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旅立ち
鐘の音が、緑の村に鳴り響く。
後ろを振り返ったリトル・ティムは、草原が光をうけて、その中に宝石を隠しもっているように輝くのを見た。それが、手を振ってくれているように見えたので、ティムは弱々しく返事をした。
「さよなら、僕が大好きだった村。僕の父さんと母さんを抱いて眠る村。」
鐘の音が響く。
ティムの両親の死を弔って。
ティムの出発を悲しむように。
ティムの父が言った。
「ずっと東の国に、叔父さんがいる。訪ねてお行き。お前に良くしてくれるはずだから。」
ティムの母が言った。
「叔父さんは、金色の髪をした気まぐれな人。でも、お前にはよくしてくれるわ。」
鐘が響く。
ティムはつぶやいた。
「叔父さんて、僕を知ってるのかしら?」
かくして、リトル・ティムはアーサー・クランドゥール叔父さんを訪ねて、旅に出て行った。
この故郷の村には、一人の身寄りもなかったし、
誰もが貧しくて、ティムを引き取ることはできなかったので。