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6:高速移動目標

そのとき、前方で索敵していたハンターから声が上がった。

「出たぞ! 蜂、単体だ!」

即座に戦闘態勢を整える。俺が一番前に出て、ハンター達がすぐ後ろに控える。

魔術師たちは街を背にして、射程圏内ぎりぎりの位置まで下がる。


俺の目が平野を高速で飛び回っているキラービーの姿を捉える。

瞬間、蜂は猛スピードで俺の目の前まで迫ってきた。

一瞬で、あんな遠くから移動してくるのか!

騎士のスキル、オートガードが発動する。考える間もなく、盾を持った方の左腕が動く。


蜂の攻撃、左腕に釘を刺されたような激痛が走る。

盾で防いでもでも痛みを感じるということは、予想していたとおりガードの上からでも削られるらしい。

MOBの攻撃力が初期のディフェンス値を上回っているからだろう。

視線だけ動かしてHPバーを確認すると一回のダメージ量は8分の1程度だった。


さらに連続攻撃が続く。戦闘が始まったと思った直後に、もう3発も食らっている。

ハンター達が蜂の脇を駆け抜けて後方に回り込む。魔術師はすでに詠唱を始めているはずだが、 詠唱時間(キャスティングタイム)が長い。


蜂の4発目、完全にLUK頼みだが、即死はなんとか回避できている。

お守りが効いているのかもしれない。HPが残り半分になった。


瞬くような速さで三連撃が追加される。ダメージの蓄積がやばい。即死攻撃に加えて、この連続攻撃はチートすぎる。

次の攻撃を受け止めたら、たとえガードしていても死ぬだろう。回復する余裕もない。こちらがワンアクションを終えるまでに蜂は4回行動できる。

蜂の後方に回り込んだハンターの姿が見えたが、魔術師からの支援魔法(バフ)がまだだ。


蜂が大きくモーションをとり、甲高い音で羽音を鳴らす。

何をされたのかはすぐに分かった。ハンター達が声を上げた。

「まずい、仲間を呼ばれた!」


キラービーが厄介なのは、AGIの高さや、即死攻撃だけではない。すぐに仲間を呼ぶ習性が、あるいはもっとも危険かもしれない。

18人集めたこの大PTがあっという間に壊滅させられる危険性を孕んでいる。魔術師たちのHPでは下手をすれば一撃死もありうる。


蜂が8発目の攻撃モーションをとる。これを受け止めたら、恐らくHPが0になる。俺は歯を食いしばった。

衝撃音とともに真っ赤なエフェクトが散らばる。

デスゲームが事実なのか確かめるべく、俺はすばやく目を開けた。

だが、HPは残っていた。

魔術師が唱えていたフレイムショットが蜂の攻撃を打ち消したのだ。


魔術師たちの詠唱時間(キャスティングタイム)が終了する。

俺たちのターンだ。

「鉄血、下がれ! 後は俺たちがやるっ」

謙信が俺に退避の指示を出す。

俺は邪魔にならないよう、ひと足早く戦闘領域から離脱する。


後方から流星雨のように支援魔法(バフ)が飛来し、それに合わせてハンターたちはハイドアタック×6を開始。

移動しながら後方を振り返る。戦闘の行方が気になった。


三方向からの同時アタックだ。まず避けられる心配はないはずだが。


一撃目 miss!

二撃目 miss!

三撃目 miss!

四撃目 miss!

五撃目 miss!

六撃目 HIT!


蜂が異常すぎる回避性能で、ほとんどの行動をかわしていくのが見える。

戦闘フィールドを高速で飛び回るせいで、ほとんど目に追えない。


ハンターのラスト一撃が命中し、わずかに蜂の動きを止める。すかさず魔術師の第二波。

弾幕のごとく降り注ぐ合計11発の火弾のうち、当たったのはわずか2発。オートターゲットではないせいで、狙いを絞りきれていなかった。

予想以上に硬い。倒しきるには骨が折れそうだ。


蜂が仲間を呼んでから時間が経っている。恐らく、前線では誰かが犠牲になっている。

撤退の声が聞こえるが、全体の反応が鈍い。嫌な予感がする。

俺は移動しながら回復ポーションを一気飲みする。Lv1で総HP量が少ないため、ポーション一個で全回復する。


魔術師たちはターゲットを絞ろうとして苦戦していた。

蜂がハンターたちの攻撃をすり抜けて神速で回り込み、魔術師隊の後方に現れる。

街の入口を塞ぐ気だ。しかし、AIがそういう行動をとることを予想してなかったわけじゃない。


俺は魔術師の陣地を突き破って、最後方に躍り出る。

出会い頭、俺の盾が蜂の攻撃とぶつかる。


どうやら運命は俺に味方してくれたらしい。合計8発の攻撃を耐え凌ぎ、蜂の動きを止める。

この時を待っていたように11発の炎の矢が蜂に襲いかかる。周囲を埋め尽くすようなエフェクトで蜂のHPを削っていく。

エフェクトが晴れる頃には、跡形もなくなっていた。


蜂は倒した。あとは無事帰還すれば俺たちの勝ちだ。

魔術師たちが次々と門に飛び込んでいく。門の前に陣取っていたおかげで撤退が早い。

残るはハンター達だ。だが、数が足りない。謙信の姿も見当たらなかった。


遠くに目をやると、蜂の大群にたかられるハンターの姿が見えた。群れが群れを呼び、爆発的に増えたのだ。MOBに囲まれた者たちは置き去りにするしかない。謙信もそのなかに取り残された。

残された半数のハンターが後ろも振り返らず街のなかに駆け込んでいく。

最後に俺が下がり、作戦は終了。


戦果はキラービー、一匹撃破。

この戦いによってハンター3人が死亡。そして俺たちは攻略へ導いてくれるはずの大事なリーダーを失った。


次の次くらいで、話が軌道に乗る予定。

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