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実戦

 破砕音が森に響き渡る。





 「…ふぅ…少し慣れてきたな…」




 スキルとやらを使用して破壊した岩はこれで7つ目になる。ドヤ岩を破壊した後、スキルの使い方に慣れるべくリーシュと森の中にいた。



『お疲れさま。脚でもいけるんだねぇ、体に魔力を通すのもスムーズになってきたし♪ いい感じだよ』




 あれから色々試してみて、分かったことがいくつかある。



・拳だけじゃなく、体のどこでも魔力を集めれば同じことが可能。


・風魔法は適性がないのか、体に纏わせて使うことはできるが、飛ばすと途端に威力が落ちる。そして飛べない。


・風魔法なしの普通の魔力でも無属性だが使用可能である。


・魔力を込める量によって威力の増減が可能。


・体に魔力を通していると身体能力が飛躍的に上がる。




 結果、つまり…




 初スキルである風魔法をほぼ必要としない。



「慣れてきたからわかるんだけどさぁ、これ、スキル使わなくてもできるよな…?」



『出来るねぇ。あはは…まぁ、いいじゃない♪風属性は相性のいい属性に使えばいいしね』



 リーシュがいうにはこの世界には5大属性+光と闇の7属性が公表・・されているらしい。5大属性は[火、水、雷、土、風]で火は水に弱く、水は雷に弱く、雷は土に弱く、土は風に弱く、風は火に弱い。ちなみに光と闇はお互いがお互い弱く、無属性は弱い属性はないが強い属性もないそうだ。

 ちなみにこっそり教えてもらったのだが、リーシュの[風爆]は属性的に風と火が混ざった状態らしく、風属性の強い[風爆]は今のところリーシュしか使えないらしいが、皆何かしらの属性を作り、隠しているという。[爆破]系のスキルは基本火属性が多量に入るため火の神が好んで使うそうだ。属性を混ぜる事ができるのは上位だけらしいが。



「…まぁ、自衛手段ができただけでもよかったよ」



『じゃあ、帰る前に一戦やってく? 何事も経験だしね』



 そう言って指差した先を見ると、白いサーベルタイガーに似た獣がこちらを見て唸っていた。



{グルルル…}



「…めっちゃあのトラに睨まれてるんだけど、なんかしたっけ?」



『多分、さっきから見つける度に破壊してた岩に関係あるんじゃないかな?まぁ、獲物に見られちゃったみたいだし、やるしかないね。晩御飯の食材ゲットしてきて♪』



「ぇ? 食べれんの!? てか、俺がやるのかよ…」



『当たり前じゃないっ!習うより慣れろっ!一石二鳥っ!白虎は美味しいんだよ♪なんせ四聖獣だしね♪』



…白虎?


…四聖獣?



「っおい!超有名なやつじゃないか!食べたらバチ当たりそうな…ていうか、勝てる気しないんだが」




『襲ってくるのはあっちだよ? 自業自得、自己責任だからね!』



 ちょっかいというかうるさくしてたのは俺だと言おうとしたが、白虎は待ってはくれなかった。




{ガァァー}



「っうわっ!」



 2本のデカイ牙がある口を大きく開き、食い千切りにきたが、必死に横に飛んで事なきを得る。



「いきなりかよっ!てか、噛まれたら死ぬだろ!」



 とりあえずもう後戻りは出来ないので体に魔力を通す。軽くなった体で左足と左半身を前に出し、両拳を軽く上げ構えた。



『おぉ…なんか様になってる』



「うるっ…さいっ!」



 思いきり踏み込み前に出る。その瞬間、周りの景色が一気に視界から消えた。魔力を通した状態で思いきり踏み込んだのは初めてだったが、まさかここまでとは思わなかった。

 20メートルほど離れていた白虎との距離が一瞬で詰められ、俺は自分のありえない速さに逆に驚き動揺し、気のない適当な蹴りを出してしまったのだが。



 その適当に蹴られた白虎は物凄い勢いで後ろに吹き飛び、木にぶつかって止まったようだ。



「…マジかよ、反則級だな、これ」




 白虎はダメージを残しながらのゆっくりと立ち上がった。そして、こちらを向き口を開けたまま静止する。



『ユシルっ! それは避けないとダメ!! 魔力砲だよ!』



 白虎の口から魔力の奔流のようなものが物凄い速さで俺に放たれた。


しかし魔力を体に通した事で身体能力の他にも反射神経、動体視力、思考速度まで上がっていたようで、俺は冷静にどうするか考えていた。



 (せっかくだから撃ち落としてみるか。よく見たら見えるし…)


