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リトル・ティムは東へ旅をする  作者: あおいそらの
3/6

行方不明のセバスチャン

 リトル・ティムは、山を一つ越えて山村に入った。

 

 おなかもすいてきて、くたくたで歩くのがひどく億劫になって、小川のそばにしゃがみこんだ。


 「セバスチャン! セバスチャン!」


 後ろで高い細い声がして、振り返ると、金髪のやつれた女が木の下に立ちすくんで、こちらを見ていた。


 「こんにちわ、おばさん。」


 ティムは微笑んであいさつしたが、婦人は青ざめて首をふった。


 「どうしたの、おばさん? 顔色が悪いよ。病気なの?」


 「い・・いえ。大丈夫よ。坊やがおばさんの子に似てるもんで、びっくりしちゃって。」


 弱々しく微笑する婦人は、どこか哀れに見えた。


 「坊やの名前は?」


 「ティム。リトル・ティム・クランドゥール。おばさんの子は、セバスチャンっていうの?」


 「そうよ。坊や、うちへ来ない?ごちそうするわ。」


 「うわあ、よかった。ぼく、腹ぺこなんだ。だって、ずっと歩いてきたんだもの。ほら、あの山のずっとむこうから来たんだよ。」


 「まあ、大変ね。どこへいくの?」


 「アーサー叔父さんのとこ。だから、ずっとずっと先なんだ。」


 「じゃあ、おなかいっぱい食べて、元気つけなくちゃね。」


 婦人の家には、子供は一人もいなくて、部屋はきちんと片づけられていた。


 「セバスチャンは? おばさん?」


 婦人は首をふった。


 「行方不明なの。もう一週間にもなるのよ。見つからないの。ああ、もうきっと死んでるわ。

 食べるものもなしで、夜は寒いし・・・一週間も生きてるわけないわ。ああ、あの子は・・・」


 婦人は机につっぷして泣き出した。


 「おばさん。大丈夫だよ、きっと。 ほら、ぼくを見て。

 僕ももう一週間も一人でこうして生きてきたんだよ。

 でも、こんなに元気でしょう。


 山の中では木の実をを食べたし、夜はたき火をたいたんだ。

 小川の水を飲めば生き返る気がするよ。


 だから、おばさん。セバスチャンもきっと大丈夫さ。

 子どもってねえ、大人が考えるほど弱虫じゃないんだ。

 男の子は特にそうだよ。


 きっと、ケロッとして帰ってくるよ。」


 婦人はまだしゃくりあげながらも、顔をあげて、涙をふいた。


 「そうね、ありがとう、坊や。きっと、そうよね。」


 「うん、もちろんだよ。パイをもう一切れもらっていい?」


 「どうぞ。おなかいっぱい食べてちょうだい。」


 

 数日して、セバスチャンは山の中を心ゆくまで探検し終えて、


 元気いっぱいに母の胸に舞い戻ってきた。

 


 

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