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妖精との一日

 ~~~緑に囲まれた森の中、そこには小さな家が建っている。この家には、ちょっと変わったお客さんが訪れるのです。

そのお客さんは妖精なのです。


 一体何処が変わっているかと云うと………この妖精さん姿を隠す事が出来ない、なんともドジな妖精なのです。~~~



(と、いう様な絵本作家なる物をしているが、実はそのドジな妖精が、この家に居る………しかも、この妖精の出て来る話が好きらしい………)

俺は自分の作品であるその絵本をその妖精に見えるように森に包まれた家と妖精の映るページを開きながら、ついため息がこぼれる。

「ハァ………」

(こいつ、自分のことだって気付かないんだろうな………)



 神林一葉かんばやしかずはがこの妖精と初めて出会った…というより見たのは、一葉がまだ子供の頃。夏休みに祖母の家に遊びに行った時の事だ。


 祖母は、ガーデニングが好きで庭は花やハーブで溢れていたが、主にハーブの方が割合は多く、周りの森と良く馴染んでいた。

この日俺は初めて祖母の家に来たんだ

何故かって?

 それは、妖精に会いたかったからさ!

 祖母は母と父の家に来るとよく妖精の話を俺にしてくれた、そこで俺は祖母に聞いたんだ。

『なんで、おばあちゃんはそんなに妖精さんの事を知ってるの?』って、そうしたら祖母はそれは嬉しそうにこう言ったんだ『それはそうだとも、だってね?おばあちゃんのお家には、本物の妖精さんが遊びに来るんだよ』って、祖母の言葉は子供の好奇心を揺り動かすには十分だった。

俺は目を輝かせ、ワクワクを体で表す様に両手をパタパタさせて、

『僕も妖精さん見たいよ!おばあちゃんっ僕にも見せて!ねえお願い‼僕にも見せて!』

 祖母は少しだけ困った顔をして、でも、どこか嬉しそうに続ける。

『そうだねえ、幾つか約束事を守ってくれるのなら、歓迎するよ』『ヤッター』 俺は早速祖母に約束をして、夏休みには遊びに行く約束もした。

 そう、そして祖母の家に来た俺は、本物の妖精に出会ったんだ………………



  ~~~お婆さんの家へ遊びに来た少年は、お婆さんの内緒の妖精を見つけました。でも、妖精に見えている事を気づかれないように近くに咲いている花を見ているふりをして近づいて行きます。

「わぁ~おばあちゃん、このお花本当にきれいだね。」

「そうでしょう、うちの自慢のお花だからね。」

これは、この二人だけの秘密です。”妖精”のお話しをする時は”お花”という事にする。

 それが約束その1。

しばらくの間は、妖精を眺めていた少年でしたが、日に日に妖精と友達になりたいと思うようになりました。

でも、もし妖精に話しかければ妖精はもうこの場所に来てはくれなくなるかもしれません。

だからお婆さんは


『妖精さんに喋りかけてはいけないよ、妖精さんをビックリさせてしまうから。」

それが約束その2。


 少年は、妖精さんと離れたくなくて、お婆さんとの約束を守ろうと思うのです。


 そして最後の約束は、

3時のおやつと飲み物をほんの少し残して置くことです。


『ねぇおばあちゃん、なんでお菓子とお茶を残すの?』

『それは見てのお楽しみだよ。さっ少しの間ここから離れて様子を見ていてご覧。』


 しばらくすると、テラスまで妖精さんがやって来て、テーブルに置いてあるお菓子とお茶を美味しそうに頬張らせています。

『おばあちゃんっ妖精さん美味しそうに食べてるね』

『えぇ、そうだね。』

そうやって楽しい日々が過ぎていき、少年が自分の家へ帰る日がやって来ました。

 どうしたのでしょう?少年は朝から浮かない顔です。

(もう、帰らなきゃいけないんだ………最後にお喋りしたかったな……………)

少年は、居たたまれなくなって、家から離れて一人町へ降りて一人で考える事にしました。これといって行く場所もないので近くの公園のベンチで座っていると、お爺さんに声をかけられました。

『どうしたね、坊やこんな所で一人でおらんで、ホレ遊んでお行きな』

『僕は遊びに来たんじゃないよ、一人になりたくって来たんだ。』

『ほぅ、それはどうして一人ぽっちになりたいだなんて思うんだい?

どれ、この爺に言ってみろ、これだけ永く生きているんだ、坊やの助けになれるかもしれないよ?』

お爺さんはとっても優しく少年に語りかけてくれ少年は悩んでいる事を話してみました。


『ようするに坊やは、その子と話がしたいが、喋りかけられないんだね?

それは坊や、お前さん臆病風に吹かれているんだよ

若いのに難儀だのぅ、じゃがの坊や、悩んでばかりではどうにもならんぞ?

やらんで後悔するよりも、やって後悔したほうがいい。じゃからの坊や、ほんの少し勇気を出してごらん、のぅ?』

少年には、お爺さんの言葉は難しく、それでもなにを伝えようとしているかは解りました。

『お爺さん、ありがとうっ、僕、行ってくるよ。』

『そうか、坊や、行っておいで』


 そして少年はお婆さんの家まで駆け出すのです。

   あの妖精に出会いに行くのです……………

 『妖精さん、みぃつけた! ねぇ、僕と友達になって、それで一緒に遊ぼう、ね?』

妖精は最初びっくりしていたけれど、答えは満面の笑みで返してくれました。 

 ~~~~~~~(秘密の客人終わり)



 この絵本は妖精の笑顔で終わっている。少年と妖精が友達になるハッピーエンド

 でも、実際の俺はこの物語のようには出来なかった…

最後の最後でまたしても、臆病風に吹かれて俺は…かけたい言葉を……小さな一歩を……踏み出せずに

 蓋をした。


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