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第30話:王の間の惨劇



 魔法船からカレンが飛び降りたのを見て、マリルが直ぐ様、船員に魔法船から自分たちを降ろす様に詰め寄った。

 それに対してこれ以上、王都に近付けない魔法船の船員が提案したのは、ここから出来るだけ低空に魔法船を下降させるので、そのからロープで一人ずつ降りていくというレンジャー部隊ばりの下船の仕方だった。

 それを聞いたときヒイロは耳を疑ったが、マリルはそれを直ぐ様に了承し、あれよあれよという間にその方法での下船の仕方が整えられて、有無も言わさずにヒイロは船員の手によって地上へと下ろされたのであった。


 低空とはいえ魔法船からのバンジージャンプもかくやの下船で、心臓が飛び出るかと思い、胸を押さえるヒイロにマリルは更なる試練を与えるが如く、カレンへと追い付く為に走れと命令を下す。

 もう嫌だと思いながらも走り続けて、ようやく王都へとたどり着いたヒイロの目に入ってきた物は焼けた家々や魔物から逃げ惑う人々だった。

 それを見て、昆虫型の魔物と対峙したヒイロも分かっていた事だがそのわらわらと群がる魔物と襲われる人々にヒイロは喉元までに胃酸が上がって来るような気持ち悪さを覚える。



「鉄鋼原子とやらは群れで行動するのは分かっていたが、この統制の取れた動きはまさにある種の兵士とも言えるな」



 そんなヒイロの背中に背負われた魔剣アイゼルがそんな事を口走る。



「なんだよ、久々に起きたと思ったら魔物の話かよ…」



 そんなアイゼルに、ヒイロは八つ当たりに近い言葉を投げ掛ける。



「いや、主が人の多い所では静かにしていろと言っていたのではないか」



 それに対して、アイゼルはヒイロが命令したことを忠実に守っていただけだと釈明する。



「まぁ、確かにな。それに、黙っていても色々と助けになっていた訳だし、俺が何か言う立場じゃあねぇな」



「ふむ、殊勝だな。確かに、色々と主の為に労を取ったのは確かだからな。ただ、黙って寝た振りをしていたのには他にも理由があった訳なのだが…」



「あ? なんかあったのか?」


「いや、大したことではない」


「あぁ、あれか、魔術学院で魔法剣という体裁を取るために黙ってたって事か…」



「ん、まぁ、その様な物だ」



「ふーん、なるほどな」



 ふと、ヒイロは魔術学院で魔剣であるアイゼルが単なる魔法の剣として扱われていた事に納得がいき。アイゼルも大変な思いをしていたのだなと考えた。



「それにしても機械か…」



 そして、そう納得すると今度は目の前の出来事を心の中でどう処理するかを考え始めた。



「うぐっ、人が…死んでる」



 相も変わらず、わらわらと蠢き回る昆虫型の魔物たち。そして、それに襲われて命を落とした人間の姿をはっきりと目の前にして、ヒイロはこの現状がとてつもなく大きな事件である事に今更ながら気が付いたのであった。



「人死には慣れるしかないであろうな。いまはあの白族の女に言いように扱われているが。主の目的は、旅をして元の世界に帰る事だ。その過程で人死にをまた見ることもあるだろう」



「そういう物か…」



 カレンによって無理矢理に行動を共にさせられていたヒイロだが、いまこの時は、カレンも居らず、マリルも昆虫型の魔物に対して命令を聞く者と聞かない者の選定をしているので、ヒイロの方にまで気が回っていない。



「主、ここが好機ではないか?」



 そして、アイゼルが言う様にこの状況はヒイロにとって絶好の機会であった。



(ここで、素知らぬ振りをして立ち去る事が出来れば、また、自分の為の旅が出来る)


