永遠の命
ずんずんずんずん歩いて行って、一日目の陽が暮れるころ、
ティムは金属でできた家の前にさしかかった。
夕日がその家に反射して、思わずティムが目をつぶったとたん、足元に何かが投げ出されたのを感じた。
それは、ぜんまいだった。
「おう、坊や、けがはなかったかい?」
白ひげを生やしたおじいさんが窓から顔を突き出して大声で言った。
「う・・うん。」
ティムはまぶしくて、そっちを見れなかった。
「悪いが、それを持ってきておくれ。
そうしたら、お礼に何かあげよう。」
中へ入ってみると、ティムはびっくりして周りを見まわした。
「わあ、すごいんだね。おじいさん、科学者なの?」
機械や器具のいたるところに並んでいる部屋の中を、ぶつからないように、おじいさんのいるほうへ進んでいった。
「そうさな。何でも屋だ。何でも作れるよ。」
「じやあ、おじいさん。ぼくを叔父さんのいるところへつれていってくれる機械、作れる?」
「そうさな。もちろん。叔父さんとやらはどこにいるんだ、坊や?」
「ずっとずっと東のほうなの。」
「ふうむ。まあ、百年かかるかな。」
「百年!? だめだよ。そんなにたったら、ぼく、おじいさんになっちゃう。それに、おじいさんも死んじゃってるじゃないか。」
「いや、なに。ほれ、この薬をごらん。これは、永遠に生きることのできる薬じゃ。これを飲めば大丈夫だよ。」
掌に落とされたピンクの小さな粒を、ティムは喜んで口に入れようとしたが、
はたとその手をとめた。
「やっぱりだめだよ。ぼくが百年生きてたって、叔父さんは死んじゃってるかもしれないもの。」
「そうか。じゃあ、どうするね、坊や。」
「ぼく、この足で歩いていくよ。歩いて行ったら、いつか着けるもの。足があったら、どこへでも行けるよ。だから、ぼく、やっぱり一人で歩いていくよ。」
「じゃあ、この薬を3粒あげよう。さっきのお礼だよ。」
「ありがとう。」
「でも、やっぱり飲まないほうがいいかもしれんな。
それは、飲んだらもう、死にたくなっても死ねないんだ。
人は、死にたくなって死ねないと、生きたくて生きれないより辛いことがあるよ。」
リトル・ティムは首をかしげた。
<死にたい>なんて、思う人がいるのかしら・・・ぼくは、生きれるだけ生きたいのに。