11話 初めての武器
「ふぅ……間に合いました……」
間一髪のところで、僕はミルカに助けられた。ミルカに殺されたオークは、僕達の目の前で横たわり、ピクリともしない。まぁ、当然か。ようやく生きた心地がしてきた。ミルカも同じことを思ったのか、ふぅ……と胸をなでおろしていた。ただ鉱石を採掘しにきただけなのに、酷い目にあった……。
「さて、あと少しですし、頑張りましょう!」
「そうだな……」
正直、今すぐにでも帰って寝たいが、この雰囲気で帰りにくい。そこまで僕は空気読めなくはない。まだガキーンっと、音を立てながら、残りの鉱石を採掘した。終わる頃には、手が上手く動かなかった。
ーーーーー
「そういえば、このオークどうする?」
「そうですね……」
先程から、僕達の近くで横たわっているオークの始末をどうするか相談する。ずっとここに置いておくのも迷惑だし、かといって僕には始末できる場所なんて思いつかない。もはや頼りは、ミルカだけだった。
「討伐した証拠を持ち帰れば、報酬が貰えるかもしれません」
「そんな事できるのか?」
「はい。何度かギルドに行った時、報酬をもらっている人を見ましたから」
僕達はとりあえず、オークの首を切断し持ち帰る事にした。これが証拠になるらしい。採掘した鉱石とオークの首を籠に入れ、町に戻った。
◇ ◇ ◇
「はい、オークの討伐。確かに確認致しました」
ギルドに向かい、受付のお姉さんに依頼書を見ると、【鉱山のオーク討伐】という依頼がきていたそうだ。早く言って欲しかった……。僕達は、その依頼をこなしたらしく、1500Gの報酬をもらうことが出来た。これで一文無し脱出。
「さて、工房に戻るか」
元々の依頼があった工房の所へ戻る事にする。ここまでして取った鉱石だ。報酬を貰わないと割に合わない。鉱石が入っている籠をかかえながら、工房に向かって、足を進めた。
「ただいま〜……」
「今、帰りました〜……」
少し歩き、無事工房に帰ることができた。ててか、この鉱石、結構重かったんだけど……。採掘だけかと思ったら、いろいろあって、どっと疲れた……。
「お帰り。遅かったね?」
工房の奥から腕を組みながらシネスが出てきた。シネスはそのまま冷蔵庫に近づき、飲み物を取り出す。それを、コップに注ぎ、僕達に差し出した。
「ありがとう……」
「「ありがとうございます……」
「相当お疲れのようだね」
相当疲れているように見えたのか、シネスが苦笑しながら僕達に労わりの言葉をかける。その態度はありがたいが、鉱山に行かせたのはシネスだという事を、忘れないでほしい。
「これ、頼まれた鉱石ね」
籠いっぱいに入っている鉱石をシネスに受け渡す。しかし、シネスはそれを見て目を丸くしていた。どうしたの?
「よくこんなに採ってきたね……」
シネスも予想外だったのか、大量の鉱石を見て、クスクスッと笑っていた。こっちからしたら、笑い事じゃないんだけど……。そんな僕の気持ちなど知らないミルカは、シネス同様クスクスッと笑っていた。可愛い。
「あ、ごめんなさい」
「あ、いや、別にいいよ」
僕が自分の事を見ていた事に気づいたミルカが、顔を真っ赤にして顔を伏せる。そんな少しのしぐさも僕の心をドギマギさせる。そんな様子を見ていたシネスが、急にニヤニヤし始めた。
「あらあらあら〜?」
このノリうぜぇ……。あからさまに嫌な顔をする僕を気にする様子もなく、僕とミルカを交互に見やる。ミルカはきょとんとしているが、僕にはシネスが何を考えているのか、だいたい予想ができた。
「なるほどね〜」
「んんっ!そんなことより早く武器をくれよ!」
誤魔化すように咳払いして、換金を急かす。シネスは「はいは〜い」と軽い調子で集めた鉱石を受け取る。そして、壁に立てかけてあった武器をしばらく眺め、近くにあった剣を手に取る。
「これなんかはどうだい?」
そう言って、シネスは僕に短剣を渡した。柄は燃え上がるような赤色で、剣先は眩くギラギラと光っている。手に持つと、ずしっと重さが伝わり、剣を持っているという実感を与えてくる。
「これが……武器……」
初めての感覚に高揚した。体の奥底からゾクゾクっと、興奮が湧き上がってきた。新しいゲームソフトを買ってもらった時と同じ気持ちだ。ワクワクする。ドキドキする……!ミルカも同様、杖をもらってテンションが上がっている様に見える。
「それがあんたらの初の武器かい?」
僕達の反応を見て、そう判断したらしい。まぁ、事実あってるんだけどね。ミルカもコクコクと頷いて肯定していた。この後、シネスから短剣の鞘と、杖を刺しておく袋を貰い、それぞれ身につけた。
「おぉ〜!!」
やはり男子なら、一度は夢見た剣。何度も鞘から短剣を出し入れしたりして、感動していた。ミルカも、杖を何度も触り、ニヤけていた。
「女なのに、あんたら変わっているね〜」
その言葉に僕達はドキリとした。僕が男だとバレたか……?と思ったが、シネスを見る限り大丈夫そうだ。ホッと胸をなでおろす。僕達は宿に帰ったが、武器を初めて持った興奮が、一日中冷めなかった。
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