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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第81話:情報網

執務室の大型モニターに、大陸全土を網羅する光の筋が映し出された。それは主要都市だけでなく、設置された各支部、さらには辺境の物流拠点までを繋ぐ巨大な神経網のようだった。


ミラが感情の起伏を感じさせない声で報告する。


「各国の支部を経由したデータリンクが完成しました。これにより、大陸全土の物資の移動、通貨の流通量、そして異常な魔力の揺らぎをリアルタイムで監視することが可能です」


俺は椅子を回し、その膨大な情報の奔流を眺めた。


「監視、か。聞こえは悪いが、不備を未然に防ぐにはこれ以上の手段はないな」


「はい。例えば、ある特定の地域で保存食の買い占めが発生すれば、即座にアラートが鳴ります。それが飢饉への備えなのか、あるいは武力衝突の準備なのかを、現地の事務官が確認し、中央へフィードバックする仕組みです」


ミラの構築したこの情報網は、単なる通信手段ではない。数字と事実を共有することで、憶測やデマが入り込む余地を事務的に排除する「真実のインフラ」だった。


「これでは、どの国も隠し事は不可能だな」


背後で書類を整理していたカイルが、画面を見て溜息を吐いた。


「英雄が闇に潜む悪を暴く必要もなくなりましたね。ミラさんが数字を叩くだけで、悪事の兆候が赤字として浮き彫りになるんですから」


「悪事を裁くのが目的じゃない。非効率な混乱を避けるのが目的だ」


俺はコーヒーを一口飲み、ミラに向き直った。


「ミラ、このネットワークの管理権限を厳重にしろ。これは平和を維持する最強の武器だが、一歩間違えれば大陸を支配する独裁の道具にもなりかねない。俺たちはあくまで事務屋であって、神様になるつもりはないからな」


「承知しています。アクセス権限は多重化し、常に相互監視が働くよう規約を設定済みです」


ミラは淡々と答えたが、その指先はどこか誇らしげに見えた。


情報の不透明さという不備が解消された世界。

俺たちは、大陸で最も多くの「真実」を知る組織へと進化を遂げていた。

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