表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/152

第87話:総動員

大陸全土を襲う未曾有の干ばつに対し、俺は「総動員体制」の発令を承認した。かつての戦争で軍隊が動員されたように、今は事務官と物流、そして情報網が、一つの目的のために結集しようとしている。


執務室の壁一面に投影された大陸地図には、網の目のように張り巡らされた「雑務課支部」のネットワークが青く点灯していた。


「各支部の自律稼働を開始。現地の貯水状況、農作物の被害予測、住民の健康状態、すべてのデータが中央へ集約されています」


ミラの指先が、空中に浮かぶキーボードを叩き続ける。彼女が構築した情報網は、今や大陸という巨大な生命体の神経系として機能していた。


「トウマ、輸送効率はどうなっている」


「物流網を完全に水優先に切り替えました。魔導コンテナを用いた『水の定期便』が、一時間ごとに主要都市へ到着しています。また、サニアさんが調整した緊急水利権に基づき、上流の国々からの放流量もリアルタイムで監視・制御しています」


トウマが冷静に報告する。それはかつての軍事遠征をも上回る、緻密で大規模な資源移動だった。


「係長、現場からも続々と報告が入っています! 勇者様の救助部隊が、物流の届かない山奥の村々へ小型の浄水装置を運び込んでいます。俺たちの作ったルートが、確実に命を繋いでいます!」


カイルが興奮した様子で端末を指し示した。


「落ち着け、カイル。英雄の活躍を支えているのは、お前がさっき承認した通行許可証と燃料割当表だ。現場が動けるのは、この部屋で数字の整合性が取れているからに他ならない」


俺はネクタイを締め直し、次々と舞い込む決済要求を捌き始めた。


平和な時代の総動員とは、誰かに銃を持たせることではない。大陸中のリソースを、最も必要としている場所へ、最も効率的な経路で届けることだ。


「これほど巨大な組織が、一つの不備を直すために完璧に連動している。……事務屋冥利に尽きるな」


俺は皮肉を込めて呟き、次の指示を飛ばした。


「全支部へ通達。一滴の水の無駄も、一円の予算の不備も許さない。この干ばつという巨大な赤字を、俺たちの事務能力で黒字に叩き叩き直すぞ」


事務屋たちの静かな戦いは、今、最高潮を迎えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