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第14話:空飛ぶ船に、御用心!?





 空を行く魔法の空船、アルバトロス。

 その船内に作られる食堂とそれに連なる厨房。

 そこにマリルは居た。



「部屋で食べられる軽いもの? 分かった、いま作るから、少し待っててよ」


「分かりました」



 厨房のシェフに部屋で食べられる様に軽食を注文すると、すぐさまシェフから返事が返ってくる。

 そして、それによれば待てとの事であったので、マリルはその場で直立不動を決め込んだ。

 それから、待つ間に少しの思考的活動を開始した。 


 思考する内容は、アストリナム王国七番目の姫カレリーナのこと。

 その性格は気難しく感情の起伏も苛烈。

 また、気まぐれであり、おおよそ一国の姫としては、その気質に足り得ない人物である。

 だが、観察対象としてはこれほど面白い情報が多く得られる存在はいないであろうとマリルは考えている。


 カレリーナ姫とマリルの出会いはカレリーナ姫が、まだ、アストリナム王国の一貴族であるシュフォンベルト家に身を寄せていてカレンという名前だけを名乗っていた頃にまで遡る。

 その出逢いは偶然だった。

 当時、カレンがその持ち前の癇癪を起こしてシュフォンベルトの屋敷から飛び出した挙句に崖の上から落ちそうになっている場面に出食わしたのが、とある事情があり流浪していたマリルであった。

 当初、崖下へと落ちそうなカレンを発見してもマリルは何も思わず、見捨てる気でいた。

 当時、というか今現在の時点であってもマリルにとっては"その他の人間"は認識するにも値しない存在であるのだ。

 己が欲する物を得る為に行動を起こしはすれど、必要で無い限りはその他一切には感知をしない。

 それがマリルとっての当たり前であった。

 だから、その時もそれは己に必要とされる事柄では無かった為にカレンを見捨てるという選択をした。


 だが、その時。


 マリルがカレンを一瞥いちべつし、その姿を己の視界から外そうとした瞬間、なにやらマリルの頭脳部に小さなスパークが走ったのである。

 いや、実際にはそんな気がしたというのが正し言い方だろう。

 しかし、まるで、気まぐれと言わんばかりのそんな些細な違和感が、ふと気が付けば、己の手をカレンへと差し伸べて、彼女を助けるという行動を許容してしまっていた。


 それは、マリルにしてみれば何か己に不具合が生じたのではないかと考えたほどの予想外な出来事であった。

 いままででにマリルの身体がその様な行動を取った事はなかったのだ。

 もちろん、マリルには助けたなどという感情も無く。また、助かって良かったなどという感情も無い。

 その場にあってマリルの心は自身の知る通りに至って正常に空っぽであった。

 だというのに、マリルの身体は自然と動いていたのである。


 本当に、本当にマリルからしてみれば、それは不可思議な現象であった。 

 すぐさまマリルはその現象を調べなければならないと考えた。

 そして、ひいては流浪してまで己が望む物、それがその調査の結果により得られるのではないかとも。

 

 ならば、やる事は1つだった。

 とにかく、このカレンという存在の側にいる事が得策である。その姿を観察する事で、その現象を誘発させ、より多くの情報を得なければならない。

 