 そう、いまこの時こそ、カレンたちと離れる絶好の機会であるのだ。

 しかし、


「ぎるrprtrsr!!」


「うわぁあ!!? 助けてくれぇ!!」


「いやぁああ!!」


「貴方たち止めなさい!! 私の命令を聞くのです!!」




 いま目の前で起きている惨劇を見て見ぬ振りをして立ち去れる程、ヒイロの心は強くなかった。



「くっ、駄目ですね。興奮している個体が多い。私の命令が届かない」



 また、そんな中で人々を助けようと奮闘するマリルの姿にも、それを見捨ててしまうという行為に心の引っ掛かりを感じて、ヒイロはその場を立ち去れずにいた。



「主? 何を考えている? まさか、この争いに介入しようとでも考えているのか?」



 アイゼルの言葉にヒイロはそうなのだろうかと己の気持ちを確かめる。



「ぎるyrrroovrrp!!」



「いやぁあ!! いやぁあ!!」



「くそぉ、このぉ!! ぐっあっ!?」



「ママァーッ!! ママァーッ!! ウワーーン!!」



 飽きること無く暴れまわる魔物たち。

 そして、そんな魔物たちに、蹂躙される王都の人々。

 その姿に何故だかヒイロの心が無性に締め付けられる。



「マリルさん!!」


「主!?」


「くっ! なんでしょうか? いま、貴方の不平不満を聞いている暇はないのですが?」



 胸が締め付けられる。

 目の前の光景が嫌に気になって、己の視界から消したくなるヒイロはマリルへと語りかける。



「ここにもアンタの言うことを聞く魔物たちが居るんだろう」



「えぇ、居ます。しかし、興奮しているのか、私の命令が届かないので、苦労しているのです」



 マリルは、ヒイロとの問答が己のしようとしていることの妨げにしかならないと思い、少し冷めた目線でヒイロの問いに答える。

 しかし、次にヒイロからもたらされた提案にマリルは目を丸くする事になる。



「要は、貴方に注視させれば奴らは命令を聞くようになるんでしょう?」



「まぁ、そうですね」



「なら、俺がひと当てして、奴等に隙を作ります。そうしたら、命令を聞く者に、命令を聞かない者への攻撃を…奴等の同士討ちを命令して下さい」



 同士討ちのその提案はカレンが魔法船に乗る前にマリルへと告げていた提案でもあった。

 まさか、それを聞いていない筈のヒイロからその提案が出るとは思わずマリルは彼を凝視する。

 更に言えば、カレンたちに対して疎ましく思っているであろうヒイロ自らが手を貸すという提案にも驚いて、マリルは文字通り目を見開いたのであった。



「どうですか? 出来ますか?」



「そうですね、興奮しているとはいえ、私に意識を向けて貰えれば、命令を聞くものは私の言葉に従うでしょう」



「わかりました。じゃあ、それでお願いします。アイゼル!! いくぞ!!」



「くっ、仕方がない。我は主の為に、主の目的の為に成すことを成すまで」



 マリルの確約を聞き、己の作戦に筋が通っているとヒイロは確信し、魔剣アイゼルを手に人々を襲っている魔物たちへと突っ込んでいく。



「はぁああ、でぇえい!!」



「ギカッrprll!?」



「おらぁ!! てめぇら!! こっちを見やがれぇ!!」



「ぎかるrvrlv!?」



「ぎぃらrvvvY!!」



 そうして、魔剣を魔物たちへと向けて、何体もの魔物を斬り上げて、倒れ伏す王都の人々や壊れて瓦礫と化した家々の中を走り回りながら、何度も何度も声を張り上げて、己へと魔物たちの視線を向けさせていく。



「っと、おらぁ!! こっちを見ろぉお!!」



 それから粗方の魔物の視線を集めたヒイロは、マリルの前へと戻って来る。



「マリルさん!!」



「えぇ、上出来です。私の声に従う(みな)の者へ命令を下します!! 人々への攻撃を止めなさい!! また、その事を同じよう仲間に伝達しなさい!! その中で命令に従わない者は、敵として攻撃し、排除するのです!!」



