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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第76話:世界最強

反乱計画が跡形もなく消え去った数日後、王国軍の将軍が一人で執務室を訪ねてきた。


彼は俺の机の上に置かれた、反乱分子たちの資産凍結リストと物流停止の実行記録を黙って見つめていた。


この部署が設立された当初、軍部も政府もここを厄介者の寄せ集めだと蔑んでいた。組織に馴染めない偏屈な事務屋、戦場を追われた元兵士、感情の欠落した記録員。軍隊という完璧な歯車からこぼれ落ちたゴミを集めた場所、それが雑務課の正体だったはずだ。


将軍はかつての侮蔑を思い出し、目の前の理路整然とした成果報告書との乖離に、言いようのない寒気を覚えていた。


「剣を振るわず、一滴の血も流さず、戦場を経験した老兵たちを文字通り干上がらせたか」


将軍が重々しく口を開く。俺は次の決済書類に判を突きながら、事務的に答えた。


「当初の評価通り、ここは不適合者の集まりですよ、将軍。ただ、俺たちは個人の武勲よりも、全体の数字が正しく並んでいることに価値を置いているだけです。効率の問題ですよ。彼らを物理的に排除すれば、遺族への補償や施設の修繕費が発生します。事務的に存在を消すのが最も低コストでした」


将軍はそれ以上何も語らず、苦い顔で窓の外を見つめた。そこには、勇者の護衛付きで平穏に業務をこなす職員たちの姿がある。寄せ集めの不適合者たちが、今やこの世界の平和を管理する最も精密な装置へと変貌していた。


「……用件がそれだけなら.....すみませんが、次の会議の資料を作らなければならないので」


俺が視線を書類に戻すと、将軍は小さく頷き、静かに部屋を去っていった。


執務室を出て、人気のない廊下を歩く将軍の足取りは重い。彼はかつての戦争で、武力の大きさが世界の理だった時代を思い出していた。規約と数字という目に見えない鎖で、最強の戦士さえも身動き一つ取れなくしてしまう。その現実が、老将にはひどく空恐ろしく感じられた。


将軍は誰に聞かせるでもなく、小さく独り言を漏らした。


「……軍隊より厄介だ」


その呟きは、忙しくペンを走らせる俺たちの耳に届くことはなかった。


平和という巨大な歯車を維持するために、俺は今日も数字の海に潜り、ただ淡々と不備を修正し続ける。

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