 故にマリルはカレンの傍で仕えるメイドとなった。

 より近くでカレンを観察する為に。


 カレンという不可思議な存在を調べること。

 それが、目下、マリルに与えられた使命であると彼女は考えているのであった。















 船が浮くとはどういう仕組みか。

 いや、それが飛行船ならば納得はゆく。水素か何かの空気より軽い気体を詰め込んだバルーンで船体を吊ってから浮かばせる仕組み。

 しかし、今現在で目の前にある船にはまずそのバルーンらしき物を使用している形跡は見当たらず。

 直に、ただの帆をはった船が浮いている様にしか見られない。

 ならば、もしかしたら高度なプロペラ等が搭載さていてれホバリングしているのだろうかと、じっくりと見渡すが、また、その様な作りが見当たらない。

 なにより、それ相応の物を浮かせる為には相当の原動力がいるのだから、それなりの音が爆発的にでも鳴っている筈であろうし。

 まず、その音がない時点でおかしい。

 想像を絶するその光景に驚愕したヒイロは、『なるほど、これが魔法か』と呆けた頭で自らの問いに答えを出したのであった。



「......」



 本当にその外観は船。

 まさしく、木造船。

 しかし、確かにこの船は、海では無く空中に浮いていた。

 しげしげと船体を眺めながら、カレンに言われるままに、船内に乗り込んで荷物を部屋まで運び、その部屋に備え付けられた丸穴の小窓を見て、ヒイロはまた感嘆する。

 空飛ぶ船。魔法船である。

 それから、すでにその空飛ぶ魔法船は出航したらしくてグングンという具合に近場の大地から離れて、遠い空へと上昇し始めていた。 

 うわぁ、凄いなぁ。

 その感想に尽きる思いでヒイロはその光景を目に焼き付けていて


 

「いやぁ?! いやいや、いやいやいや!?」



 何度目かの正気を取り戻す。

 何を黙りこくって、こんな船に乗っている、と。

 当初の描いていた計画と掛け離れた事態になっている事に彼はようやく気が付いて慌てふためく。

 彼の計画では、とにかく魔剣を返して貰ってから適当に合わせた所でトイレだの何だのと彼女たちの元からおさらばする。

 それが、先程の馬車を降りる前に軽くながらも考えていた事だった。

 だというのに、馬車から降りてヒイロが見たその光景は、軽い考えしか浮かばない寝起きの頭に重い衝撃を与える物であった。

 空飛ぶ船とか、卑怯じゃないですか?一度ぐらいは乗ってみたいじゃないですか?

 そんな思いが芽生えない訳がないのだ。


 だが、それがいけなかった。


 とりあえず、魔剣アイゼルも返して貰わないと始まらないし、荷物くらい運んで恩を売っとけば、なんて馬鹿な事を考えてノコノコと空飛ぶ船に乗り込んでしまったが最後だ。

 船はヒイロを乗せて空へと飛び立ってしまっているではないか。

 完全に好奇心に負けた形だった。



「ちょっと、下僕? うるさいわよ」



 そして、このカレンという少女は、ここまで文句のひとつも言わずに黙って従っていたヒイロを完全に己の下僕として認識している始末で。



「ふざけんなよ? 誰が下僕だ? ていうか、アイゼルを返せよ! 俺の剣! 返せ!!」


「ふーん、ひと眠りしたからかしら? 牢屋に居た時からの陰鬱とした感じが少しマシになったみたいね」


「え?」



 人が三人ほど座れそうなソファーの真ん中に悠然と座るカレンはヒイロを見て、したり顔をする。



「はーん? 気付いてなかった? アンタさ、牢屋から凄い暗い顔をしてたわよ?」



 そうだろうか。

 ヒイロは言われて自分の顔を右手で触る。



「…いや、とにかく、剣だ。俺が持っていた剣を返して欲しい…」



 しかし、そうでもないだろうと思い直し、右手をカレンの方に無遠慮に突き出した。

  


「んー、剣って、これのこと?」



 そうするとソファーの後ろからカレンが色のくすんだ革の棒を取り出してヒイロの前に寄越して見せる。

 それは革の鞘に納まった魔剣アイゼルであった。



「抜き身のままじゃ危ないから、適当に鞘を見繕ってあげたわ」



 仕方無いけど私がと、カレン。

 いちいち、恩着せがましいのは彼女の性格か…。

 いや、だが、とにかく、いまはアイゼルを取り返す事が先決でヒイロは喉元まで出かけた『だから、何だ?!』という言葉を飲み込む。


「あ、いや、ありがとうございます? あの、で、返してくれます?」



 代わりに出来るだけ下手に下手にと不気味な笑みを浮かべながらも謝礼の言葉で返事を返す。



「ま、別にいいけど。アンタ、本当にわかってる?」


「なにが…ですかね?」



 そうして、アイゼルを返して貰おとヒイロが手を差し伸べるが、しかし、カレンがそれを寸前の所で僅かに引っ込める。

 それから、彼の顔をじっと見詰めて、いまのヒイロという人物の現状をいま再び語り始めたのである。


 曰く、先に語った様にヒイロという人物は姫を襲った犯罪者となっている。

 曰く、脱獄は助けたが、国からの恩赦を勝ち得た訳ではないので、ヒイロという人物の現状は逃亡者である。

 曰く、このままではヒイロという人物は必ず国から指名手配を受け、他の国からも名のある犯罪者として追われる身になるであろう。


 妙に真剣な顔つきで脅した風にカレンはそう告げる。

 