もちろん人間では反応できないほどの速度なのだが、俺にはバッティングセンターでの100キロ程度にしか感じていなかった。

 撃ち落とすとは言ったが、足元に落として爆発されても嫌なので撃ち上げることにした。俺は先程より更に多くの魔力を体に通す。なんか薄緑色に発光してる気がするが気にしない。そして、右手に魔力を集中させて腰を落とし、魔力砲ともいうべき魔力の奔流にタイミングよく掌底を合わせ斜め上へと右手を振り抜いた。




ガッと何か固いものにぶつかった音がし、それほど衝撃もなく魔力の奔流は角度を変え、俺の後方の空へと消えていった 。



「おぉ~」



 人間、自分の思い通りに事が進むと嬉しいものである。これが死ぬ前の俺ににできるかどうかは別として




{ガルルル…}



 憎々しげにこちらを見る白虎はまた口を開き始める。



「っ!させるかっ!」



 俺は思いきり踏み込み白虎に肉薄する。白虎の口から魔力が漏れ始めていたが、気にせずヒザで顎を蹴り上げ口を閉じさせると、上へと吹っ飛びそうになった白虎の首に上から肘を落とす。



 ゴキンッと嫌な手応えに白虎が軽く地面にメリ込んで動きが緩慢になった隙に、右手に魔力を集め、保険とばかりに風魔法を右拳に纏わせた。




「これで終わりだっ!」




 思いきり白虎めがけて降り下ろした。



 どうなるかは自分でも予想していなかったが、白虎に降り下ろしたはずの拳が寸前で何かに阻まれ止まっていた。



『…はい、ストーップ。今の当てたら、食べられなくなるじゃない』



 俺は何が起こったか理解した。



 白虎寸前で阻まれたのはリーシュの風結界だったのだ。



「倒した…のか?」



『肘で地面にメリ込ませた時点でもう息はなかったよ。最後のはさすがにバラバラになりそうだったから止めたけど、周り見て?』



 俺が周囲を見ると…半径10メートルほど、周りの草木が強い台風でも通過したかのように全て(・・)なぎ倒されていた。


「これは俺が?」



『そうだね、風魔法も魔纏したでしょ? それを風結界で受け止めたから、さらに衝撃が周りに広がっちゃったみたい』



 各属性は特有の効果を持ってるらしく、たとえば火魔法は焼失、延焼、水魔法は浸透などの効果があり、風魔法は拡散、広域の効果があるらしい。

 


 しかし、結構本気で魔力を込めたにも関わらず、あっさり受け止められた感が否めない。



「リーシュ…ちなみに俺が戦ってた時の感想聞いていいか?」



『ん~、動きは初めてにしてはいいし、最後のもまぁまぁ威力があったから、この辺の聖獣くらいなら大丈夫じゃないかな?ただ、私達相手だったら厳しいかも』



 まぁまぁの威力、初めてにしては、これは…



「…全然ダメってこと?」




『…。さっ! 帰ろっか♪ 今日は御馳走だよ~♪ 白虎はユシルが運んでね?』




 そう言ってリーシュは来た道を戻り始めた。俺の質問をサラッと流して…




「っおい! 待てって! 流したけど、絶対夜聞くからな!? あ、ちょっと待って!…え!? 重っ! 白虎重っ!」




『早く来ないと置いてくよ~?重いなら魔力通せばいいんじゃない?』



 その通りだ。魔力を体に通すと楽に白虎を担げた。そして、俺は少し早歩きのリーシュを追いかけた。








 家に着き、俺は風呂に入っていた。リーシュにドロドロな格好ウロウロするなと風呂に叩き込まれたのだ。ちなみにリーシュは鼻歌を歌いながら白虎料理に勤しんでいる。白虎解体を見なくて済んで良かったが、俺は今日のことをずっと考えていた。



