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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第63話:勇者の現場

かつて戦場を駆けていた勇者の姿は、今や崩壊した街や災害の最前線にあった。


彼の背負うものは重い剣ではなく、救助を待つ人々の命を繋ぐための道具や、巨大な資材へと変わっている。


「勇者様、あちらの家屋の倒壊が激しく、生存者の確認が困難です」

救助隊員が切迫した声で報告する。


勇者は静かに頷き、かつて魔王の軍勢を薙ぎ払ったその腕を、瓦礫の山へと差し入れた。

「無理に動かせば二次災害が起きる。俺が支えている間に、下の隙間から救出を進めてくれ」


彼は一人で数十トンの重量がある梁を支え続けた。その額からは汗が流れ、血管が浮き出ている。だが、その瞳に宿っているのは破壊の衝動ではなく、ただ一つの命を救おうとする強い意志であった。


「助かった……! 子供が助かりました! ありがとう、勇者様!」

瓦礫の中から救い出された人々が、勇者の元へ駆け寄る。


「礼を言うのは早い。まだ救助を待っている人間がいる。次の地点へ向かうぞ」

勇者のぶっきらぼうな返答に、周囲の作業員たちは頼もしげな笑みを浮かべた。


街の広場で休憩をしていた際、一人の老人が勇者に話しかけた。

「勇者様、昔の話で申し訳ないが、あんたが戦っていた頃は正直怖かったよ。空を切り裂き、大地を割るあんたの力は、我々からすれば魔王軍と同じ、恐ろしい破壊の化身だった」


勇者は手に持った水筒を置き、老人の言葉に耳を傾けた。

「……そうだろうな。俺自身、この力を壊すためにしか使えないと思っていた」


「だが、今は違う。あんたが現場に来ると、みんなが『もう大丈夫だ』と笑うんだ。今のあんたは、戦う英雄ではなく、私たちを助けてくれる本物の英雄だよ」


勇者はその言葉を噛み締めるように、汚れた自分の手を見つめた。

かつてその手は返り血に染まっていた。だが今は、救い出した誰かの温もりと、復興の泥にまみれている。


「助ける英雄、か。……悪くない響きだ」

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