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勇者になれなかった俺、配属先の「雑務課」で世界最強の組織を作ってしまう  作者: 限界まで足掻いた人生
雑務課 業務日誌総括

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第52話:世界一忙しい窓口

新設された「戦後調整局 実務担当」の執務室は、平和が訪れたはずの街の中で、もっとも殺気立った場所へと変貌していた。


看板を掛け替えてわずか数日。扉が開くたびに持ち込まれるのは、祝杯の酒ではなく、誰の手にも負えなくなった厄介な「不備」の詰まった書類鞄ばかりだ。


投げ捨てられる責任

デスクの上には、地層のように積み重なった帳簿と報告書が、物理的な圧迫感を持って俺の視界を塞いでいる。


帰還兵の再配置:前線から戻った数万人の兵士たちの居住区確保と、治安維持のための再編。


壊れた都市の復興契約:瓦礫の山となった旧激戦区のインフラ整備。商人と貴族が利権を巡って泥沼の争いを展開中。


魔王軍との物流調整:停戦協定に基づく食糧と魔石の交換レート策定。一歩間違えれば再び飢餓と暴動の火種になりかねない。


これらはすべて、軍の上層部が「平和になった」と宣言した瞬間に、彼らのデスクから掃き出されたゴミだ。


誰にも愛されない仕事

「……なんだか、世界中の『困った』が全部ここに集まってきている気がします」


影から現れたミラが、呆然とした様子で天井まで届きそうな書類の山を見上げて呟いた。彼女の報告によれば、王都の他の部署は既に祝賀会の準備に余念がなく、定時で窓口を閉めているという。


「否定はしないな」


俺はペンを走らせる手を止めず、冷え切ったコーヒーを喉に流し込んだ。


「平和っていうのは、誰かが英雄的に勝ち取るものじゃない。こうして、誰もが投げ出した面倒な数字の帳尻を、一つずつ合わせていく作業の集積だ」


管理された平穏

窓の外では、復興の槌音が響いている。

商人たちは利益を計算し、兵士たちは故郷の土を思い、人々は明日のパンを心配する。そのすべてが円滑に回るためには、ここにある「不備」を誰かが処理しなければならない。


「係長、また兵站部から連絡です。魔王軍へ引き渡す予定の食糧が、手違いで腐敗した状態で保管されていたとか……」


「……受理しろ。原因の究明は後だ。まずは代わりの備蓄をどこから回すか、商人ギルドと『緊急調整枠』の交渉に入る」


俺は新しい書類を引き寄せた。

世界一忙しい窓口。

そこは、希望と絶望が事務手続きという名のフィルターを通され、静かな「日常」へと変換されていく、この世界で最後の防波堤だった。

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