 それから、マリルへと視線を向けて彼女にバトンを渡すとマリルはそれを受け取って心得たと、直ぐ様、最適解な命令を魔物たちへと向けて、下す。


「ぎがrvlvqr」


「きゅーいんrvolov」


「ガッ!? rvoyo!!」


「ぎるvrllv##!! ぎがrrrvvo!!」


「ガガカrvvyy!?」


「ぎりるrvpvyvrp!!」



 すると、その言葉に従う者と従わない者と極端に現れて、その両者がにらみ合い、遂にはお互いに攻撃をし合い、戦い始めたではないか。



「成功だ!!」



「えぇ、そのようです」



 それを見て、ヒイロとマリルは作戦の成功を確信して、声を上げる。

 やった、上手くいったぞ!! と中でもヒイロは己の作戦が上手く運んだ事に満足感を得て、気分を良くする。



「では、参りましょう」



「は?」



 しかし、そんなヒイロの気分なんてどうでもいいようにマリルがヒイロの腕を取り、王都の更なる奥へと誘おうと引っ張り出す。



「ちょっ、何処へ、行こうっていうんですか!?」


 当然、訳がわからないヒイロは抗議の声を上げるがマリルは何を言っているんだと言わんばかりの表情をさせて、



「何処へとは、どういう意味でしょうか? 当然、カレンお嬢様の待つ場所に決まっているではないですか」



 と、言ったのであった。

 それに、いや、行きませんよ? と言葉に出そうとするヒイロだが、意外と力の強いマリルの腕引きに前につんのめりながら、強制的に王都の中を歩き回る事になる。

 そうして、あたふたとしている内に結局、ヒイロはカレンとその周りにいるゴツい男たちとの会合の場へと連れてこられてしまい、あれよあれよと、何故だか、王城にまで行かなければならない事となってしまうのであった。



「マリルはともかく、よくあんたも逃げずに来たわね。誉めて上げるわ」



 王城へ向かう途中で、カレンがヒイロにそんな事を言ってきたが、別に来たくて来た訳じゃないとヒイロは腹の中で舌打ちをする。

 己の優柔不断さと一時の感情で、絶好の機会をふいにした事を今更ながら後悔をしたヒイロなのであった。


 しかし、そんな事とは知らないカレンはヒイロがようやく己の使い魔としての自覚が出てきたのではないかと裏も表も無く喜んでいた。

 それから、マリルが魔法船で自分が言った作戦、魔物たちの同士討ちをさせるという物を成功させた事、それが、まさに最適な場面で行われた事に満足していた。



(いいわ、風が来ているわね。これで、後は王城でアストリナム王を助け出す事に貢献でもすれば、後はもう私の思うがままね)



 カレンの思惑通りに事が進んでいる事に彼女は、本当に満足していた。

 己の力を示し、己のシュフォンベルト家としての立場を示す。

 それが、長年かけて考えて、用意してきたカレンの秘密の計略。

 その為には一度、国か、王の危機を望まなければならないという不徳な考えではあったが、それは、悲願の為には仕方がない事だと割り切って、カレンは王城へと歩みを進めていく。

 だが、



「おばあちゃん、早く!! 逃げないと、魔物が!!」


「あぁ、もうワシは駄目じゃ。ミニスや、もう、ワシの事は放っておいて、お前だけでもお逃げ」


「そんな事は出来ないよ!!」



 だが、いま目の前で起きている光景などを見るとやはり、少し罪悪感という物が彼女の中にも現れてくる。



「ギルド長、彼女たちをハンターたちに護衛させて、避難所へ」



「はっ! おい、お前たち!」



 しかし、こうして、助け出す事が出来た事も事実であり、やはり、カレンは悲願の為ならばと割り切る事にする。

 その様にして、王城への道中で同じように逃げ遅れた王都の民をハンターズギルドのメンバーを使いながら、助けていき、ようやくカレンたちは王城の門の前へとやって来た。



「酷い有り様ね」


「その様で…ぐっ…本当に」



 王城の門の前では数多くの騎士たちが魔物と戦って、息絶えている光景が広がっていた。

 酷い者になれば、皮膚が剥がれ、肉が避けて、骨が見える者まで居る始末だ。

 それが、王城の中に入るにつれてまた凄惨な光景が広がっていき、カレンはそれらをあまり見ない様にしながら、王の間へと向かう。



「ん? これは…」



 すると、部下を全て王都の民を救うために使い、一人だけカレンたちに王城まで着いてきたギルド長が、王の間の前で倒れる騎士たちの違和感に声を上げる。



「どうしたの?」


 それにカレンが反応して、ギルド長へと質問をする。



「ここまでの騎士たちはまさに魔物に殺られたという死体の在り方でした」



 しかし、この王の間で息絶える騎士たちは、魔物による虐殺というより、何か刃物で斬り伏せられた状況での死体であるとギルド長はカレンへと答えを伝える。



「それって、つまり、どういうこと?」



「つまり、これは人間から攻撃を受けた死体なのです。自殺という形ではない。そして、魔物からの攻撃ではないと言うことは…この混乱に乗じて何者かが、この者たちを襲ったという見方が出来るということです」



