表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/149

第88話:危機回避

ミラがモニターを操作すると、大陸地図を覆っていた不気味な赤色の警告灯が、次々と穏やかな緑色に変わっていった。


「係長、主要な被災地における最低限のカロリー摂取量、および飲料水の確保が完了しました。餓死者の発生報告は、現時点でゼロです」


ミラの報告に、張り詰めていた執務室の空気が一気に緩んだ。未曾有の干ばつという、大陸規模のシステムエラー。俺たちはそれを、情報の透明化と物流の再編という事務的な力で押さえ込んだのだ。


トウマが眼鏡を拭きながら、手元の集計表を閉じた。


「物流網の稼働率は九割を維持。各国の備蓄拠点を強制的に連結したことで、局所的な食料の偏りを事務的に解消できました。計算上、次の収穫期まで耐えられる在庫は確保されています。無駄な廃棄も一切出していません」


サニアもまた、山のような署名済みの合意書を整理しながら頷いた。


「不当な価格吊り上げや買い占めを狙っていた商人たちも、国際条約に基づく罰則と、我々の圧倒的な供給量の前には沈黙せざるを得ませんでした。法的な不備を突く余地を完全に塞いだ成果ですね」


窓際で外を眺めていたカイルが、安堵したように息を吐いた。


「勇者様たちの救助部隊も、最後の孤立村への給水を終えて帰還するそうです。一人の犠牲者も出さずに大干ばつを乗り越えるなんて……本当に、奇跡みたいです」


俺は冷めきったコーヒーを飲み干し、椅子に深く背を預けた。


「奇跡じゃない。ただの管理だ。不備を見つけ、数字を並べ替え、必要な場所へ必要な分だけ送る。それを徹底した結果に過ぎない。英雄が魔王を倒すよりも地味だが、救った命の数は計算上、過去のどの戦争の勝利よりも多いはずだ」


平和な時代において、世界を救うのは英雄の一撃ではなく、無数の事務官たちが積み上げた正確な処理の集積だ。俺はモニターに並ぶ膨大な「異常なし」の文字を見つめた。


「平和を維持するコストは高いが、破綻させるコストに比べれば微々たるものだ。さて、危機は去ったが、事後処理の山が待っているぞ。カイル、まずは各支部への感謝状と、支援物資の清算書類をまとめろ」


「うっ……分かりました! 喜んでやります!」


カイルの返事には、かつての迷いはなかった。


ペンが紙の上を走る音だけが、静かな夜の執務室に響いていた。一つの巨大な不備を修正し終えた達成感と共に、俺たちは次の日常へと戻っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