「て、牢屋でも馬車でも言っといたのにアンタ、どうにかして私からも逃げようとしてる…ってマリルが言ってたわ」

 


 それから、あっけらかんという様に表情を変えてヒイロの胸の内を証したとのマリルの助言と『アンタってバカね』との嘲笑で言葉を締め括った。



「…っ…?!」



 それにヒイロは絶句するしかない。

 よく分からない内に犯罪者にされて、しかも、終わりには死刑。で、それが必ず履される為に国を越えての追跡処置。

 貴女は何ですか?疫病神ですか?と。

 ガタッと力無く崩れ落ち、両手を床に付いてヒイロは絶望のていを表わした。



「はぁ…ようやく分かったかしら? つまり、アンタの今現在の状況は身元不明の怪しい人物で指名手配一歩手前なのよ?」



 それを見て、呆れたといった感じでカレンは溜息を吐く。



「あのね? アンタが唯一、助かる道は、黙って私に従う事よ。まぁ、そうすれば、アストリナム王国の姫としてアンタの身元を保証と、指名手配されるであろう罪を冤罪だと否定してあげるわ」

 


 これで決定打。

 言いながら彼女は心の中でそう確信した。

 なんとかヒイロという少年に己の使い魔の代わりをして貰わなければならない。

 故にカレンはこの試みを選んだ。

 カレン自身、実際は恩人として扱わなければならないヒイロ少年にこの様な仕打ちを強いるのは、ちょびっと後ろめたい。

 だが、しかし、それでも彼女には成さなければならない事があって。



「ま、衣食住も保証してあげるわ」



 ヒイロ少年の主張もきっと有るのだろうが、この際はそれにも目を瞑って、己の為に利用させて貰わなければならない。



「……」



「……あ〜と、食と言えばマリルは何処に行ったのかしら? 何か軽い食べ物を食堂に取りに行くって言ったっきり帰ってこないじゃない…」



 しかし、未だ絶望の淵から帰らないヒイロにカレンは何だか気不味くなり、マリルが居ない事を独りごちた。



「……」


「……ごほん、ま〜ったく、従者の仕事が遅いと主人が困るというのを分かってないのかしらあのは…」




 それから、彼女はソファーからなんの気無しに立ち上がったという風に装い。



「し、心配だってしなきゃいけないじゃない? 主人として、所持者として?」



 魔剣アイゼルの入る鞘をヒイロの側に置くと、そのままドアの方へと向かい、部屋から出ていってしまったのである。

 そして、残されたのは、ヒイロが一人。

 彼はまだ己の身の不幸に打ちひしがれており、微動だにしない。

 静寂が部屋を支配して、



「すぴ〜…すぴ〜…zzZ」



 と、寝息が何処からともなく聞こえてくる。

 もちろん、それはヒイロではない。

 鼻提灯でも作っていそうなその寝息は、絶望にて床に付けられたヒイロの手の近く。

 の、色のくすんだ革の鞘から聞こえていて、



「むにゃむにゃ…我、至福のひとときであるぐぅ…zzZ」


「おまえかよッ!!?」



 果たしてそれは鞘という布団に包まれた魔剣アイゼルの物であった。



「ぐぐぐ〜…すぴ〜…」



 おい、へし折るぞ馬鹿剣。

 自ずと握られた拳に力が入るヒイロ。



「緊張感とか無いのかね、キミは…」


「むにゃむにゃ…」


「緊張感ッ!!」



 それから、魔剣を拾い上げると思いっ切りにそれを壁に投げ付ける。

 