「……」



 ギルド長の言葉にカレンは眉を潜めて、王の間の扉を見つめる。

 そして、開きっぱなしとなるその扉から王の間へと足を進めると、その光景に絶句した。



「おや? これはこれはカレリーナ姫ではありませんか。これは運がいい」



 そこに居たのは、鉄仮面の男とその男に斬り伏せられた国王直属の親衛隊と国防大臣のベン=カリヤック。

 そして、今にも首を斬り落とされそうなアストリナム王だった。



「怪人ギュソー…」



 カレンはその男に心当たりがあった。

 その男は、あの夜に自分とヒイロを襲った鉄仮面の怪人だった。

 その男が王の間で、虐殺を行っているという状況に一体、何が起こっているのかとカレンは驚愕する。



「ぐっ…止めろ、リューレスト=オルグ…カレリーナには手を出すな…手を出せば、お前は後悔する事になる」



 だが、アストリナム王の言葉にカレンは更なる驚愕を強いられて、目を見開いて、鉄仮面の男、怪人ギュソーを見た。

 何故なら、アストリナム王が言うリューレスト=オルグとはカレンがカレリーナとして名乗って姫をしている時に己を護る親衛隊の隊長の名前だからだ。



「後悔? 何故でしょう? いや、そうやって私の心を乱そうという作戦ですかね」


「違う!! カレリーナは、ぐっ!!?」


「もういいです。貴方は少し眠っていて下さい。優先事項は、まず、カレリーナ姫にありますので…」



 鉄仮面の男、怪人ギュソーがアストリナム王の言葉を否定せずに、彼を気絶させた事でアストリナム王の言葉が真実であることがカレンにも理解出来た。



「何故、私を狙うのかしら?」



 しかし、分からないのは、王より先に狙われる自分の立ち位置。

 この騒動が、アストリナム王国転覆にあるのならば、いまアストリナム王を殺せば、それで事が付く。だが、リューレスト=オルグはそれをせずにあたかもカレンの身柄の方が優先だとその剣をカレンへと向けてきた。



「国を巻き込む…そうまてして、狙われる理由が私にあるとは思わないのだけど?」



 だから、カレンは聞いた。

 あの夜の時もそうだった様に何故に執拗に自分を狙うのか。

 その理由をリューレストに問う。



「それを話して貴女の理解が得られるとは思わないのですがね」



 しかし、リューレストはその理由を話してもカレンの理解が得られるとは思わないと説明をはぐらかせる。



「まぁ、そうよね」



 勿論、そう簡単にリューレストが答えてくれるとはカレンも思っていない様で軽い調子で肩を竦める。



「では、貴女の命を頂きたく思います、カレリーナ姫」



「はっ! 怪人とか訳の分からない物の正体がアンタみたいなただの人間だって判ってるなら、私が負けるわけないのよ」



 肩を竦めたカレンに剣を向けて走ってくるリューレスト。

 だが、怪人ギュソーなんて得たいの知れない者でないただの人間だと知れたカレンにとってそれは驚異には思えず、彼女は魔法杖を彼に向けて、火炎魔法を撃ち放つ。



「ファイヤーショット!!」



「魔法ですか? はぁっ!!」



 ただ、リューレストも彼女の親衛隊長だっただけあり、カレンが魔法を使ってくる事を知っており、その対処に苦慮する様子もなくカレンが放った火球(かきゅう)の魔法をその剣で斬り伏せる。



「はっ! 流石は私の護衛騎士だっただけあるわね! ストーンエッジ!!」 



「ふっ!! これはこれは、お褒めにあずかり…はぁあ!!」



「ちっ! ウィンドカッター!!」



「おっと! これは危ない…」



「くっ!」



 カレンが魔法を放ち、それをリューレストが退け防ぐ。一見、互いに一歩も引かない攻防を繰り広げる二人であるが、この戦い、若干、カレンに不利であった。

 何故なら、カレンが使う下級から中級の魔法のその全てをリューレストが防いでいるからだ。その上で、リューレストは前に出て、その剣の刃がカレンへと届く距離へと近付いて来ているのである。

 そして、その刃が届いた時、カレンにその刃を退ける方法は無い。

 故に、その前にカレンはリューレストを魔法で仕留めなければならないのだが、先に述べた様にリューレストにカレンの魔法は退け防がれ、更には前へと踏み出されている。

 その事にカレンも気が付き始めて、徐々に焦りを見せていく。



(くそっ! アトモウスト・バーンを使えば何とかなるかもしれないけど)



 カレンの唯一、上級魔法であるアトモウスト・バーンはその使用魔力の為にかなりの精神力も使う。既に、浮遊大陸アート・ラ・ティハラで一度、使用している為に次に使うとなると上手くいく可能性は五分五分である。

