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「自分たちって、わたしとエドガーのことですか?」
会長の視線が、わたしとエドガーを交互に見ているから、そう尋ねる。
と、ベルン会長は「そうだ!」とうなずく。
「知っているんだからな!最近、お前たちがつきあってるって。みんなが噂しているし」
「噂って。ただの噂でしょう?別にわたしたちはつきあってません」
会長がその噂を知っていたのは、意外だった。
そんな噂をいちいち会長の耳に入れる人がいるんだなぁと、感心する。
だけど、訊いてくれればすぐに否定したのに。
みんなが噂していること、イコール真実ってわけじゃないんだよ。
ね、とエドガーを促すと、エドガーもあっさりと首肯する。
「ふつうの、仲のいい友人ってだけですよ」
「うそだ!だってお前ら、いつも一緒にいるじゃないか!」
「そりゃ、クラスも一緒で、同じ生徒会役員ですし」
「俺も同じクラスで、生徒会役員だろう!?なのに、俺はいつも一緒じゃない!」
それは貴方がウザいからです、とは言えない。
貴方は仲のいい友人でもないですし、というか、友人でもないですよねー、とも言えない。
どうするんだ、これ。
「というか、わたしたちがダンスパーティで踊ろうと踊るまいと、会長には関係ないですよね?」
面倒になって、突き放したように言う。
というか、この会話の流れから察すると、わたしとエドガーが、自分たちがクリスマス・パーティで踊りたいっていう私情で、企画を推しているとでも言いたいのか。この会長は。
さっき生徒からの要望が多い企画だってことも、アリスちゃんの案があちこちの支援をとりつけ済みの良企画だってのも説明しただろうが。
むしろこのレベルの企画を、まともに企画書も読まないで切り捨てた会長のほうが私情に走っているんじゃないの?
イライラする気持ちのせいで、わたしの言葉はすっごく冷たく響いた。
あ、ちょっとマズかったかも。
言った瞬間、自分でもそう思った。
ベルン会長が、びくりと体を震わせる。
その目が、ひどく傷ついたように暗い色に染まる。
しまった。
言いすぎだ。
「ベルン会長……」
あわててとりつくろうように、会長の名前を呼ぶ。
だけど会長は、さっとわたしから目をそらした。
胸が、ずきりと痛む。
その瞬間。