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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第86話:大干ばつ

空には雲一つなく、焼き付くような太陽が大陸を照らし続けていた。ミラが提示した広域魔導マップは、刻一刻と赤く染まっていく。


「係長、大陸全土の降水量が平年の三割以下に落ち込んでいます。河川の水位は危険水域を超え、このままでは一週間以内に主要都市の飲料水供給が停止します」


ミラの声には焦りはないが、提示された数字は破滅的だった。かつての戦争が人災なら、これは自然というシステムが発生させた巨大な致命的バグだ。


俺はネクタイを緩め、冷房の効きが悪い執務室で指示を飛ばした。


「トウマ、整備した物流網を、食料から水へと完全に切り替えろ。魔導コンテナをすべて水槽車に換装し、余剰のある国から枯渇している地域へピストン輸送を開始する」


「既に計算は済んでいます。各支部の地下貯水槽を解放し、物流ハブを水の中継基地として機能させます。ただし、これには各国の水利権の調整が不可欠です」


トウマが冷静に付け加えると、サニアが即座に分厚い条約集を広げた。


「既に策定済みの統一国際条約から、非常時条項を発動させます。国境を跨ぐ河川の独占を禁止し、共有財産として再定義する手続きに入りました。反対する国には、次期の食料支援割当をゼロにすると通告してあります」


「……相変わらず容赦ないな。だが、背に腹は代えられない」


俺がそう言うと、カイルがモニターに映る映像を指差した。そこには、干上がった大地で巨大な地下水脈を掘り当てようとする勇者部隊の姿があった。


「勇者様たちは現場で戦っています。俺たちもここで、数字を動かして戦うんですね」


「ああ。誰かが蛇口を捻れば水が出る。その当たり前の日常を維持するために、大陸全体の資源を再分配するんだ。不公平な渇きを、事務的に修正してやる」


平和という名の精巧な機械は、未曾有の天災を前にしても、悲鳴を上げながら回り続けていた。俺たちはペンを武器に、大地を蝕む赤字を一つずつ消していく。

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