表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/64

五日目

 一睡もできずに朝を迎える。今日も木の枝にまたがり、意識はもうろうとしていた。寒さか眠気かわからないが、文字を書く手が震える。朝食に乾パンを一枚かじるが、半分ほどで食べられなくなる。歯が立たないというべきか、固くて噛みきれないのだ。歯は丈夫だったはずなのに。歯が痛んだというよりは、顎の力が弱っているように思われる。水を飲んで食事を終わらせる。そういえば水の容器はプラスチックだったせいか、あのナメクジみたいな生き物に溶かされずに済んだ。食料よりは長持ちするだろう。水だけで人間は一か月生きられるとか聞いたことがある。うろ覚えの知識なのでこれも当てにならないが、それならこの状態でも生きていけるのかもしれない。

 今日は風がある。少し冷たい。もしかして雨が降るのかもしれない。体がぬれると辛いだろう。なにか温められるものはないだろうか。何気なく焚火のあたりを見ると、取り出した寝袋が転がっている。そう言えば一度もあれを使っていない。危険な場所で手足を拘束される寝袋なんて使いようがないだろう。ついでに昨晩、爬虫類らしい何かが集まっていた場所も見る。私が落とした大きめの石はそのままに、中身はすっかりきれいになっていた。透き通る外皮だけが、ひらひらと風に揺れている。あのナメクジみたいな生き物でも食べられるのなら、今度見つけたら食べてみるべきだろうか。いやいや想像したら気持ち悪い吐きそう。なんてこと考えるのだ私は。まあでもいずれは食べてみないといけない日が来るのかもしれない。もうだめだ変なことばっかり考える忘れよう忘れよう私忘れろ。それにしても眠いし寒い。手がかじかんできたので今日はもうやめよう。



 夜になった。あめだ。やめると決めたのにまた書いてる。

 眠れなかったからやっぱり頭がもうろうとしている。ここへきてからどれくらい寝たんだったろうか。食欲がわかないのであめをなめる。甘さがしみわたる。すこし頭がすっきりとした気がする。風がふくとあめのしずくが顔にあたる。冷たくてさむい。だけど意外と、木の下だとあめが防げるらしい。それほどぬれないですむのは助かる。ライターだけはぬれないように気をつけないといけない。

 あめだからか枝にたくさんの動物が見えた。よく見る鳥もいたし、ねずみみたいな小動物もいた。とかげみたいなやつもいっぱいいる。人間を怖がらないところを見るからには、人の入らない森なんだろうなあと思う。やっぱり森をあるいて町をさがすことは無ぼうだったのだろう。ここにとどまって正解だった。まあもしかしたら、どっちにしても死ぬだけなのかもしれないけど。

 そういえば今日は珍しくゆめを見た。大学のゆめだ。なんということのない普通のゆめで、大学の友だちが出てきた。みんなげんきかな。あかるい子が多かったし、ここにいてくれたら、すこしはらくだったかもなあ、などとついつい考えてはくらい気持ちになる。思いだすとつらくなる。


 あ、そうだ。あめだ。もしかして水をあつめられるかもしれない。のみ水にならなかったらどうしようかとも思ったけど、とりあえず空きかんを枝のちょうどよさそうなところにひっかける。水があれば人間一か月は生きられるらしい。しょうじきうろ覚えだけど、ほんとうならこのまま生きてまてるかもしれない。

 それにしてもねむい。いっすいもしていないせいだ。でもゆめをみたんだっけ。

 いいゆめだったなあ。友だちとごはん食べたい。みんなげんきかなあ。あいたい。やっぱり死にたくない。にんげんは水だけでも一かげつは生きていられるらしいし、死なないように生きていきたい。ああでもうろおぼえだから、ほんとうはどうなんだろ?みずのもう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