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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第92話:見えない街

執務室の空気が、かつてないほど重く沈んでいた。ミラの提示した広域魔導スキャンの結果が、地図上の空白地帯に、あるはずのない熱源を示していたからだ。


「係長、王都西部の廃棄物処理場に隣接する未開発区域です。地図上では荒野として処理されていますが、微弱な魔力の消費反応と、大量の生活排水の流出が確認されました。推定居住人口、五万人を超えています」


五万人。一国の地方都市に匹敵する規模だ。俺は手元の報告書をめくり、その内訳に目を走らせた。


「帰還兵、元難民、そして解体された軍需工場を追われた労働者……。平和がもたらした繁栄の陰で、受け皿を失った者たちがそこに集まっているのか」


彼らの大半は、戸籍を持たないか、戦乱で記録が消失している。あるいは、あまりに高効率化された現在の社会システムに適応できず、自らドロップアウトした者たちだ。


「制度の外にいる、か。俺たちが整えた完璧な管理システムの、外側、に、もう一つの街ができていたわけだ」


サニアが、痛ましそうに地図を見つめた。


「彼らには市民権がなく、正規の配給も受けられず、公的な仕事にも就けません。だからこそ、独自の非合法なコミュニティを形成し、俺たちの知らないルールで生きている。文字通り、見えない街です」


俺はペンを置き、深く椅子に背を預けた。


「不備だな。それも、俺たちの管理が行き届きすぎて生まれた、最悪のバグだ」


平和という名の完成されたパズルの中に、彼らをはめ込む場所がない。数字に現れない存在は、この世界では存在しないも同然として扱われてしまう。


「カイル、リク。現地へ向かう準備をしろ。まずはその街が、どれほど俺たちの法律から逸脱しているか、この目で確かめる必要がある。事務机の上だけでは、この不備は直せない」


俺は窓から西の空を見た。夕日に染まる地平線の向こうに、システムから切り捨てられた者たちの吐息が揺れている。

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