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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第83話:外交網

情報網と物流網が完成したことで、次に浮き彫りになったのは「法」という名の不備だった。


国ごとに異なる商法、権利義務、そして煩雑な外交儀礼。これらが複雑に絡み合い、せっかく整えた効率化の足を引っ張っている。サニアが俺の机に置いたのは、大陸全土で共有される「統一国際条約草案」という名の、分厚いバグリストだった。


「係長、全加盟国の法典をすべて精査し、相互の矛盾点を完全に洗い出しました。この条約を批准させることで、大陸というシステムは一つの法的な共通基盤の上で動作するようになります」


彼女の調整能力は、もはや一国の外務省を遥かに凌駕し、大陸全体の「法務局」として機能し始めていた。


会議の席で、ある小国の代表が顔を真っ赤にして異議を唱えた。

「我が国の歴史ある法体系を、事務的な合理性だけで書き換えるというのか! これは主権への侵害だ!」


サニアは冷徹なほどに完璧な微笑みを絶やさず、端末に詳細な比較データを表示させた。

「伝統を否定しているわけではありません。ただ、貴国の法律第十二条が、隣国の最新の輸出入規制と論理的に衝突しているという事実を指摘しているだけです。この不備を放置すれば、貴国に届くはずの医療品が、事務手続きの遅延で三ヶ月停滞することになりますが、それでよろしいですね?」


代表は絶句し、震える手で批准書にペンを走らせた。彼女にとって、外交とは華やかな社交の場ではなく、大陸という巨大なプログラムの「デバッグ作業」に過ぎないのだ。


「これで、国境を越えた権利の保証と紛争解決のプロトコルが整備されました。もはや言葉の壁や文化の違いは、実務を停滞させる理由にはなりません」


サニアが整えた外交網により、大陸は法という名の見えない糸で一つに縫い合わされた。俺は、整然と並んだ条約の写しを見つめ、静かに呟いた。


「世界がどんどん、一つの巨大なオフィスになっていくな」


背後でカイルが、その事務的な平和の完成に圧倒されたように立ち尽くしていた。

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