第55話:魔物の後始末
戦争という巨大なプロジェクトが終了しても、戦場に残された負の遺産は消えない。かつて魔王軍や王国軍が実験的に生み出した人工魔物たちが、管理者を失い、各地で野生化し始めている。
人工魔物は兵器として設計されており、自然界の生態系を無視した驚異的な繁殖力と攻撃性を持つ。周辺住民への被害が拡大する中、現場では対立が続いていた。
「今すぐ全個体を討伐すべきだ。住民に被害が出るのは時間の問題である」
軍の残党は剣を構え、即時殲滅を主張する。
「これらは貴重な戦時遺産だ。保護し、その生態を解明すべきである」
人道支援を謳う活動家たちは盾を並べ、殺処分に反対する。
議論は平行線を辿り、具体的な対応は遅れる。その間にも、人工魔物による被害報告だけが積み上がっていく。
俺は双方の意見を資料として受理し、一枚の図面を広げた。
「討伐も保護も、現状のリソースではコストがかかりすぎる。我々がすべきなのは管理だ」
提案したのは、特定の閉鎖区域を「人工魔物管理区域」として設定し、そこに個体を集約させる案である。殺す必要も守る必要もない。ただ、そこから出さない仕組みを作る。
トウマが即座に実務に動く。
「捕獲用の檻、移送するための大型馬車、そして隔離地域への定期的な物流ルート。これらを商会と協力して手配する。廃棄物処理の特別枠を使えば、予算の確保も可能だ」
事務的な手際によって、混沌としていた現場に収容の手順が組み込まれていく。
だが、その計画の最中に一人の男が窓口を訪れた。王立アカデミー所属の、偏屈そうな表情をした学者である。
「待ちなさい。その管理区域に入る個体を、すべて私に研究させてもらいたい。彼らの魔力器官は、次世代のエネルギー源になる可能性がある」




