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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第77話:新人

執務室のドアが勢いよく開き、一人の青年が入ってきた。


整った顔立ちに、鍛え上げられた体躯。その背中には、事務屋には似つかわしくないほど立派な大剣を背負うためのベルトが巻かれている。


「今日から雑務課に配属されました、カイルです! 正直に言います、俺の夢は勇者様のような英雄になることでした。なぜこんな、紙をいじるだけの部署に回されたのか納得がいっていません!」


青年の威勢のいい声が響き、作業をしていたミラのペンが止まる。隅で警護をしていた勇者が、面白そうに鼻で笑った。


俺は手元の履歴書から目を上げ、カイルという青年をじっくりと眺めた。


「英雄になりたいなら、あそこにいる本物に弟子入りでも申し込め。あいにくだが、ここにはお前が斬るべき魔物も、守るべき姫もいないぞ」


「……分かっています。でも、この力をもっと世界のために、華々しく使いたいんです!」


俺は溜息をつき、足元に置いてあった巨大な段ボール箱を机の上に持ち上げた。中には、各地から回収された不備だらけの物資受領書が詰まっている。


「なら、まずはその溢れる正義感で、この『不備』という名の魔物を殲滅しろ。各地の村から届いた受領印の漏れ、日付の矛盾、重複した申請。これらをすべて整理し、一円の誤差もなく帳簿にまとめ上げろ」


カイルは絶句した。


「これが……世界のためになるんですか?」


「ああ。お前がこの一枚の紙を正確に処理すれば、どこかの村に予定通り食料が届き、一人の子供が空腹から救われる。お前の大剣を振るうよりも、確実に、かつ広範囲に命を救えるはずだ。平和な時代の英雄ってのは、剣ではなくペンで戦うんだよ」


カイルはおぼつかない手つきで、最初の一枚を手に取った。隣でミラが冷淡に付け加える。


「一箇所の計算ミスにつき、再教育として階段の上り下り百回を追加します。体力があるようですから、ちょうどいいでしょう」


青年の顔が青ざめていく。


「……勇者になるより、過酷な気がしてきました」


「それが実務だ。ようこそ、戦後調整局へ」


俺は再びペンを取り、自分の仕事に戻った。新しい歯車が馴染むまでには時間がかかりそうだが、この平和を維持するコストの一部だと思えば安いものだった。

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