「あ、ありがとうございますっ! たくさん作ってきたので、遠慮せずに食べてください」
「ミア様、私の癒し!!」
「きゃうっ」
「・・・・・・和食、盲点でしたわ」
「そっちは作ったことがなかったな・・・・・・今度は和食を極めてみるか」
「ん~!! ミア様の焼きおにぎりおいしいです!」
「うふふ、ありがとうございます」
大好きな家族がいて、仲の良い友達がいて、そして・・・・・・最愛の婚約者様がいる。
ハイスペックでスパダリで、ちょっとヤンデレっぽい私の婚約者様。私にはもったいないほどいい人で、彼が婚約者になったときは戸惑いでいっぱいだったけれど・・・・・・いつのまにか大好きになってしまいました。
あなたのことをこんなに好きにさせたんだから、責任取ってくださいね、テオ様?
「大好きですよ、テオ様」
「え?」
「ふわぁ! 愛の告白ですぅ」
「ティアラ様! 私はどうですか!?」
「ふふふ」
「っ!! 不意打ちとか、卑怯すぎる・・・・・・」
私、とっても幸せです!!
~登場人物紹介~
*ティアラール・エア・クランドール
本作の主人公。異世界転生者。自分はかなりの美人だが、周りの顔面偏差値が高いので平凡な顔立ちだと思い込んでいる。学園の魔法科の首席で、実は魔法の才能はテオドールを超えるため、魔法のみで戦った場合、テオドールが負けるくらい強い。面倒くさがり屋で、周りからは自分がついてないとだめだと思われている。自分に向けられた気持ちに鈍感。ちょっと、積極的な面もある。隠れ魔法オタク。
*テオドール・ディル・セイントル
ティアラールの婚約者になった人。ハイスペックでスパダリなイケメン。少しヤンデレ。最近ストーカーになってきている。ある意味危険な人。ティアラールのことが大好きすぎる。ガチ恋。実は、ティアラールが初恋。恋愛方面ではヘタレ。
*シャランラ・フェン・アルドフェラン
ティアラールの友人。グラタンを作ってきた子。ティアラールのことが大好き。公爵家の令嬢でテオドールとは幼馴染の関係であるが、テオドールのことを嫌っている。たぶん、同族嫌悪。彼女もテオドールに負けず劣らずハイスペック。
*ミアリア・リン・クレイドル
ティアラールの友人。焼きおにぎりを作ってきた子。ティアラールのことが大好き。ティアラールの前ではか弱い令嬢を演じているが、本当は腹黒く、ティアラールにあだなす者死すべしな苛烈な面も持ち合わせる。実は、王女様。
*お兄様たち
ティアラールの兄たち。その人数は6人。全員シスコンで、末の妹であるティアラールに甘い。長男から四男まではすでに結婚済み。他二人にも婚約者がいる。割とガチなシスコンなので、ティアラールに手を出すとやばい目に合う。ティアラールの知らないところでは、テオドールと戦っている。ちなみに、テオドールのことを殴ったのは長男。
*お義姉様たち
ティアラールの兄たちの奥さん、もしくは婚約者。ティアラールの可愛さを語る兄たちに深く共感し、現在ティアラールloveなお義姉さん。自分の旦那(婚約者)とティアラールどっちかを選べと言われたら、迷わずティアラールを選ぶ。
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気が向いたら、続きを書くかもしれません。