12話 初クエストとお願い
遅れてすみません!更新速度は、週一になるかもです……。
初クエスト【ポイズンウルフの牙5本】
「グルルッ……」
今僕らは、ギルドで受けたクエストを行なっている。正式にクエストを受けたのは、これがはじめてだから初クエストだ。
「初クエストで、このモンスターはレベル高すぎない……?」
結論から言うと、ポイズンウルフに睨まれて、腰が抜けています。一応、シネスからもらった短剣を構えているが、扱いなど分かるはずもなく、ただただ前に突き出している状況だ。
「待ってください!もう少しで終わります!」
「早くしてくれ……!」
何故、僕がポイズンウルフと対峙しているかと言うと、ミルカに頼まれたからだ。私に任せてください!と胸を張り、近くで何やらゴソゴソとあさり始めた。
「グルルッ……!」
「ひぃ……!」
ポイズンウルフは、もう既に戦闘のスイッチが入っているらしく、いつ飛びかかって来ても、おかしくない状況だ。それに、ポイズンウルフの牙は、死には至らしめないものの、体の神経を麻痺させるぐらいの強さはあるらしい。
「出来た……!尚人さん!こっちです!」
「分かった!」
ミルカが手招いている方へ急いで逃げる。ポイズンウルフも、僕の後ろについて来るかのように、こちらへ走って来た。そして、僕達の身長の何倍か高く飛び跳ね、僕達に襲いかかって来た。僕は反射的に後ろに引き下がる。
「今だ!」
「キャンッ……!?」
しかし、目の前の地面を後ろ足で踏んだ直後、ポイズンウルフが甲高い悲鳴を立てて、動かなくなった。どうしたのかと困惑していると、ミルカがフフンとドヤ顔で説明し始めた。
「ここに、麻痺の魔法を付与した罠を設置したのです。その発動条件を、この杖に魔力を流した直後に設定して、尚人さんも一緒に痺れないようにしたんです」
「ほぇ〜……もうそんなに使いこなしたのか……」
何やら杖をもらった日から、外で何かをしていると思ったら、魔法の特訓だったのか。ミルカは努力家だから、こうなるのも必然だったのかもしれない。
「僕も特訓しないとな〜……」
武器をもらって一週間、武器の感覚が掴めるまでクエストはやめておこうとなり、このクエストを受けるまで、ひたすら武器に慣れようとしたが、ミルカは特訓までしてたのか。すごいな……。
「さて、早くポイズンウルフの牙を剥ぎ取りますよ」
「そうだな」
オークの時同様に、狩ったモンスターの一部を剥ぎ取る。これが、討伐の証拠になるからだ。それも、大きな牙の右の部分だけという条件だから、ズルをすることもできない。上手く出来ていると思う。
「あと何本だ?」
「えっと……あと2本ですね」
「うっへ〜……あと二体も倒さないといけないの……?」
普通の冒険者ならどうと言う事では無いらしいが、戦闘経験の無い僕にとっては、とても厳しい事だった。
「もっと、剣術上手くなれば、楽になるのかなぁ〜……」
しかし、僕は剣術を教えてくれそうな場所を知らない。いや、どこかにはあるらしいが、ついて行く自信がない。ただでさえ意志の弱い僕だ。数日持つかどうかも怪しい。
「いや、ちょっと待てよ……」
僕には……いや、僕達にはベテランの冒険者がいることに気づいた。あの人達なら、僕達を鍛えてくれそうだ。
「あの……何か考え事をしている時に悪いのですが……来てますよ?」
「えっ?うわぁぁぁぁ!?」
気づいたら、二匹に挟み撃ちにされていた。どう考えても、今の僕に勝ち目がない。ミルカの罠も、さっきのポイズンウルフに使っちゃったから作動しないだろう。万事休すか……。
ザシュッ!
「キャンっ!?」
しかし、そんな思いは、ポイズンウルフに目掛けて飛んで来たナイフによって失くなった。ナイフは、目標を少しも外しておらず、的確に相手の急所に突き刺さっている。ナイフが飛んで来た方角を見てみると、そこには見知った顔が2つあった。
「ルミさんにスミラスさん……!?」
前に、銭湯で出会ったルミとスミラスが立っていた。ルミは穏やかな笑みでこちらに手を振っており、スミラスは笑みを浮かべた顔で腰に手を当てている。
「久しぶり……って言うぐらい、期間は空いてないか」
ルミはそう言って苦笑する。スミラスは、ポイズンウルフに刺さっているナイフを取り、少し血で汚れているタオルで拭いていた。僕達は、助けてくれたお礼を言い、倒して貰ったポイズンウルフの牙を剥ぎ取って、その場を後にした。
◇ ◇ ◇
「へぇ……、ミルカちゃん達も武器を持つようになったんだ」
「にしては、扱いが下手だったね」
「うっ……」
ルミが僕達の話に相槌してくれて、逆にスミラスが僕達を茶化してくる。正論だからぐぅの音も出ない……。
「こらっ!そんな事言っちゃダメでしょ!」
「じゃあルミは、上手く武器を扱っているようにみえたの?」
「……………うん」
「何だよその間は……」
ルミが思いっきり目を逸らして答えた。これは、絶対上手いとは思っていない返事だ。ミルカもその事に気づいたのか、少ししゅんとしていた。それを見たルミ達が、全力で慰めている。あれ?僕は?
「……あの、お二人にお願いがあるんですけど……」
「ん?何だ?」
慰めている手を止めて、僕に向き直って聞いてくれる。この人達は、本当に優しいな……としみじみ思った。そして僕は、そんな二人にあるお願いをした。
「僕達に……戦い方を教えてください!」
「!?」
この日から、僕とミルカの本格的な特訓が始まった。
お読みくださって、ありがとうございます!