「ンガッ…ががが…すぴ〜…zzZ」



 ガンッ!!と大きな音を立ててぶつかるもアイゼルは一向に起きる気配がなく。



「すぴ〜…すぴ……す………」



 程なくして寝息も立てない程に深く寝入ってしまった様であった。



「もはや、馬鹿馬鹿しくて怒りも沸かん…」



 その様子に呆れた様子で再びアイゼルを拾い上げるとヒイロは床に胡座をかく。



「はぁ…」



 それから、大きな溜息をしてまた思い悩んでしまう。

 結局のところ、この空を飛ぶ魔法の船に乗り込んでしまった時点で選択肢は選ばれてしまったと言ってもいい。

 この船の行き先が何処になるのかは知らないが。

 船と言うくらいだ、その移動距離は計り知れない。

 現状と先行きを確認しながら地道に地べたを進んで行くのと違い、一気に見知らぬ土地に飛ばされる。

 果たして、着いた先で自分は確かな行動が出来るであろうか。

 そもそも見知らぬ世界で手探りで行動していたのだ。ならば、別の土地に変わっても、平気だろうと、安易に考えるのは悪手だ。

 見知らぬ世界だからこそ、探り探りで地道に現地を調べ、知り、そして、行動の範囲を少しずつ広げて進んで行かなければならない。

 不用意に見知らぬ場所でどうなるかも分からない不確かな行動をするのは、最悪、死に直結する。

 レベルが足りず現地のレベル上位の魔物にパーティが全滅させられるが如くだ。



「あぁ…ほんと…ゲームじゃ…ないんだよな…」



 ゲームであれば、こんな事で心底思い悩まない。また苦労などしない。多少の無茶をしたって画面上で己の身代わりであるキャラクターが全部を請け負ってくれる。

 ヒイロは改めて、この摩訶不思議な身の上を直視して、涙ぐむ。

 そして、己の生きるという事に置いての技量の無さを嘆いた。

 自分はなにも出来ない。

 旅慣れた人物なら、例え、異なる土地であろうと異なる世界であろうと、成すべき事を知り、成すべき事をして、確かな道を進んで行くのだろう。

 話し上手な人なら言葉巧みに現地の人とも難なくコミュニケーションを取り、交友関係を拡げて、現状を打破するのだろう。

 しかし、自分はどちらも出来ない。

 出来るのは、ただ臆病に、人知れず、隅を歩いて、ほそぼそと進むこと。それが確かに目標に向かっているのか、前なのか、後ろなのかも分からずに、ただ闇雲に行くだけ。



「どうしたら…いい…?」



 本当にやる事さえ分からない。

 それはこの世界に来た当初にも思い悩んだ事だ。

 何をしたら、自分は救われるのか。

 何をしたら、自分は帰れるのか。

 考えども考えども答えは未だ出ていない。



「腹…減ったな…」



 鬱々と沈みゆく思考に希望が見出だせずヒイロは仕方無くそれを打ち切った。

 そのまま考え込んでしまっては、動けなくなりそうだったからだ。

 とにかく、先行きに想い馳せるより、現在に身を置いて、いま何を欲しているかを己の身体にヒイロは問うた。

 すると、グゥー…と腹の虫が元気よく返事をしたので、ご飯が食べたいという思いに至ったのである。



「戻ってこないし」



 ならば、先程に軽食を取りに行ったのがニ人ほど居た筈だがとドアに目をやるが、しかし、そのニ人は待てど暮せど戻ってくる気配が一向に無い。

 では、自分で行くかとヒイロは寝入っていて無言の魔剣アイゼルをむんずと掴むと立ち上がり、そして、部屋を出る為にドアを開いた。

 開いた先の通路は船の中である為か、やや狭めである。

 さて、右に行くか左に行くか。

 ヒイロはキョロキョロと左右を見比べて、行くべき方向を考える。

 と、左の方向の角で少女(?)が曲がっていったのが一瞬、見えた。

 それをヒイロは先ほど出ていったカレンであろうかと思い、追い掛ける事にした。 

 部屋を出て、通路を左。

 百メートルも無い程の距離を歩いて、曲がり角を曲がる。

 曲った先の視界に今度は誰も見掛けられず、しかし、進めば出逢うだろうとヒイロはそのまま歩みを止めず、その先を進んでいく。

 そして、また曲がり角をと思った矢先にドン!?

