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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第79話:平和の作り方

深夜の執務室。カイルは窓の外、遠くの国境付近で起きた小さな小競り合いの報告書を読み、悔しげに拳を握っていた。


「係長、どうして人は争いをやめられないんでしょうか。これだけ調整を続けて、不備を直しているのに、それでも誰かが誰かから奪おうとする」


俺はペンを置き、冷めたコーヒーを一口啜った。


「カイル、まず一つ覚えておけ。争いは止められない」


カイルが驚いたようにこちらを振り向く。


「え……? 調整局の仕事は、平和を作ることじゃないんですか?」


「平和を作るというのは、争いの火種を物理的に消し去ることじゃない。人間には欲望があり、隣の芝生は常に青く見える。生存本能がある限り、利害の対立は永遠に消えない。それを根絶しようとするのは、事務屋の傲慢だ」


俺は地図を指差し、言葉を続けた。


「だが、管理はできる」


「管理……ですか?」


「そうだ。戦争を始めるためのコストを跳ね上げ、平和を維持することで得られる利益を最大化する。武力行使を選択した瞬間に、その国が事務的に破綻するようにシステムを組むんだ。憎しみは消せなくても、赤字を垂れ流してまで戦う馬鹿はそういない」


カイルは呆然と立ち尽くしていた。俺が提示しているのは、崇高な博愛主義ではなく、冷徹な損益計算による平和だった。


「感情を制御しようとするから無理が出る。俺たちはただ、数字の整合性を整えるだけでいい。不当な略奪よりも、公正な取引の方が儲かると分かれば、大抵の人間は剣を収める。それが俺の考える平和の作り方だ」


「……ロマンはないですが、一番現実的ですね」


カイルは少しだけ納得したように、力なく笑った。


「ロマンで腹は膨れないが、正確な配分計画なら数万人を救える。英雄の理想よりも、俺の帳簿の方が重いんだよ」


窓の外では、勇者が無言で夜の街を見守っている。彼もまた、俺のこのドライな平和論を認めざるを得ない一人だった。

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