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十九日目


今日は


なぜ

いや


曇り空、空気は冷たい

いや


なぜ私はまだ生きているのか


猫と鳥に


私は



私は人間であるか?


ははははは

はは?


??????


私は正気なのか?

それとも正気の振りをした狂人なのか?

いや


いいや、そんなことが書きたいわけではない。





 この手記に何を記すべきか、ずっと迷っていた。今も迷っている。先ほどから意味もなく文字を書いては消し、書いては消し続けている。

 いや、これもまた無意味な文字列だろう。今までの手記の書き方も、意味のある記録というものも思い出せない。

 事実。ありのままの事実をまずは記そう。


 私はまだ生きている。

 猫と鳥によって生かされている。

 彼らの食べ物を与えられ、枯れ葉の寝床に横たえられ、けだものの介抱を受けている。

 はじめはあの、ペットボトルの生臭い液体だった。あれがなくなると、魔物と呼ばれた獣の肉を猫が噛み、柔らかくして私に食べさせる。生で。あれほど恐れていた生でだ。

 私はあれを飲み下し、流し込む。吐き出したい気持ちとは無関係に、体は消化する。思えば、いつから私は物を口にしていなかっただろう。


 生の肉を飲みながら自問する。猫に水を飲ませられ、薬と称する草を噛ませられ、逃げないように監視されながら、何度も自問する。


 私は人間なのか?

 この状態で、生きていると言えるのか?

 わからない。答えは出ない。頭の中でずっと呪いのようにこびりついている。


 死ぬなら人間のように死にたいと思っていた。

 その気持ちは変わらない。ずっと死を考えている。人間らしくありたい。最後まで獣には堕ちたくない。


 それでも与えられたものを無意識に口にし、みすぼらしく生きている。

 猫の温もりの中で眠ると安心する。

 獣のようであっても。みすぼらしく惨めであっても。

 生きていてよかったと思ってしまうのだ。



 この紙とペンさえなければ、文字と言葉を早々に忘れて、いっそ楽になれたのかもしれない。

 まとまらない言葉を書き連ねながら何度も思う。

 正気を失ってしまえば生きるのも楽だった。迷わず死を選べるならそれも楽だった。

 私はまだ、どちらも選べないでいる。

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