朱雀捜索
俺は毎日森に出る。何故ならすき…いや、四聖獣を狩るためだ。ここ2週間で白虎、玄武、青龍を狩ることに成功した。青龍は本当に大変だった。
「あとは朱雀だけ。今日こそ、絶対今日こそ見つけて狩ってやる」
『ここ最近は怖いくらいのモチベーションの高さだね。でも、だいぶ魔力の使い方もわかってきたみたいだし、本当に今日で朱雀狩って来ちゃうかも』
初めの3日くらいまではリーシュに付いてきてもらっていたが、それ以降は一人で森に入るようになっていた。それくらい俺のモチベーションは高かった。
「任せろ! リーシュ! まな板洗って待っとけ!」
『はいはい、いってらっしゃい。あっ、朱雀にあったら風魔法は使わないでね。火属性で相性悪いから……て聞いてないし』
リーシュが何か言ってるが、俺の耳には届かない。今日の俺なら絶対負けないはずだ。もう勝つイメージしかない。
ちなみに、不死鳥と朱雀は同じ聖獣で鳥型だが、四聖獣である朱雀の方が格上らしい。
そして森に入って3時間ほどたった。森を歩き回り、さすがにお腹が空いたので昼食にすることにした。もちろん、リーシュ特製弁当で中身はロースト白虎……いや、ローストビーフと野菜を挟んだサンドイッチだった。ローストビーフが噛みきれず、中身だけ先に食べてしまわないように一口サイズに切って詰めてくれている辺り、本当に女子力が高い。こうゆう奥さんがほしいものだ。そんな事を考えながらサンドイッチを食べていると
チュンチュンッ!ピチューッ!
「ん?」
そこにはクリクリのつぶらな瞳で俺を見上げる紅い羽根の綺麗な小鳥がいた。
「…可愛い……なんだお前。あっ! もしかして、あの激ウマな不死鳥の子供か!?」
ピチューッ!
「そうかそうか! お前がなぁ。見たことなかったが、こんなに可愛い鳥だったのか。お前を見たら不死鳥食えなくなりそうだよ」
そう言いながら頭を撫でてやると小鳥は気持ち良さそうに目を細めた。そして、ジッとサンドイッチを見る。俺はサンドイッチを指差して
「これがほしいのか? ほらっ、食べな」
小鳥にサンドイッチを1つ分けてやると
ピーッ、ピチュー♪
小鳥は美味しそうにサンドイッチを啄み、飲み込む度に美味しいと伝えるように俺に鳴き声をあげる。つい嬉しくなってしまい、撫でながらもう1つサンドイッチをあげるとまた美味しいそうに啄み始めた。
「お前、人懐っこいなぁ。可愛いなぁ」
小鳥の愛くるしさにほのぼのしていると、小鳥が急に後ろの森を振り返った。
「ん? どうした?」
そう言って視線を上げた瞬間だった。
バサッ、バサッ、バサッ、ゴゥ!!
全身が真っ赤な羽根に覆われ、目付きの鋭い4メートルほどの怪鳥がこちらに向かって飛んできた。近付けば近付くほど熱い熱波が吹き荒れ、俺は急いで幼い不死鳥を抱えて後ろへ飛び退いた。
俺のいた場所は草木が燃え始め、一瞬にして辺りが火の海になった。
「…これは、今日は運がいいな。やっと見つけたぞ!…すき…朱雀っ!」
ギギャーャーー!
「小鳥、逃げろ! なるべく遠くに、親がいるなら親のとこに!」
ピ~?
トットットと幼い不死鳥が離れて行ったことに寂しく感じたが、同時に巻き込まなくて済みそうで俺は安堵した。
ギャーーーッス!
怪鳥が羽ばたき始めると先程より数段強い熱波が襲ってきたが、俺は先程のように飛び退かずその場に立ったまま怪鳥を見上げていた。
青龍を狩った時に気付いたのだが、魔力を体に通し、さらに魔力で体の表面を包むと相手の攻撃を防げるようなのだ。それは魔力が多いほど顕著で、相手の攻撃の魔力より多ければ全くダメージを受けない。それに気付いてからは、遭遇した魔獣、聖獣の攻撃は最初のみ、わざと受ける事にしていた。受けているとどのくらいの攻撃がどのくらいの魔力で防げるのかがわかるからだ。つまり…
「オラァ!」
無傷…そして、その練習の副産物が
グキィッ!!
軽く5メートルほど跳び、上からの蹴りで怪鳥の首をへし折った。どのくらいの攻撃がどのくらいの魔力で防げるかわかると、自分がどのくらいの魔力で攻撃すればオーバーキルにならずに済むのか、相手を一撃で損傷少なく倒せるのかある程度わかるようになっていた。
「…案外朱雀弱かったな、青龍の方がヤバかったぞ」
そう言いながら、右手に風魔法を纏わせ地面に叩きつける。
すると叩きつけた風魔法は拡散し、周囲で燃えていた草木の火が吹き消えた。
ピチューーッ!
「おぉー! 小鳥…いや、フェニ! 無事だったか!」
俺は幼い不死鳥を抱き上げた。もし、また会えたら名前を付けようと思っていたのだ。フェニックスだからフェニ…。簡単な名前の方が愛着が沸かなくて済む。大きくなって食卓に上ることだってありえるのだから。
「可愛いなぁ。ケガもなさそうでよかったよ。俺はもう目的を達したから帰るけど、また森で会えたら何か食べ物やるからな。あっ、残りのサンドイッチ食べていいぞ」
残っていたサンドイッチをフェニの前に置いてやると美味しそうに食べていた。
そして、俺は怪鳥を担ぎフェニに背を向け家に向かう。
ピーーッ!ピチューーッ!