 また、昆虫型の魔物と違って魔法を退け防ぐ事に慣れている様子のリューレストにそれが当たらず、外れた時の事を思えば、一か八かの賭けに出る事は躊躇ためらわられた。



(それになまじ強力な魔法だから、アストリナム王たちを巻き込んでしまう可能性もある)



 諸々の事情でカレンの最大の切り札は封印されて、カレンの本質である器用貧乏とも言える多適性で多面的な魔法攻撃が彼女に取れる唯一の方法だった。



「カレンお嬢様、助太刀致します!! はあっ!!」



「私もおります。微力ながらご助力致す!!」



 そんなカレンだが、頼もしい仲間が居る事に彼女自身気が付いておらず。マリルとギルド長が、前に出て、リューレストへと攻撃を仕掛けた事で漸く、自分一人で戦うことが無い事に彼女は気が付いた。

だが、



「ふっ、甘いですね! ロートルと女子供が私の前に出るべきでは無い!!」 



「な? くあっ!?」



「ぐぉおっ!!?」



 そんな二人を物ともせずに、リューレストは二人を切り伏せてしまう。



「くっ! マリルたちに手を出すな!! フレイムエッジ!!」



 そんな二人のピンチにカレンも魔法で加勢するが、やはり、リューレストに退けられてしまう。



「なんなのよ、アンタ!!」



 まさか、殆ど全ての魔法が効かない相手が居るとは思わず、カレンはリューレストへ癇癪を起こす様に叫ぶ。




「ふふふ、姫が魔法使いというのは分かっておりましたのでね、事前に対策を取らせて頂いているのです」



 そんなカレンの叫ぶに愉悦といった笑いを浮かべて、リューレストが剣をカレンへと走らせる。



「お嬢様!? ぐぅっ!?」



 それに、マリルが間に入って邪魔をしようとするが、リューレストが反転し、マリルのその首筋に回し蹴りを与える。



「くっ! 野郎!!」



 その衝撃でマリルが吹き飛ぶと同時に今度はギルド長がリューレスト目掛けて、飛び付くが、



「だから、甘い!!」



「がっ!? はっぁ……」



 リューレストは冷静にギルド長の差し向けた剣を弾き、逆に己の剣をギルド長のその土手っ腹に突き刺した。



「全く、雑魚は引っ込んで居れば良いというのに」



 そうして、突き刺さった刃を引き抜く為にギルド長を足蹴にして転がすとリューレストは今度こそ、カレンへとその刃を突き立てようと、剣を振るう。



「くっ、ウォーターシールド!!」



「水魔法のシールドですか? しかし、それも想定内!!」



「くあっ!?」



 振るわれた剣を防ごうとカレンが水魔法のシールドを張るが、その刃はそのシールドごと切り裂き、カレンの身体を袈裟斬りに傷付ける。



「かっ、はっ!? ひ、ヒール…」



 なんとか、切り裂かれた瞬間に身を捩って、リューレストから距離を取り、瞬時に回復魔法を己に掛けるカレンだが、その衝撃はさるもので、ヘタリと座り込んでしまう。



(ヤバい…剣で斬られるのがこんなに痛いなんて)



 傷は回復魔法で塞がったが、それを受けた精神的ダーメジは回復魔法では治せない。

 故に、斬られたという事実と痛みがトラウマを助長し、カレンにリューレストへの恐怖を生む。



「回復魔法ですか。やりますね、本気の私の一撃を受けて生きていられるなんて…しかし、次はどうでしょうか?」


「っ、く、来るな!!」



 恐怖がカレンの心と身体に周り、声とその身が震える。

 どうにかして、魔法で牽制しようと魔法杖を握ろうとするが、その手も震えて力が入らず、上手く握り締められない。



(駄目なの!?)



 ここに来て上手くいっていたカレンの計画が瓦解してゆく。

 王の、王都の不幸を憂いず、好機として己の願望を押し通そうとした報いか。

 いま、カレンの命が危険に晒さられる。



「では、カレリーナ姫、貴女の命、私の贄にさせて頂かせて、っ!?」



 だが、それも束の間、リューレストの二度目の斬撃はカレンを襲う事なく、虚空へと弾き飛ばされる。



「また、貴方ですか」



 リューレストの剣を弾き飛ばしたのは、漆黒の魔剣。

 その名をアイゼル。

 持ち主の名前は、カガミ ヒイロという異世界の少年であった。










場面の転換、転換で騒がしいですが、とりあえず、頭の中にある話を進める為に書くだけ書いております。技量不足が露呈していて恥ずかしいですが、どうぞ、お付き合い下さいませ。

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