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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第73話:古い将軍

軍部の執務室には、時代に取り残されたような重苦しい空気が漂っていた。壁にはかつての激戦の地図が貼られ、机の上には削り取られた予算案が散らばっている。


「……事務屋。貴様らは、この国を骨抜きにするつもりか」

王国軍の古参である将軍が、低い声で俺を睨みつけた。その手には、俺が提出した次年度の軍事費削減案が握られている。


「骨抜きにしているわけではありません。過剰な筋肉を削ぎ落とし、国民に栄養を回すよう再設計しているだけです」

俺は表情を変えず、淡々と答えた。


将軍は激昂し、机を激しく叩いた。

「黙れ! 平和だ、復興だと浮かれている間に、兵士たちの志気は地に落ちた。かつては国の盾と讃えられた英雄たちが、今や災害救助の穴掘りや、小国の水門管理に駆り出されている。軍の価値をここまで貶めて、満足か」


「価値を貶めているのではなく、需要が変わったのです。将軍、戦うことが最大の価値だった時代は終わりました。今の世界が求めているのは、破壊の技術ではなく、維持のための技術です」


「詭弁を! 強大な武力こそが、平和を担保する唯一の手段ではないのか。貴様らが進めている武器の買い取りや、他国との経済協力など、いつか必ず綻びが出る。その時、誰がこの国を守るのだ」


将軍の言葉には、戦場を生き抜いてきた者特有の切実な重みがあった。彼にとって、平和は自らの存在意義を奪う残酷な不備に過ぎないのだ。


「その『いつか』の不確定なリスクのために、現在の復興を停滞させるわけにはいきません。もし綻びが出たとしても、それを外交と事務で修復するのが我々の仕事です。剣を抜かずに解決できる仕組みを作ることこそが、本当の安全保障だと考えています」


「……ふん、理想論を。事務屋、お前の数字には血が通っていないな」

将軍は忌々しげに書類を投げ捨て、窓の外を見つめた。そこには、訓練ではなく瓦礫の撤去へと向かう兵士たちの列が見える。


「血を流させないために数字を扱っています。将軍、あなたの懸念も一つのリスクとして計上しておきましょう。ですが、予算の執行は予定通り進めます」


俺は部屋を後にした。背後で将軍が深く溜息を吐く音が聞こえたが、振り返ることはしなかった。古い英雄たちが役目を終えていくことも、平和というシステムの管理コストの一部なのだ。

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