フェニの鳴き声が聞こえたが振り返らない。きっと振り返ったら連れて帰ってしまうから。
パタパタパタパタ…
肩に重みを感じ、見るとフェニだった。フェニが俺の顔に自分の顔を擦り付けてくる。
「ダメだぞ? 親のとこに帰りなさい!」
ピッ!ピッ!!
フェニが首を横に振る。ん?
「俺はもう帰るから、フェニも帰りなさい」
ピッ、ピッ!
また横に首を振る…
「まさか、ついてくるのか!?」
ピーー♪
首を縦に振るフェニ…
「しかも、言葉もわかるのかよ…」
ピチュ~♪
(…マジで理解してる。なら連れてっちゃダメかな? リーシュ次第だけど、ダメだったら外でもいいし)
「わかった! じゃあ、フェニ! ついてこい! 俺たちは友達だ!」
ピ~、ピチュ~♪
フェニは嬉しそうに顔をまた擦り付けてきた。するとそこで
ポーン!!
[フェニとの友情値がすでに50%を超えています。火魔法[途]の借用が可能です。借用登録しますか?]
(きた! あの生気のない機械声!世界樹スキルのシステムってやつか?とりあえず)
「登録する」
[承認を確認しました。登録します。]
やはり仲良くなるとスキルを借りられるようだ。しかし、[始]ではなく[途]? わからないことだらけである。とりあえず早く帰ってリーシュに聞いてみようと家路を急いだ。
「リーシューーー!朱雀狩ってきたぞー!」
デカイ怪鳥を家の前に下ろす。さすが朱雀、ちょっと重かった。するとリーシュがドアを開け出てきた。
『おかえり! ついに朱雀を狩ったん…ん!?』
リーシュが怪鳥をジッと見つめた後、こちらを見つめてくる。
(フッ…惚れたか?)
そんな冗談を考えながら
『…朱雀、だよね?』
「ん!? これ違うのか!? 雰囲気的に朱雀だと思ったんだが…」
『いや、朱雀だと思うんだけど…ねぇ?』
ピチューー!
「フェニ? どうした? あっ、こいつはさっき友達になった不死鳥の子のフェニだ。実は、懐かれちゃって…飼いたいんだけど、ダメかな?」
リーシュは俺の話を聞きながらクスクスと笑いだした。恐らく朱雀を料理するのが楽しみでしょうがないのだろう。とか思っていた俺がアホだった。
『…フフッ…あのね? この大きいのが不死鳥だよ? で、その肩に乗ってる子が幼いけど朱雀』
(…ん!? 怪鳥は不死鳥でフェニが朱雀!?)
「え!? マジで!? っえ!?」
『本当だよ!…プッ…フフッ…確かに飼ってきたね! しかも、朱雀なのにフェニって名前なのね…フフ、ごめん、可笑しくて……お腹痛い…。朱雀だよねぇ? フェニちゃん♪』
ピッ、ピチュ~♪♪
(マジかよ。朱雀狩りに行ったら、朱雀保護しちゃったよ。しかも、フェニなんて名前付けて、堂々と「朱雀狩ってきたぞー」なんて……恥ずかしい…)
驚きと恥ずかしさ、そして朱雀を狩れなかった残念さで思わず気持ちが昂ってしまう。
「しょうがないじゃんっ! 不死鳥も朱雀も見たことなかったし! それにこんなに可愛いのが朱雀だなんて誰も思わないって!」
(くそ…人の無知を笑いやがって…)
『ハハハ…あぁ~可笑し! しょうがないよね! 飼って来ちゃったけど、面白かったから街に買い出しに連れてってあげる♪』
(なんか悔しい…)
「…嬉しいけど、素直に喜べない。あっ、そういえばリーシュに聞きたいことがあったんだった! フェニと友達になった時、またあの世界樹スキルの声が聞こえたんだ。火魔法[途]の借用登録するって」
『え~、また出たんだ…。そっか……フェニちゃん、まだ子供だけど朱雀だもんね。スキルにはね[始、途、終]ってあって、強さの段階を表してるの。[始]はそのスキルがとりあえず使えるって段階。[途]はそのスキルを大規模かつ強力に使える…一般的に一流と言われるのは[途]かな。そして、[終]はそのスキルでは最上位。まぁ、上がいない状態? そんな感じかなぁ』
ピ~♪
『フェニちゃんも一流だよ~♪可愛い~♪』
俺の肩にいるフェニを撫で始めるリーシュ。美少女と小鳥の2ショットは可愛さが溢れ出ていた。まだ目の前に来られると少し緊張する。
「じゃあ、最初の全然ドヤ岩が割れなかったのは仕方なかったのか。てか、[途]が使えるようになったのか……使ってみたい」
『ん~、使いたい気持ちはわかるけど、制御間違えると森に被害が出るからやめておいてね? ちなみに…普通は[始]で岩くらいは風刃で切れるけどね? スキルは長い間使ってるうちに段階をあげていくもので、ユシルにはそれが関係ないっぽいから制御の練習させてあげたいんだけどね』
「しょうがないか」
でも、過程はどうあれ…これで街に行ける! 米が…すき焼きが食べれる!と俺は心踊らせた。
そして、美少女過ぎる女神と可愛すぎる小鳥との生活は前世での生活と比べても負けず劣らず…いや、どっちかというと可愛い子たちに囲まれているこっちの方が幸せだと俺は感じるのだった。
そう、アイツに出会うまでは…