「あんな人外な力でもリーシュたちには普通以下なのか…」



思わず考え事が漏れる。白虎は聖獣だが、リーシュたちからすると家畜のような扱いなのかもしれない。食材としてしか見てなかったような気もする。



『ユシル~、まだ~? ご飯できたよ~♪』



「あぁ、もう出るよ!」




かなりの時間考え事をしていたようだ。しかし、まるで新婚生活のような会話に、思わず顔が弛む。正直この生活がずっと続けばいいなと思うが、せっかく転生して知らない世界に来たのだ。この世界を見て回りたいという気持ちも確かにあった。



「まぁ、とりあえず出るか…」




 風呂を出てテーブルの方を見た俺は歓喜に震えた。ピンクのエプロンを付けたリーシュと御馳走たる料理の数々に感動したのだ。どっちかが欠けてはいけない。新婚風エプロン美少女と御馳走という最強の組み合わせがあってこそだ。

 ちなみに白虎料理は牛肉料理のようなものが多かった。ステーキ、ビーフシチュー、ローストビーフ、サラダにパンという組み合わせ。白虎シチューとかロースト白虎はなんか食欲がそそられないのでビーフ扱いにすることにした。味はほぼ牛肉。しかも、俺が前世で食べられなかったくらいの高級なA5? とかそうゆうレベルのやつだと思う。



「…旨い。全部旨い…白虎旨いよっ!旨すぎだよ!!!リーシュ!」



『…あはは、なんかすごく気に入ってくれたみたいで嬉しいけど、ちょっと目が本気過ぎて引いちゃうけど…ん?いやっ、何でもないよ?

白虎美味しいよね♪ あたしも大好きなの! 料理の幅も出るし、ただ焼くだけでも美味しいし!聖獣だから腐らないから保存も利くし! すき焼きとかにしてもきっと美味しいよ♪』




 (すき焼きだと…? あるのか? そういえば…リーシュは大和の方にも居たことあるって言ってたな。恐らく大和は日本を指すんだろうけど…いや、そんな事よりも…)



「リーシュ様、何卒なにとぞ! 何卒、すき焼きを俺に与えてくださいっ! 大好物なんです! 不死鳥の卵で白虎のすき焼きを食べたいんです!!」



『わかった! わかったから! 頭上げてっ! あと敬語もやめて!あ…でも、お米ないよ?』



 (…米が…ないだと…)



ポタッ!


ツー…


 (ハハッ、心の汗が…)



『え? ちょっとユシル!? 泣かないでっ!そんなにお米ないのがショックなの?』



「米がないくらいで泣くわけないだろ?…心の汗だよ。米がなければ…すき焼きは…食えん…」



俺はすき焼きには白米と決めている。いつからだと?前世からに決まってるだろ!一昨日までいた前世だけどな!



『わかったから! 街に買い出しに行くから泣かないで! ね?』



「泣いてない… 街?近くにないよね?てか、買い出し行く事あるの?」



『もちろん! 自給自足したくても小麦粉とか調味料は一人じゃさすがに買った方が安いし! 3年に1回くらいしか行かないけど、ユシルがそこまでお米食べたいなら買い出し行こうよっ♪ せっかくだからアースガルド観光も兼ねてさ!』



 (おぉ、神様の街か、是非見てみたい。でも、それより米食べたい…日本人だもの…)



「ぜひ連れてってくれ!アースガルド!」



『いいよっ♪ その代わり条件があるの。まず、あたしの事は誰にも言わないこと。次にユシル自身の事も誰にも言わないこと。これは厄介事を避けるためだから守ってね? 最後に…四聖獣を全部倒したら連れてってあげるね♪』



(…は? 何でそうなる。米と四聖獣関係ないじゃん)



「…何で?」



『ユシルは特殊だから、色々巻き込まれそうな気がするの。だから、ある程度の実力は絶対付けた方がいいと思う。だから、最後のは絶対条件。お米…食べたいんでしょ?』


 米を求めた俺の藤○弘。探検隊ばりの森の探索が始まる。

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