表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/64

名刺・取説・二つの手紙

―――――――――――――――――

NEU次元工科学研究所所長

フルドリヒ大学名誉物理学博士

   ルドルフ・リヒテンベルグ


経歴:

 新暦289年4月18日 出生

 西欧文化圏ウルテンデルク州 出身

 フルドリヒ大学 理学部次元物理学科 卒業

 同大学にて次元移転論を研究。工学部との共同実験により、世界初の次元間移動を成功させる(320年)。以降NEUの後援を受け、次元工科学研究所を設立(332年)。初代所長就任。

 345年、生物の移転実験に成功。次元転移装置として、ディメンショナーの存在が脚光を浴びるようになる。


著書:

 次元物理学の展開(サンライズ・サイエンス社)

 工学シリーズ・次元工学(共著)(ニュー・ジェネレイト社)

 無数の世界・無数の科学(ニュー・ジェネレイト社)

 花と数式(草木の友出版)


趣味:

 ガーデニング・植物観賞

 (自然に勝る美しいものはない。たとえどれほど完璧な数式であっても!)


ホームページ:

 http://×××××


連絡先:

 E-mail ×××××@×××

 Tel ×××-×××-×××

                       Ludolf=Lichtenberg

―――――――――――――――――








【無線機(トランシーバー)の簡易取扱説明書】

※こちらは説明書の簡易版です。詳しい取扱い方法は、本書記載のページ番号を参照に、製品付属の冊子『取扱説明書』をご覧ください。


本製品は、送受信可能な無線機に次元通信機能を備えた次元間トランシーバーです。(特許出願中)

クリアな音声と高度な電波感知機能に加え、直感的な操作を可能としたデザインを採用。耐熱・耐水性も高く、屋外での携帯にも最適です。



本体説明

・本体電源:

 赤いスイッチです。電源をONにすると、黄色いランプが点灯します。バッテリーが減少すると、ランプが赤色に変わります。赤く点滅しているときは、本製品に異常があります。(→p12)異常の詳細については(→p106)。

・周波数調整つまみ:

 周波数を調整します。本製品は、通信に際して周波数のみを感知します。同じ周波数の無線機と通信することができます。(→p14)

・周波数マスクスイッチ:

 通信したい周波数に合わせたあと、周波数マスクスイッチを押すと、その周波数のみを受信するようになります。この際、周波数調整つまみはロックされます。もう一度押すとロックは解除され、周波数の調整が可能になります。(→p26)

・音量調整つまみ:

 音量を調整します。右に回すほどボリュームは大きくなります。(→p30)

・次元通信ON/OFFスイッチ:

 次元通信のON/OFFを切り替えます。ONにすると、登録された座標次元間と通信のみを行います。OFFにすると、同じ次元内での通信のみを行います。

 ※座標の固定と登録について(→p32)

・次元選択つまみ

 登録された次元を切り替えます。次元は1~15まで登録可能です。(0は初期固定次元(地球次元)です)(→p92)



【!】警告:

 以下の使用方法は本製品を壊す恐れがあります。

 意図しない使用法には、エラー警告音が鳴ります。

 エラー警告音が鳴った場合は、すぐにその使用方法をおやめください。


・電源スイッチやつまみなどを急激に変化させる操作

・登録外次元への通信

・周波数マスクをONにした状態での周波数つまみの操作

・本製品付属外のバッテリーの使用

・長時間水などに浸す行為

・強い衝撃 など

 その他のエラー行為は(→p100)



【?】よくある質問:

・通信ができない

 →本体電源は入っていますか? ランプは点灯していますか?

 →音量は小さくありませんか?

・次元通信ができない

 →次元登録はお済みですか? 次元通信はONになっていますか?

・知らない相手の声が聞こえる

 →通信相手との周波数は一致していますか?

 →同じ型のトランシーバーを利用している、別の相手と通信している可能性があります。

  通信に用いる周波数を変えるなどの対策をしてください。

・ノイズが入る

 →近くで電波を発しているものはありませんか?(雷など、他に電磁波を発するものがある場合、一時的にノイズが入ることがあります)

 →周波数はきちんと合っていますか? マスク機能は使用していますか?

・本体が破損した

 →破損部分にはお手を触れず、すぐに修理センターにご連絡ください。

 修理センター:

  Tel ○○○-○○○-○○○


 その他の良くある質問など(→p126)



故障かな?と思ったら:

 故障の可能性について(→p146)をご確認の上、カスタマーセンターまでお電話ください。

 カスタマーセンター:

  Tel ○○○-○○○-○○○

  周波数 ××kHz 次元番号0









―――――――――

リヒテンベルグ博士へ


 拝啓


 大暑の候。近頃はそちらの次元に行ったきり、めったに研究所にも顔をお出しになりませんが、いかがお過ごしでしょうか。

 こちらはますます戦争が激化し、所員も随分と減りました。研究も停滞し、ディメンショナーの新規開発も遅れております。残された所員だけでは限界があり、新しい成果もないまま時間が過ぎていくばかり。博士がいたころの、活気に満ちた研究所が懐かしいです。

 つきましては、博士。どうかこちらに戻って来てはいただけないでしょうか。

 博士がそちらの世界に渡ったのは、戦争を嫌ってのことであるとは重々承知しております。ディメンショナーが戦争の道具に使われることを拒み、軍部に奪われる前に研究の成果を隠した博士を、私は人間としてたいへん尊敬もしております。

 ですが今は、このディメンショナーこそが、人類を救うための最後の手段でもあります。

 もはやこの戦争は、全人類を滅ぼしかねない状態まで進んでしまっております。

 罪のない人々をこの非情な世界から逃し、別次元で生きていくためにも。人間のためにも、博士の帰還が必要なのです。

 のちほどこちらから、所員を二人ほど送らせていただきます。若くて情熱に満ちた、博士を尊敬する青年達です。

 ぜひとも、彼らと会ってやってください。

 そして、必ずや戻ってきてくださることを、私は確信しております。


 敬具


ショーン・ハワード

―――――――――





―――――――――

リヒテンベルグ博士へ


 拝啓


 残暑の候。そちらの季節はもうすっかり秋めいてきていることでしょうが、いかがお過ごしでしょう。

 そちらで私の遣わした青年たちには、もう会うことができましたでしょうか。いえ、彼らに託したこの手紙を読んでいるといことは、無用の心配なのでしょう。いつものようにディメンショナーで手紙を転移させても良かったのですが、それよりは直接手渡しをした方が、博士も確かに手紙に目を通してくれるはず。そのような愚考により、このような形で博士のお目に触れることとなりました。

 ですが、今回ばかりはどうしても、博士にお伝えしたかったのです。

 私たちの切実な思いを、確実に聞いていただきたかったのです。


 どうか戻ってきてください、博士。

 私たちにはあなたが必要なのです。

 博士の愛した美しい世界。そこに生きる人々を救うために、どうかお力をお貸し下さい。


 敬具


ショーン・ハワード



追伸

 青年たちの説得を聞き入れて下さらなかった場合、私が直接博士の元を訪問させていただきます。

 正面から、腹を割って話をしましょう。まだ、私たちが若かった頃のように。

―――――――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