この男、風雲児アックス
「おらおら!魔導師様のお通りだ!」
これは、ある世界のちょっと変わったお話し……
「ほぅ、旨そうじゃねぇか、貰ってやるよ」
「そ、そのりんごは……」
「あ!金とんのか!?この魔導師様から!!」
「め、滅相もない…。」
もし、君たちの世界に魔法があって
もし、魔導師と呼ばれる魔法を使える人間達がいて
もし、その魔導師達が魔法を使えない人間、『下級人間』を支配していたら?
そう、これは、そんな、もしのお話である
「おい、女!ちょっと来い」
紫のローブに偉そうに叫ぶ男、黒髪を揺らしひとりの人間を自分の元へ来るように命令する
この男がこの世界を支配する魔導師の1人
正確には魔導師のグループ『魔法連盟』の支配する世界で、下級人間よりも遥かに高い権力を誇る、普通の魔法使い
「は、はい…魔導師様……」
ひとりの女性……可愛らしい声と。ちょっとお肉のついたお腹と、ちょっと整ってない顔を持つ、ちょっと微妙な女性だ
「ふっ、いい女だ…」
魔導師の男が女の顎を自らの左手でクイッと持ち上げる、心なしか重そうだ
(あ〜、そういう趣味か…)
まわりの人間が心の中でそんな感想を持つが誰もつっこまない、いや、つっこめない……だって、そんなことしたら…
「うーわ!ぶっさいく!!わはははは!」
まるで己の心で言いたかった言葉をストレートに直訳されたかのような声の方を一同が向く
「誰だてめぇ!」
魔導師の男がその顔を怒りの一色に染めて言い放つ
「え?誰?ぷっ…ちょ、待って、さっきのツボった…ぶふっ!」
「吹いてんじゃねぇ!」
魔導師の男が杖を取り出す
魔導師といっても、そんな簡単に魔法を使えるわけではない
魔法には種類がある
武装魔法
環境魔法
攻撃魔法
防御魔法
強化魔法
この他にも、たくさんの種類の魔法が存在する
そんな魔法を使うために必要な道具、それが魔法の杖である
魔導師と下級人間はこの魔法の杖を使えるかどうかでわけられる
「殺してやる!『アイス』!!」
魔導師の男が放ったのは初級無詠唱氷魔法、アイスである
男の杖についている球体が水色に光る
これを魔導石という、魔導石に己の精神力を込めて魔法を放つのだ
杖から氷の塊が飛んでいく
「あーなんだ、お前魔導師か」
男は氷の塊に向かって走り出す
「血迷ったか!死ねぇえええええ!!」
魔導師の男が言い放つ
氷の塊が直撃をしてあたりが冷気に包まれる
「ふんっ、終わったか…」
魔導師の男が勝利を確認し……「けっ」
「な、なんだ!?」
魔導師の男の視線の先には冷気の煙の中で炎を放つ男の姿…というか
「炎を纏ってる!?」
「『炎の鎧』、諦めな、お前じゃ勝てねぇ」
男は炎を揺らめかせ静かに歩み寄る
「な、何者だ!ていうか、お前。杖…」
そう、炎を纏ってる男のどこにも杖の姿はない
「俺は精霊使いの魔導師、炎と超越の精霊使い、アックスだ」
「き、聞いたことがある……精霊界から精霊の力を借りることで使える通常の魔法と違い、精霊をこっちの世界に呼び出すことで魔導石無しでも発動できる特別な存在…」
ごくり、と唾を飲んで魔導師の男は続ける
「……精霊魔導師…」
そこまで言い終わるとアックスに纏ってる炎が消える
「てめー!台詞長すぎて魔法消えちゃったじゃねーかよ!!」
(えぇ〜敵に文句言ってるよあの人…)
と、見ている人々は思う
「ったく、もう一回か…」
アックスが目を閉じると、アックスの足元から周囲に丸い円が広がる、中には何やらいろいろな物が書かれている
「炎と超越の精霊よ、我の声に従い現れよ、クリシュナ!!」
アックスがいうと巨大な炎の玉が現れ、その中から小さな人間…にしては赤く、炎の鎧を着ている、謎のものがあらわれた
「呼ぶな、今P○Pやってたんだよ」
「うるせーよ!セーブしときゃいいだろ!早く力貸せよ」
「あーはいはい、ほら」
そういうと渋々現れた精霊?クリシュナが手をかざすとアックスが炎に包まれる
「んじゃ、おつかれ」
「はぁ、あいつ……」
「む、むちゃくちゃだ……」
魔導師の男はオーバーヒートしそうな自分と頭を抱えつつそう呟いた
「さ、やるか!!」