8話 鍛冶師と初クエスト!
遅れてすみません!
「そういえば僕、武器持ってないんだけど?」
「そういえば、そうですね………」
ギルドカードを受け取った帰り、とあることに気づいた。ギルドに登録したって事は、これから魔物を倒していく事になる。そこで大切になってくるのが“武器”だ。武器がなくては、まともに戦えないし、そもそも自衛手段がなくて、すぐ殺られる。だから、一刻も早く欲しいんだけど……
「僕、金持ってないんだけど……」
「大丈夫ですよ!少し当てがありますから!」
ミルカは、自信満々に胸を張る。やめて!2つのメロンが……!メロンが……!!そんな気が気でない僕の心情等知るよしもないミルカは、近くにあった案内板を眺め、何かを探し始める。
「えっと……あっ!ありました!!」
どうやら目的のものが見つかったらしく、案内板を指差している。僕は、ミルカが指差している場所をみると、『鍛冶屋』と書かれた場所があった。
「鍛冶屋?」
「はい!ここの鍛冶屋の人とは少し縁があり、武器が欲しい時いつでも来な!って言っていました!」
確かに鍛冶屋ならブックか何か打ってくれそうだけど……何か妙な胸騒ぎがする。ここに行くと、とてつもなく面倒ごとが起きるような……そんな胸騒ぎが……。
「なぁミルカ、ここに行くのはーーって、あれ?ミルカ?」
鍛冶屋に行く事を止めようとミルカに声をかけようとしたら、ミルカがいなくなってしまった。しかし、少し遠いところで「尚人さーん」と自分を呼ぶ声が聞こえ、ほっと安心する。なるほど、今の気持ちがお父さんの気持ちか……。すみません調子こきました。
「ここが知り合いの鍛冶師の店?」
「はい!」
ミルカが立っていた場所に移動すると、どこか年季の入った工房があった。中をみると、剣などを作るための道具などが壁に立てかけられていて、いかにも凄腕が仕事していそうな場所だ。
「すみませーん!誰かいらっしゃいませんかー!」
ミルカは工房の扉を開け、声をかける。すると、奥のほうから綺麗な女性が出てきた。手足は細く、まるでモデルのような体型だ。こんな人が鍛冶師なんて……と少し驚いてしまった。
「なんだい、ミルカ嬢かい。ところで、ミルカ嬢と一緒にいる別嬪さん誰だい?」
「彼女はナオンです。私の友人でして……」
別嬪さんか……。この国では。その方が都合はいいけど、男身の自分としては複雑な気分を感じざるを得ない。反論できない焦ったさを感じていると、鍛冶師の女性は僕の顔を覗き込んできた。いきなりの事だったから、ドキッとしてしまう。ミルカも、この状況を見て、口をパクパクさせている。
(近い近い近い……!)
すぐ終わるかと思ったが、中々離れてくれない。それどころか、顔がどんどん近くなってきてる。自分の顔が熱くなるのを感じながら、目を逸らす。
「へぇ〜……、この街にまだこんな可愛い子が残っていたなんてね……」
それは、どこか含みのある言い方だった。妖しい目で僕を見つめて、時折舌をペロッとする行為が、僕の心臓を早くする。何が言いたいかというと、この人まじでエロい。
「きょっ!今日は、シネスに用があってきたの!」
「用事……?」
ミルカは話の流れを切るように、本来ここにきた目的を話す。話している間、ふむふむと真剣に聞いていたり、たまにこちらを見たりしていた。何故かミルカも。二人してなんぞや?
数十分後、どうやら話がまとまったようで、ミルカがこちらにタタタッと小走りしてきた。やめなさい、小走りすると、メロンが揺れて、僕の視界も揺れてしまいます。そんな脳内格闘していると、ミルカが僕の顔を覗き込んできた。それに少しドキッとした。
「シネスの頼みごとを聞いてくれれば、武器を作ってくれるって!」
「頼みごと……?」
「うん!どうやら、この国の近くに鉱石が埋まっているから、それを採ってきて欲しいって」
見ると、ミルカの手には、採掘用のピッケルがあった。話が早い事……。なんか、どこぞのRPGゲームみたいな展開になってきた。でも、ゲームの中に入ったみたいで、結構僕は楽しんでいたりする。
「分かった。で、何個採ってくればいいの?」
初のクエスト?だ。無意識に気合が入る。ミルカはシネスが言ったことを思い出しているのか、口に指を当て思い出している。なんという無意識あざとさなんだ……!
「確か……」
ようやく思い出したようで口に出す。まぁ、せいぜい10〜20個くらいだろう。さっさと採って、武器を作ってーー
「”たくさん“だそうです!」
この瞬間、初クエストが上級者並みのめんどくさいクエストだと知った。
◇ ◇ ◇
僕とミルカは、鉱石を採るために、国付近の高山に来ている。ここは比較的魔物が少ないため、鍛冶師の人たちが度々訪れているらしい。そして、僕達はシネスの依頼でここに来ているわけだが……
「籠、デカすぎない?」
両腕で抱えきれないほどの大きな籠を持たされている。あの女……!こんな労力使うなら、そこら辺の木の棒で武器を作った方がマシだった……!などと考えていると、やけに楽しそうにしているミルカが気になった。
「何で、そんな楽しそうなんだ?」
すると、ミルカははにかみ笑いながらこう言った。
「尚人さんと一緒にクエストできるのが、嬉しくて!」
この瞬間、僕は内心、引くほど悶えた。
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