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4話 絶対絶命と自己紹介

僕は今、人生最大のピンチに立たされている。


(ヤバイヤバイヤバイ……!!)


岩陰に隠れたのは良いが、温泉に入ってきた女性達がこちらに向かってきている。見つかって、男とバレたら即処刑。バレないようにするためにも、もはや逃げ道など存在しない。うん。絶望的。


(短い人生だった……)


ふと自分の人生を振り返る。いろいろな事があったな……。ここにくる前は男に告白されたっけ……。女の子に間違われたり、何故か女子に疎まれたり……。ここに来たら、男とバレたら即処刑とかモースレンに欲情されて……挙げ句の果てに、銭湯に入ったら女湯しかなく絶対絶命……。


僕、ろくな目にあってなくね?今いろいろ思い出したけど、ろくな思い出が無かった。何で男の僕が、女子に疎まれないといけないんだよ。僕は無関係だろ。


『あれ?誰かいるよ〜?』

『マジで〜?』

「うぐっ……!」


そんな事を考えていたら、すぐ近くにで女性の声がして背筋がビクンッと反射的に伸び、目を瞑る。いよいよ本当にヤバイ。流石にこんなに露出していたら、僕が男だという事を隠し通せる訳がーー


『女の子がいる〜』

『へぇ〜、こんな時間に珍しいな』

「…………へ?」


僕の前からはそんな会話が聞こえる。あれ?これって勘違いしてくれている?そう思うと、ホッとして目を開ける。しかし、それが間違いだった。


「ぶっ!?」

『きゃー!!は、鼻血が!!』

『のぼせたのか!?と、とにかく今すぐ涼しいところに!!』


僕が最後に見たのは、ミルカと同等か、それ以上の体だった。その二人は、僕と同じようにタオルを巻いていたが、隠せないほどの大きさだった。


(こんなの……耐えられる訳ない……)


僕は最後にそう思い、静かに意識を手放した。


◇ ◇ ◇


「ん〜……?」


まだ朦朧とする視界をうっすら開けると、そこにはミルカが心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。どうやら僕は、気を失っていたようだ。体を起こそうとしたらミルカに、「まだ横になってないとダメですよ」と止められ、再びゆっくり横になる。


「まさか、興奮してのぼせるとは……」

「うっ……」


今思い出すと、とてもはずかしい。少しチラッと見ただけなのに、みっともなく鼻血を出して運ばれたのだから。一刻も早く消したい思い出を振り払うために、他の事に意識を移す。今僕は、脱衣所にあったベンチに横たわり、僕の体に服が被せてあった。


「感謝してくださいよね〜、大変だったのですよ?貴方が男とバレないように色々誤魔化したりしたのですから……」


話によると、僕が倒れた後に女性に運び込まれたらしい。しかし、僕を運んでくれた女の人は、僕の体の違和感を感じたらしい。幸い、男の証は見られなかったが、誤魔化すのに苦労したらしい。


「生まれつき、体が筋肉質って答えたら納得してくれましたよ」


ミルカは「もぅ……」と少し唇を尖らせた。その様子に少しクスリと笑ってしまった。ミルカもそれに気づいて、「何笑ってるんですかー!!」と顔を赤くさせた。


「いや、なんか……色々とありがとな」


僕はニコッと笑うと、ミルカの顔は、先ほどよりも一段と赤くなった。どうしたんだろう?


「さっきのは……ずるいです……」

「ん?何か言った?」

「何でもないですー!!」


小声で聞こえづらかったから聞き返しただけなのに、一体どうしたのだろう?何が何だか分からず僕の頭には?が飛び回っていた。


「そういえば、貴方の名前聞いてませんでしたよね?誤魔化す時に苦労したんですよ〜」

「確かに言ってなかったな」


すっかり自己紹介をするのを忘れていた。基本的な礼儀だというのに。


「じゃ、改めて……僕は新海 尚人。よろしくな」

「うんっ!よろしくお願いします!」


と、そんな会話を開いているとーー


「あっ!目が覚めたのね!」

「起きたか?大丈夫か〜?」


向こうから片手に牛乳を持った女性が現れた。先ほど僕が倒れる原因になった女性二人組だ。今は軽装を身につけており、まるで“冒険者”みたいな姿だった。軽装に包まれているにもかかわらず、体のラインがしっかり出ているな……など見惚れていたら、ミルカに横腹を強くつねられた。何で??


「どこも悪くない?痛いところとかある?」

「大丈夫です」


髪が淡いピンクの、おっとりした雰囲気の女性が僕の心配をしてくれた。こんなお姉さんいたら最高だろうな……などと思ってしまった。すると、僕に勢いよく肩に腕を回された。


「元気になったか!よかったよかった!」


肩に腕を回して来た人をみると、白髪の、褐色の肌の女性がいた。活発そうなこの女性gq、僕をここに連れてきてくれたらしい。


「私はミスカ・シュリ=ルミ。そしてこっちの元気なのがアルシナ・サニン=スラミスよ。私達の事は、ルミとスラミスと呼んでね」

「僕はしんかーーあっ」


僕は自分の名前を言おうとして、少し躊躇う。僕の名前は、いかにも男の名前だ。それに、この世界では違う形で名前が付いている。このままでは僕が転移者だとバレてしまう。出来れば、この事を知っているのは少ない人であって欲しいし。ミルカも同じ事を思っているのか、こちらをチラチラと見ている。よし、ここはーー


「僕はシンカ・カイ=ナオン。ナオンと呼んでね」


咄嗟に考えた名前を口にする。うん、我ながら良いネーミングセンスだ。


「私はルース・シャリディア=ミルカです。よろしくお願いします」


そんなこんなで全員の自己紹介が終わった。






お読みくださって、ありがとうございました!

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