 と、ヒイロは何者かとぶつかってしまう。



「うわっ!?」


「きゃっ!?」



 聞こえるは、ヒイロと少女の声。

 前倒しになりそうな自分の体を留めてヒイロは、自分とぶつかって後ろに倒れそうになる少女の体を手で支えて、どちらもとも倒れない様に重心に力を入れる。



「ごめん! 大丈夫?!」



 それから、ぶつかってしまった事を目の前の少女に謝った。



「んー? あー、大丈夫♪ 大丈夫♪ びっくりしたけど、レミリカは大丈夫だよ?」



 すると、その少女から無事だとの返事が返ってくる。

 それで、ヒイロが少女の姿を改めて確認すると、少女はヒイロの顔を見てからキョトンとした表情になり、次ににぱっと満面の笑みを浮かべたではないか。

 それにヒイロの胸はドクンと脈打った。

 何故だが次の言葉が出て来ない。

 じぃっと少女の淡いピンクの瞳がヒイロを見詰めて、そのヒイロの顔を映し出しているのが分かる。

 それほど、ヒイロと少女は暫くの間、瞳と瞳を重なり合わせて動かなかったのである。



「ご、ごめ…ゴメン!! へ、変な事になっちゃって…ゴメン!!」



 やっとの思いで出た言葉と同時にヒイロは体を後ろへと引き下げる。

 その胸はドクンドクンと心臓が忙しなく動いていて、言葉は声が上擦っていた。

 どうしたんだ自分は、と思いながらヒイロは人差し指で頬を軽く掻いた。



「人を探してたんだ。……で、なんか、さっき、そこの曲がり角で誰かが曲ったのが見えて、俺の知り合い(?)の子かなって思って追い掛けたら…その、キミで…ゴメン、人違いだったみたいだ…」



 若干、しどろもどろになりながらもヒイロは事のあらましを説明する。



「ん? あー、うーん、そっかぁ…♪」



 と、少女は何故か眉をハの字にその表情を曇らせてしまう。



「人違いなら仕方が無いね。レミリカも人を探してたんだけど、まだ人違いだったみたい。えへへ、ざーんねんだー♪」



 まだ?

 少女の物言いにヒイロは少し違和感を感じたが、少女の曇る表情に何だか申し訳無くなって



「本当に、ゴメン!」



 再度、謝ってしまう。



「うーうん、気にしないで? レミリカは大丈夫だからさ♪」



 そう言って、少女は白銀色の髪のツインテールをパタパタと揺らして、頭を横に振る。



「えーと、お詫びと言っちゃなんだけど、キミの探してる人を一緒に…」



 とは言え、ぶつかってしまった手前、何もしないという訳にもいかないだろうとヒイロは少女の探し人を自分も一緒に探してあげようと、視線と意識を辺りに向けてから、ぐるりと後ろまでを確認して少女の方へと向き直す。



「えっ?! …え!!?」



 と、そこで不思議な現象が起きていた。

 なんとすでにその場に少女は居なくなっていたのだ。

 残る物はヒイロのほのかに漂い香る花の匂いだけ。


 そんな馬鹿な。

 ヒイロは再び、辺りをグルッと見渡すが、やはり、先ほどの少女は姿形も無い。

 少女が立っていた方向の更に向こうの方の壁際まで目を見張って確認するが、動くものどころか気配さえも無い。


 もはや、ヒイロは呆然と立ち尽くすしかなかった。

 まるで、神隠しにでも出会ったかの様な。


 白昼夢か? 

 幻覚か? 


 もはや、少女は本当に存在していたのかさえ分からなくなってしまってヒイロは混乱するばかりだ。



「ふむ、黒髪か…」



 だというのに、そんな彼の前にまた新たな人物が現れる。










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